古い言い方では台風のことを野分といったようですね。野原の草を強い風が吹き分けて行く様は映像としてもよく使われますが秋の風物の一つでしょうか。
風雅な言い方だと思います。源氏物語にも出てきますし、俳句の季語としてもよく使われます。
台風の思い出
台風は夏の終わりから秋にかけて日本にやってきます。昔の人はその災害を恐れ210日・220日を大風の厄日としていました。現在のような詳しい天気予報のない時代の人たちは突然やってくる嵐に翻弄され、恐れ戦いていたことでしょう。私のこどもの頃(昭和20年代から30年ごろ)テレビのない時代で、ラジオから流れる天気予報に親たちは台風対策に走り回っていました。昔の家は今の家のようにサッシで密閉されることはなく木製のガラス戸や窓でとても強度の弱いものです。隣近所からは雨戸を閉める音、窓などに板を打ち付ける金槌の音、などなど何処の家も台風対策に追われていたものです。やがて風と雨が強まり、電線がヒュウヒュウ鳴り出すと、雨戸をすべて閉じた薄暗い部屋の中でじっと台風の通り過ぎるのを待ちます。普段波静かな瀬戸内の海もこの時ばかりは外洋の海並みに荒れ狂います。子ども心には怖いもの見たさと興味半分で外へ見にゆきたいのですが、当然親が許しません。仕方なく二階の閉じられた雨戸の隙間や雨戸の板の節穴から一生懸命外の様子を覗ったものです。特に荒れ狂う波が沖の堤防や岸壁にあたって高く舞い上がる様子は普段見られない光景ですから、その迫力に驚き感動して長い間見続けていたものです。その時舞い上がった潮風が農作物に大きな被害を出していることは子供心には知りませんでした。台風が去ると外へ遊びに出られることがすごくうれしかったことを覚えています。海岸近くの通りへ行くと海岸の砂やごみが一面打ち上がっていて大変な状態でした。当時は海岸線は護岸工事のしてあるところは少なくて砂浜が多かったのです。その砂浜は私たちの夏の遊び場で小魚がいてアオサ・アマモなどの海藻が茂り、夏休みの間には日が暮れるまで浜辺で遊んだものです。
そのころのことははっきりとは覚えていませんが、戦後のしばらくは大きな台風がよくやって来ていたように思います。そしてそのころまでは、この地域には210日(立春から数えて210日目の日)や220日を厄日として、山の上で火を焚いて祈る行事がありました。事前に山の上の広場に柱を立ててその柱に麦わらや稲わらを巻きつけたものを作っておき、210日の夜に子供たちで山に登り、わらでできた柱に火をつけるのです。私の兄たちはその行事に加わっていましたがまだ幼かった私は一度も連れて行ってもらえませんでした。仕方なく家から山の上で燃え上がる火を眺めて行ってみたいなあと歯ぎしりしていたように覚えています。各集落ごとにそのような火を焚く山があったようで、五山の送り火のように暗闇の中であちこちに大きな赤い炎が見えていたのを覚えています。そのような行事も山火事などの危険や子供の行事としても危ないということでなくなりました。私が少し大きくなったころにはその行事はなかったので残念ながら一度も山の上で火を焚くことはできませんでした。
台風の恵み
台風は自然や人間社会に大きな災害をもたらしますが、恵みの雨も運んできます。夏の渇水期に減ったダムの水を回復させます。そして私の好きな南国の蝶を連れてきます。琉球列島の近くを通過する時に強い風にあおられた蝶は上空に運ばれ台風の移動と一緒に本土に連れてこられます。好きで来たわけではないのでしょうが蝶もなかなかたくましい生き物です。やってきた本州などで、そこで食草を見つけて卵をうみ一族の繁栄が始まるといった例がよくあります。我が家の庭にはこの10年の間にカバマダラという南国の蝶が3度もやって来て立派に繁殖しました。さすがに寒さには耐えかねて翌年まで子孫を残すことはできませんでしたが、その生命力にはいつも感動します。10年に3度というのは率が高いようで最近は秋になると我が家の周りに補虫網をもった蝶マニアの方が来られるようになりました。今年の台風はどんな蝶を南の国から連れてくるか楽しみです。
台風18号は予想によると今夜このあたりを通過するようです。数日前から栗の収穫が始まっています。今夜の大風でたくさんの栗が落ちるものと思われますが、栗園には柵がないのでイノシシが自由に出入りできるので明日の朝までにはすべて食べられてしまうことでしょう。以前にも書きましたが、昼間に落ちた栗は夕方収穫にゆく私のものですが、夜の間に落ちた栗はイノシシたちのものという分け方で過ごしてきました。普段の管理は私がしているのに半分わけとは私のほうが分が悪いとは思いますが、それでも我が家で食べきれないほどの量がありますので仕方がないと諦めています。イノシシたちは今夜はたらふく栗をごちそうになれることでしょう。
今日の音楽 (らんらんさんより)
Janos Starker - Kodály Cello Solo Sonata I. Mvt
久しぶりでチェロを聞きました。終了画面の中から選択すると、2番と3番も続けて聴けます。
台風のもたらした暇
台風を作るのは誰でしょう。6月ごろから南太平洋上で発生が始まりますが、地球を取り巻く気流の関係で6月と7月には日本列島の方にやって来るものは少ないです。8・9・10月と偏西風が南に降りてくると日本への影響が大きくなってきます。台風は災害と恵みをともにもたらしますが、すべて太陽のせいですよね。大洋は夏の強い太陽の光を受けて大きなエネルギーをため込みます。そのエネルギーが水蒸気となり上昇し台風を作ります。エネルギーの循環と拡散のためでしょうか。人間社会が関与しているのかどうかはっきりはしませんが地球の温暖化が進むと台風はさらに大型化するそうです。これからはできれば災害が少なくて恵みの大きい小型の台風であってほしいものです。昨日は一日中台風対策で、ビニールハウスの補強や鉢物を小屋の中に取り込んだりで忙しい一日でした。そして今日は家の中でひっそりと台風の通過を待ちます。
金曜日の夜突然パソコンが壊れました。5年も使っていない古いパソコンを取り出し設定してネットにつなぎました。それで、今日は写真なしのブログを書いてみました。子供のころから文章を書くのが大の苦手で下手でした。双葉のころ芳しくなかった木は年を経た今も芳しくはなりません。素敵な文章を書かれる方のことが羨ましくもありますが天から与えられたものと諦めています。パソコンが治るまでしばらくはお休みした方がよいのかもしれませんが、今日は家の中でひっそりですから、こんな下らぬことを書いてみました。