じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

映画「或る夜の出来事」

2018-10-07 23:51:12 | Weblog
☆ 映画「或る夜の出来事」(1934年)を観た。

☆ 結婚を父親に反対された富豪の娘が家出した。向かう先はニューヨーク。ニューヨーク行きの夜行バスに乗ったが、そこで一人の新聞記者と出会う。最初はソリの会わなかった二人だが、やがて魅かれあう仲に。ところが、いろいろと行き違いがあって・・・。

☆ 世間知らずなわがまま娘の世間騒がせな逃避行。出会いがあって、困難があって、最後はハッピーエンド。少女コミックのような物語だった。

☆ 新聞記者との逃避行は、後の「ローマの休日」にも通じている気がした。バージンロードからの逃走は「卒業」か。

☆ 記者役はクラーク・ゲーブル。いつもながらにいい声だね。映画がトーキーになって良かったと思う。令嬢役はクローデット・コルベール。日本映画で言うと高峰秀子さんという感じかな。

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西村賢太「苦役列車」

2018-10-07 21:22:31 | Weblog
☆ 西村賢太さんの「苦役列車」(新潮文庫)を読んだ。

☆ 以前、映画版(2012年)を観ていたので、主人公は森山未來さんのイメージが強い。原作はほぼ映画通りだった。(いや、映画が原作通りだと言うべきか)

☆ 父親が性犯罪を犯して逮捕されたために、それ以後、犯罪者の息子として生きなければならなくなった北町貫多。日雇い人足としてその日の収入を得、収入が入れば、酒や風俗に消えていく。家賃の滞納で部屋を追い出されることも数知れず。

☆ 劣等感とその裏返しのようなプライド。それが言動に出てしまうから厄介だ。友は去り、希望のない日々、不透明な未来にあえいでいる。若く体力のあるときはまだいいとして、その先は絶望的だ。まさに彼にとって生きることは「苦役」なのかも知れない。

☆ 身から出た錆には違いないが、底辺から抜け出すことの難しさがうかがえる。応援したくもなるが、性格が素直じゃないし、つきまとわれるのが嫌なタイプだ。

☆ 文頭に曩時(さきの時、昔)とあるから、やがて底辺から起き上がった貫多の思い出語りということにしておこう。
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村田沙耶香「コンビニ人間」

2018-10-07 17:53:35 | Weblog
☆ 村田沙耶香さんの「コンビニ人間」(文春文庫)を読んだ。面白かった。

☆ 今日は高校受験の模擬テストがあったので、監督をしながら読み始めたのだが、一気に読み終わった。

☆ 主人公の女性は少々「普通」とは違う感性を持っている。幼稚園に通っていたころ、死んだ小鳥を見てみんなは泣いているのに、彼女は焼き鳥やから揚げを思い浮かべてしまう。せっかく獲物が手に入ったのに、それを墓に埋め、花を(彼女に言わせれば「花の死体」を)供えることが理解できない。

☆ 小学生になって、同級生の男子がけんかをしていたとき、誰かが「けんかを止めて」といったから、スコップで男の子を叩いてけんかを止めた。彼女にしてみれば極めて論理的な解決手段だったが、社会的には受け入れられず、母親が謝る事態となった。

☆ そんなことを繰り返していると、「私」は病気だとみなされだした。「私」はできるだけ人とのかかわりを避け、社会の中で生きる術を身につけた。そんな彼女が選んだ職業がコンビニのアルバイト店員。その生活も18年、彼女も30代半ばを超えていた。

☆ そんな彼女の前にある男・白羽が登場する。30歳は超えているだろうが、「中2病」がそのまま成長し、「自分が社会で成功しないのは世の中が悪いんだ」(読んでいるだけでその自分勝手な主張にムカムカくる)と思っているようなタイプだ。「普通」ではない2人はそれからどうなったか、という話だった。

☆ カフカや安倍公房を読むと、大衆社会の中で歯車としてしか生きられない人間のあがきのようなものを感じる。この「コンビニ人間」はむしろマニュアルの中で生き、コンビニというガラスケースの中でしか安らぎを得られない人間を描いている。

☆ 後半は、「コンビニ」に宗教性さえ感じる。彼女は「コンビニ」と同化し、シャーマンとして「コンビニ」の声を聞くまでに到達したのだ。「コンビニ」を離れて、彼女に生きる羅針盤はなかった。彼女にとって「コンビニ」は教義であり、教団であった。

☆ 自分の劣等感を愚痴るだけの迷いの中にいる白羽は救いようがないが、「私」には卓越した高貴ささえ感じる。「普通」でないことの誉のようなものを感じる。閉塞した社会の中でそれを打開するのは、案外彼女のような異端者なのかも知れない。 

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