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「カメレオン」

 藤原竜也主演の「カメレオン」を見た。
 妻が一人で劇場まで見に行き、「よかった」「おもしろかった」と絶賛していた映画がDVD化されたものが発売と同時に我が家に届いた。もちろん、藤原竜也ファンの妻が予約したものであるが、私も見に行きたいと思っていた映画だったので(あまりに上映期間が短くて時間が取れなかった・・)、私にとっても好都合だった。
 これは脚本家丸山昇一が故・松田優作のために書き下ろしたものだそうだが、彼の死によって長くお蔵入りしていたものを藤原竜也の主演で映画化されたものであると言われている。松田優作ファンとしては一度は見ておかねばならない作品だと思っていたが、松田優作と藤原竜也では、生きている時代がまったく異なり、役者として持つ資質も違うから、映画を見ながら彼ら二人を比べてはいけないと戒めていた。だが、そうした製作エピソードを知ってしまうと、どうしたって比べざるをえない。確かに松田優作が演じていたならきっとこうやって演じただろう・・、とついつい思ってしまう場面もいくつかあって、少々物足りなさを感じてしまった。やはり藤原竜也のベビーフェイスでは、ちょび髭もなんだか安っぽいし、体がスマートすぎて線が細いのはどうしようもない。初期の松田優作のハードボイルドさを藤原くんに求めるのは酷かな、とないものねだりをしてしまうのは私が旧世代に属する証なのかもしれない。

 『幾度となく変化を繰り返してまるでカメレオンのように生きる伍郎(藤原竜也)は、ターゲットに疑いすら持たせずに欺いて金を稼ぐ、あてのない人生を送っていた。ある日偶然、政府要人の拉致現場に居合わせてしまった伍郎の詐欺グループは事件を目撃したことが原因で仲間を殺されてしまい、伍郎は復讐を計画するが……』
 
という、ストーリーなどこうしたアクション映画にとってはどうでもいい。ただただラスト15分の血沸き肉踊るクライマックスまでの前振りでしかない。ラスト15~20分でどれだけハードな演技を見せてくれるかを、観客は期待しているのであって、初期のアクション俳優としての松田優作はそうした観客の思いをすべて満たしてくれるものであった。見終わった後のカタルシスはまさに恍惚感にも似ていた・・。
 そうした観点から言えば、この「カメレオン」もかなり私の期待にこたえてくれた。藤原竜也が殺された仲間の復讐の塊と化して、鬼の形相で敵に立ち向かう様はまさに鬼気迫る迫力があった。


 しかし、どうにも中途半端だ。もっともっと悪人たちを徹底的に追い詰めなければ、己や仲間が受けた無念を雪ぐことはできないのではないか、そんな気がしてならなかった。
 松田優作の映画では、終わりの20分息もつかせぬ展開で、「最高だ!」とうなり声を上げたことが何度となくある。そうした思いを味あわせてくれるのではないかと、淡い期待をもってこの映画を見た私の思いは少なからず裏切られた。監督が松田優作のアクション映画を数多くて手がけた村西透だったらもっと違った作品になっていたのではないか、などという感想を見終わってすぐに持ってしまった・・。
 一緒に見ていた妻は、「映画館ではもっと迫力があって面白かったんだけどなあ・・。でも藤原くんがかっこいいから私は満足!!」などとのたまっていたが、松田優作の、例えば「遊戯シリーズ」のDVDを見たら、どれだけ松田優作のほうがかっこいいかを果たして分かってくれるだろうか?

 きっと無理だよなあ、それは・・。
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