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知命



 天から私に与えられた使命など何もないだろうが、ひょっとしたら見つかるかもしれない・・、などと暢気に構えて生きてきたら50年も経ってしまった。さすがに少しばかりの感慨を覚える。己の理想を実現してくれる王を求めて諸国を訪ね歩いた孔子が、最晩年に万感の思いを込めて己が生涯を振り返ったときに呟いた言葉を、いささかの波乱も味わったことのない至って平板で面白みのない人生を歩んできた私に当てはめるのが、そもそも間違っているのは重々承知しているが、それでもやっぱりこの年齢になったら、「天命ヲ知ル」などと嘯いてみたくもなる。「不惑」と別れを告げたばかりだと言うのに迷ってばかりいる私では、とても次のステップに上ることなどできはしないが、まあ、そんな退嬰的なことばかり言っていても仕方がない。もうさほど残された時間に余裕もないだろうから、自分で自分の人生をつまらなくするのはもうやめよう。どうせなら目をピカピカ輝かせながら、「なんでもウェルカム!!」などと両手を広げて生きて行こうではないか。取捨選択などしていたら面倒でたまらぬ。あれこれ考えずに、心を空っぽにして、自分に向かってくるものすべてを受け入れようではないか。

   「今日はきのうの続きだけれど」
   今日はきのうの続きだけれど
   朝ごとに目覚めるように
   いちにちは 日々に新しい
 
   きのうのぬくもりを肌に
   今日の冷たい服を着よう
 
   ちょっとひざまづいて
   祈りに似た気持ちで
   手早く服を着よう

   窓をあけて
   きのうとは違う
   新しい季節の顔に
   あいさつを送ろう

   雨でもよし
   曇りでもよし 嵐でもよし

   私の今日は
   これからはじまる


 これは小学5年生の国語の教科書(東京書籍版)に載っている、みつはしちかこの詩だ。私の今の心持ちをこれほどまで的確に代弁してくれる詩は他にない。松井秀喜が自分のバースデイに満塁HRで花を添えたように、私はこの詩を50歳を迎えた自分自身への贈り物としたい。この詩を胸に秘めて、少しでも楽しい日々を過ごせたらいいな・・。



 でもね、全然実感がないんだよね。まだまだ若いよ!!
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