じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

谷崎潤一郎「麒麟」

2018-10-08 20:46:31 | Weblog
☆ 谷崎潤一郎の「潤一郎ラビリンス Ⅰ初期短編集」(中公文庫)から「麒麟」を読んだ。

☆ 中国、紀元前493年の話、孔子は弟子を伴って遊説の旅に出た。途中、衛という国を訪れる。その都には陰鬱な空気が立ち込めていた。原因は、君主の霊公とその妃南子夫人にあるようだ。

☆ 孔子を徳の高い人物と聞き、南子夫人は孔子を招き、香、酒、肉でその心を乱そうとする。そして最後に披露された「コレクション」が凄まじい。R指定間違いなしのおぞましい光景だ。

☆ 江戸川乱歩の「パノラマ島奇譚」をスプラッターホラーにしたような感じだ。

☆ 南子夫人の性癖(サディスト)は異常だ。その夫人に逆らえない霊王は、まさに妲妃に操られた殷の紂王だ。(藤崎竜さんの漫画「封神演義」しか知らないけれど)

☆ 翌朝、孔子は「吾は未だ徳を好むこと、色を好むがごとき者を見ず」(論語)の言葉を残して、衛を立ち去る。

☆ 孔子は徳を説くわけでもなく、黄門様の印籠を振りかざすわけでもない。ただ観察者として描かれている。

☆ 南子夫人VS孔子、それは美VS徳の比喩だろうか。美と徳は相容れぬということだろうか。


☆ 麒麟とは聖人が生まれたときに現れる霊獣とされる。
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太宰治「地図」

2018-10-08 18:10:37 | Weblog
☆ 太宰治の「地図 初期作品集」(新潮文庫)から表題作を読んだ。

☆ 太宰治がその名でデビューする前、本名で同人誌「蜃気楼」に掲載した作品。中学生(今の高校生)ぐらいの作品だ。

☆ 琉球の王が石垣島との5年間にわたる戦いに勝ち、盛大な祝宴を催している。そこに以前救助したオランダ人が手土産をもって挨拶にやってくる。その土産とは「世界地図」であった。上機嫌の王はオランダ人に地図の説明を求める。自分の国がどこかを楽しみにして。ところが彼らは王の国は小さすぎて書かれていないという。いわんや5年の歳月をかけて苦労して手に入れた石垣島をやである。

☆ 王は気色一変、乱心してオランダ人を殺害してしまう。以降、王は飲酒、邪淫、殺生の限りを尽くし、忠臣の死を賭した諫言にも耳を傾けず、人心が見放した国の都は石垣島の軍勢の手に落ちる。

☆ 戦勝による高揚感、それが傷つけられたことによる絶望感。それが王の心を狂わせたのかも知れない。ストーリーの密度は物足りないが、権力者の奢りとその末路は後の作品のモチーフになっているのかも知れない。

☆ それに、「スガスガしい」「グデングデン」「ガヤガヤ」「ユラユラ」「スッカリ」などカタカナの多用が印象的だった。
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川端康成「骨拾い」

2018-10-08 16:47:08 | Weblog
☆ 川端康成の「掌の小説」(新潮文庫)から「骨拾い」を読んだ。

☆ 祖父の骨拾いをする10代の少年の姿が描かれている。若き日の川端の私小説ということか。それにしてもわずか数ページの作品に、実にみずみずしい表現があふれている。

☆ 「針一本落としてもなにか崩れそうな、七月の正午前である」「ごろりと転がって、青空を呼吸したかった」

☆ 逆立ちしてもこんな表現は思いつかない。すごい。
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