じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

藤原伊織「台風」

2020-07-26 19:03:40 | Weblog
★ 小説は作家の創作によるものであるが、作品を媒介として作者と読者の波長があった時、読者の脳裏に映像が浮かび上がり、読者ならではの作品として再生される。

★ 藤原伊織さんの「雪が降る」(講談社)から「台風」を読んだ。

★ 回想を挟んだ絶妙の構成。まるでドラマを観ているかのように映像がイメージできるのは、作家の筆のうまさであろうか。

★ 40歳のサラリーマン。かつて1度だけ人を殺した人間に会ったことがあるという。そして今日、2人目を見る羽目に。

★ 第1部は、警察の事情聴取を終え、終電に揺れる主人公の心情を描く。今日の出来事、かつての部下が起こした殺人未遂事件。何が彼を暴発させたのか。それはまるでスタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」のようだ。

★ 第2部は、主人公の少年時代の話。玉突き屋を営んでいた生家。彼は中学校に馴染めず、店の手伝いをしていた。そこで出会った人々。ある時、23歳という男がふと立ち寄った。彼は主人公の悩みを聞いてくれたのだが。

★ 第3部は、再び現代に戻る。台風の豪雨の中、彼は今こそ「強い人間になろう」と決意する。たとえずぶ濡れになっても、彼には家で待つ人がいる。

★ 定番の展開ではあるが、十分に楽しめた。
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荻原浩「押入れのちよ」

2020-07-26 11:26:29 | Weblog
★ 部屋の片づけをしているとチャイムが鳴った。発注をしておいたブックオフからの荷物だ。

★ 今回届いたのは、
 楡周平「Cの福音」「再生巨流」「ラスト ワン マイル」「プラチナタウン」「クーデター」
 絲山秋子「ばかもの」「ダーティ・ワーク」
 赤坂真理「コーリング」「ヴァイブレーター」「ミューズ」
 吉本ばなな「ハゴロモ」
 坂東眞砂子「パライソの寺」
 鯨統一郎「ヒミコの夏」「邪馬台国はどこですか?」
 真保裕一「ボーラーライン」「奇跡の人」
 あさのあつこ「ラスト・イニング」
 葉真中顕「ロスト・ケア」
 津村記久子「ワーカーズ・ダイジェスト」
 島田雅彦「悪貨」
 白石一文「一瞬の光」「ぼくのなかの壊れていない部分」
 荻原浩「押入れのちよ」
 佐藤多佳子「黄色い目の魚」
 伊集院静「海峡」
 江國香織「間宮兄弟」
 新堂冬樹「黒い太陽」「忘れ雪」
 花村萬月「笑う山崎」「鬱」
 藤原伊織「雪が降る」
 桐野夏樹「東京島」
 町田康「夫婦茶碗」
 村山由佳「放蕩記」
 山田詠美「無銭優雅」
 坂木司「夜の光」
 緑川ゆき「夏目友人帳」(4)~(7)

 これだけ買って、5000円でお釣りがくる。

★ 早速、荻原浩さんの「押入れのちよ」(新潮社)から表題作を読んだ。

★ 町外れとは言え、都心で浴室もついて家賃5万円以下は破格だ。失業中の恵太はさっそく契約したのだが、案の定、事故物件。夜な夜な、おかっぱ頭の少女が現れる。恵太が食べ残したビーフジャーを食べ、カルピスをすする。

★ 最初は恐怖に震えていた恵太だったが、明治生まれという少女の事情を聞くうちに、妙な絆が芽生えてくる。荻原さんの文体が楽しい。
 
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