じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

イギリスの教育改革

2006-07-04 11:56:17 | 教育
★ 卒塾生の大学でのレポートを手伝い、イギリスの教育改革について勉強した。

★ イギリスでは長年、階級・身分制が残り今尚、貴族の子弟は名門私立校(パブリックスクール)へ通う。庶民はと言うと従来は11歳の試験で一番優秀な子は、グラマースクールへ、次の優秀な子はテクニカルスクールへ、残ったものはモダーンスクールへ通うといった風に日本で言えば小学校卒業段階で選別され。それ以降の人生がほぼ決定されたと言う。封建制の名残を残す戦前の日本も似たようなものだ。日本は戦後教育制度が大きく変わったが、イギリスでも早期の選別に批判があり、「すべての子に中等教育を」というスローガンの下、コンプリヘンジブルスクール運動が起こり、定着していった。

★ 1980年代は世界的な教育改革の時期であり、アメリカではレーガン政権のもと「危機に立つ国家」の観点から教育改革が行われた。イギリスではサッチャー首相率いる保守党政権が、学校教育に市場原理を導入し、教育の質の向上を図った。教育の質の向上とは具体的には学力の向上である。こうした改革の背景には日本経済の隆盛があり、その理由として日本の優れた教育制度が取り上げられた。アメリカ、イギリスでは「いかに日本をまねるべきか」が論じられた。

★ 日本でも中曽根政権が文部省ではなく首相が主導し臨時教育審議会を開催し、教育の「自由化」が論議された。

★ それから20年。アメリカは財政を立て直し、イギリスは「イギリス病」を克服した保守党政権からから1997年、労働党政権に変わったが、市場主義など保守党の教育政策の多くは引き継がれている。徹底した市場主義(例えば全国テストの点数を公表することによって学校を序列化するなど)によって、学校は活性化され、学力(テストの点数)は向上したが、一方で教育困難な生徒や少数民族の子ども障害など特別なニーズをもつ子どもが学校教育から排除されるといった事態を招いているという。

★ 皮肉にも日本はこのイギリスをまね、学校教育に市場原理、競争原理が導入されてきている。その背景には学力の低下に対する危惧があるが、同時に学力の二極化や公立学校における選別化など、格差の拡大が懸念されている。

★ 日本ではかつてのような教員組合による徹底抗戦もなく(これは教育に限らず自衛隊の海外派遣についてもそうだが)、着々と市場化が進んでいる。レポートを考えながら、これからの日本の教育にとってイギリスの教育改革の功罪が参考になるなぁと思った。
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