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「20世紀少年」

 「20世紀少年」全22巻を読んだ。と言っても、12巻くらいまでは、以前毎週買っていた「週刊スピリッツ」に連載されていたのを読んでいた。いつかは続きを読みたいと思っていたら、何かの折りに、たまたま塾生の一人が全巻持っていると言ったので、借りて読んでみることにした。
 作者浦沢直樹のマンガは「モンスター」を全巻買って読んだことがある。途中までは謎めいた筋立てと、小さな物語をいくつも重ね合わせていって一つの壮大な物語を作り上げるというマンガには珍しい構成法に引き込まれ、途中巻を置くことができないほど熱中した。しかし、その結末は、それまでの期待を大きく裏切るものであり(どんな終り方だったかはもう忘れてしまったが、とにかくがっかりした・・)、思わず「なんだ、これは!」と叫んでしまったほどだった。「まったく竜頭蛇尾の典型だ」と思ったら、何だか見るのも嫌になって全巻一人の塾生にあげてしまった。
 それに懲りて浦沢の作品を読むのは躊躇っていたが、「スピリッツ」で連載が始まった「20世紀少年」はいつの間にか毎週読むようになった。手法としては「モンスター」をそのまま踏襲する形で進んでいくため、話があちこちに飛んでしまうのになかなかついていけず、と何が何やら分からなくなってしまった。これでは連載が完結して単行本化されたものを一気に読んだ方がいいだろうと思って、「スピリッツ」を買うのもやめてしまった。したがって今回読み通すことができたのは、念願が叶ったことになる。
 ところで、今年公開された実写版の映画はあまり評判がよくないようだ。私に単行本を貸してくれた中学生は、「映画を見に行って、話がよく分からなかったから本を買ってみた」と言っていたし、別の高校生は「いくら3部作だと言っても、話をすべて詰め込みすぎていて、漫画を読んでいない人には理解できないと思う」とも言っていた。私も「見たいな」と思っていただけに行かないでよかったかな、と思っている。(来年早々にDVDが発売される予定だから、レンタルして見るならいいかも・・)
 この物語のあらすじは、「子供の他愛もない『預言書』の中に書かれたことが次々と実現されていき、そのはてに世界に終末が・・」と大雑把に要約できるだろうが、全22巻の21巻くらいまでは、まさに手に汗握る展開で、やはり単行本で一気に読むべきだった!と胸を躍らせて読み進めたが、常に「『モンスター』のようなしょーもない終わり方だったらどうしよう・・」という不安はつきまとっていた。21巻を読み終え、22巻の途中まで来たとき、「これじゃあとても大団円にたどり着きそうもないな・・」と残りのページ数を数えながら、不安は一段と強くなった。どうやって終わりにするつもりなんだろう・・、そんな心配をしていたら、やはり・・。
 「なんだ、これは!!」と最後の1ページを読んだ瞬間に叫んでしまった。奥歯に物が挟まったような、まったくすっきりしない強引な幕引きで、読み終わってしばらくは、空しさと脱力感に襲われてしまった。「またか・・」と半ばあきれ返ってしまいそうになったが、実はこの「20世紀少年」には「21世紀少年」上・下巻が用意されているのだ。「20世紀少年」というタイトルで始めた物語は、やはりその中でまとまりをつけるべきであって、別のタイトルで補足説明をしようとするなんて、なんだか卑怯なやり方だな、と思わなくはないが、早速その2巻を読んでみた。
 確かにこの「別巻」とも呼ぶべき2冊で、やっと初めてこの物語の全体像がつかめたように思った。伏線や仄めかしは浦沢マンガの常道だが、この2冊を読んで22巻の中にちりばめられていた欠片がひとつのまとまりへと収束した。ああ、すっきりした!!
 この2巻で最終的な謎解きをしようとはじめから意図していたのか、それとも読者からの反響を知って、急遽書き下ろしたものなのかどうかは知らないが、何も題名を変える必要はなかったのではないだろうか。23巻・24巻として上梓すれば何も問題はなかっただろうに、と思わないでもない。
 
 私が今思案中なのは、「20世紀少年」+「21世紀少年」全巻を貸してくれた中学生へのお礼として、DVDを贈ろうかどうかということだ。もし中学生が受け取ってくれたとしたら、彼が一度見終わってから貸してもらえば、まさに一石二鳥となる。なかなか名案ではないだろうか。
 近いうちに彼に打診してみよう、と思っている。


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