落葉松亭日記

ニュース・評論スクラップ、凡夫の日々雑感、山歩記など

原発耐震 想定外の生まれた瞬間

2011年04月16日 | 原発
原発は安全なエネルギーか、少資源国日本では悩ましい問題だ。
日本の原発は今回のような大地震には、耐えられないのがはっきりした。
どこでそういうふうになったのか、武田教授が「安全委員会速記録」を公表された。
そこには「大きい地震は想定外」という驚愕の指針があった。
武田教授は厳しい質問で食い下がったにもかかわらず、安全委員会は再考しなかったと慚愧の念をまじえて仰っている。

武田教授のHPより
http://takedanet.com/2011/04/1_d08f.html
原発深層流002 危険な原発? 安全委員会速記録(1)

(原発を抱えている日本の親の責任として知っておかなければならないことでもあります。)
日本には、原発の「安全」を守るために「原子力安全委員会」という組織があります。
その安全委員会が数年前(平成18年の9月ですが)に、いかめしい書類「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」というのを出しています。
簡単に言うと「原発は地震でどうなるのか、どうしたら良いのか」を解説しているのです.
そこに、驚くべきことが書かれています.

1) 大きい地震が起こったら「想定外」として良い。

2) 想定外の地震が起こると「大量の放射性物質」が放散される。

3) 公衆に対して放射線被ばくが起こる。

4) 地震で極めてまれに津波が発生する.


・・・・・・・・・
私もこの説明を専門委員会で受けて、ひっくり返るほど驚いたものです。そして冒頭に次のように質問しています(第2回専門部会速記録から).
「この地震指針は、
1. 原子炉を守るためですか?
2. 運転を継続するためですか?
3. 付近住民を守るためですか?
なにが目的ですか」
バカらしい質問と言えば、バカらしいとも言えます.地震や津波から原子炉を守るのですから、原子炉や運転を守ることができれば同時に付近住民を守ることにもなるからです。
しかし、私の目の前にある書類には、「原子炉は守るけれど、原発全体は守らないし、付近住民など視野に入っていない」という内容だったのです。
たとえば、「原子炉の耐震性はよくよく考えるけれど、冷却するために必要な電源などどうでもよい」という感じでした。
今回の大震災の余震の時に、「震度4」で東通原発の電源がすべて(通常、予備、非常ディーゼル)壊滅してしまいました。また2007年の中越沖地震では東電の柏崎刈葉原発で変電所が高い黒煙をあげて燃えました。
原発が「震度4」で全部の電源を失うということは到底、日本人の常識に反するのですが、「原子炉だけは守るけれど、後は知らない」という内容だったのです.

この私の質問に対して、内閣府の課長はピントの外れた答え(わざとですが)を延々としました。
そこで、仕方なく、
(クリックで拡大)
と聞きました(ダブルクリックすると大きくなると思います)。つまり、理屈は通っていても、地震が来ると付近住民が1万人死んでも関係がないということではないか?との質問でした。

これに対しても、ノラリクラリとやられたので、
(クリックで拡大)
と3回目の質問をしました。会議では多くの委員が均等に発言するために、一人が3回も連続して発言するのはややルール違反ですが、このままでは「地震で倒れる原発ができる」と思った私は食い下がったのです.
全ての質問は交わされ、議長は他の委員を指名しました。
ここで「電力会社が間違えて原発を作ると、その結果、何が起こるか判らない」という「地震指針」が通ってしまったのです.

悔やんでも悔やみきれない瞬間でした。


今になってみると、その時に机の上に駆け上がって「反対だっ!」と叫んだら良かったのか、そんなことをしたら守衛につまみ出されるだけだったか、そうはいってもあのときに追求の手をゆるめたのが今度の事故になったと思うと残念でたまりません。
(平成23年4月16日 午前9時 執筆)武田邦彦


放射線と放射性物質の区別

2011年04月16日 | 原発
私のような素人には原発用語が難しい。
生半可な知識によって、福島県人差別が起きているらしい。

武田教授のHPより
http://takedanet.com/2011/04/post_173f.html
「福島県人差別」の原因を作っている人たち

福島県人の「差別」が進んでいます。福島県人が避難してくるのをいやがったり、酷い例では福島県人の診療を拒否する病院すらあります。
言うまでもありませんが、福島県の人は他の都道府県の日本人とまったく同じで、クリーンです.
でも、これほどバカらしいことが「科学技術立国」の日本で起こるのは、それを仕掛けている人がいるからです.


・・・・・・・・・
1) 日本政府が「福島県人から放射線がでている」と言ったから
 ある時、テレビを見ていましたら、福島原発の近くの人たちが「被ばくしているかどうか」ということで、「体の外側から放射線の測定器をあてて」、「被ばくを測定する」という映像が何回か流れました。
そして、「体から放射線が出ていない人は、被ばくしていません」と言っていました。
これを見た素直は人なら、次のように受け取るでしょう.
「へえー! 被ばくしているかどうか外から判るの!?
 なら、その人から放射線がでているのね! 福島県の人は被ばくしているから、近づくとこっちが被ばくするのね!」
福島県人が「被ばくしていない」ということを宣伝するために、このようなトリックを日本政府がやったのですが、それは「福島県人から放射線がでている」と言ったも同然であることに気がついていません.

それに対して私は、
「体の外から測っても、その人の被曝量は測ることができません。あれは「洋服についているチリ」を測っているだけです。被ばくはDNAを観測しなければ判りません.」
と言いましたが、なにせ個人の力なので、多くの人は政府の言ったことを信用しています。
また、精神的にも打撃を受けている福島のお役所に悪いのですが、もっと積極的にこのような非科学的な報道について是正を求めるべきです。


2) 日本政府が放射線と放射性物質の区別をごまかしたから、
原発事故で大切なのは、「被ばくは「原発からの放射線」ではなく、「放射性物質からの被ばく」である」ことを理解する事です.
これが間違っていると、誤解が生じるので、そのうちに「福島県の人は・・・」という事になります。すべてが正しくないと差別が生まれます.
まず、距離の2乗に反比例する「放射線」が問題ではないので、「原発からの距離」で規制するのを止めることです.
それなのに、日本政府も福島県も「原発からの距離」を言っているので、他県の人は「距離が近い福島県の人は危ない」と思ってしまうのです.
「距離」ではなく「風向き」ですから、それも福島県自体がハッキリしないと誤解は解けないと思います.
また、「放射性物質」からの被ばくですから、福島県人は「放射性物質」ではないので、被ばくの原因にはならないと科学的に説明しなければなりません。


3) 福島県知事や川崎市長が原因を作る
福島県知事は「福島産の野菜は安全だ」と言いましたが、「福島産の野菜」となると放射性物質が含まれているものがあることは間違いなく、正しくは「福島産の野菜で放射性物質を含んでいないものもあるので、区別して欲しい」というのは科学的です.
福島産の野菜がすべてOKということではないので、「放射性物質が含まれていない野菜だけを出荷します」と知事が言えば、科学的に合理的なので、他県の人は納得します。
また、川崎市長が「福島の瓦礫を川崎に受け入れる」と表明しました。「福島の瓦礫」でも「放射性物質がついているもの」と「いないもの」がありますので、これも不信感を増大させました。
福島の方は東電の「被害者」ですが、当然、郷土に対する強い愛情がありますから、時として「福島は汚染されていない」というような発信があるのですが、哀しいことに「福島の一部は汚染されている」のは確かです.
それを福島県の人が認めることも、これから子供達も含めて差別が起こらないもっとも肝心なことと思います. つまり、「福島県人が差別される」というのは「非科学的なこと」であってはいけないのですが、もし「政府や福島県の人が非科学的なことを言う」と、どうしても非科学的な差別が生まれるでしょう.
福島県の人が、勇気を持って事実を見つめ、郷土を守る強い決意を持っていただければと希望します.
(平成23年4月15日 午後2時 いそいで執筆)武田邦彦

放射線測定バッジ「個人配布を」=福島県と国に提言-国立がんセンター
http://203.183.152.33/jc/c?g=soc_30&rel=j7&k=2011041400725&j4
国立がん研究センター(東京都中央区)の嘉山孝正理事長らは14日、同センターで記者会見し、医療従事者が放射線を取り扱う業務の際に使う放射線測定器具「フィルムバッジ」を、福島県の住民に配布することを県と国に提言すると発表した。
 嘉山理事長によると、測定器具は外部被ばく線量を測定するため、国内で約44万人の医療従事者が胸などに着けて使用。1カ月間といった一定期間ごとに線量を測定する機関に送る。費用は1人1回3000円程度で、送付後約2週間で結果が返ってくるという。
 同センターは約2万人分のフィルムバッジが入手可能といい、嘉山理事長は「福島県の方々が安心して生活できるように最大限の協力をしたい」と話した。(時事 2011/04/14-18:50)