今日、国立新美術館で開催中の『マグリット展』に行ってきました。
知り合いから「マグリットの作品に片手袋が描きこまれてました!」という情報を頂いていたのです。以前から片手袋が登場するアート作品を調べていたので、「これはチェックしなければ!」と思っていたのですが、会期終了間際に滑り込みセーフでした。
肝心の作品は『ジョルジェット』という、マグリットの奥さんな名前が冠された作品です。収蔵している姫路市立美術館のデータベースで見られます。
キャンバス右下に確かに茶色い片手袋が描かれています。絵に近寄って確認してみると、革製のようでした。
マグリットはシュルレアリスム運動に影響を受けていますが(ブルトンとは後に袂を分かったらしい)、シュルレアリスムの代表的な技法に「デペイズマン」というものがあります。(こちらのサイトの解説が分かりやすいです)
要するに「そのものが持っている意味から切り離し、そのものが本来ある筈もない場所に置いてみる事で異和を生み出す」技法です。
現在僕が片手袋の魅力を紹介する時や作品を制作する時、片手袋の背後にある物語に焦点を当てる事が殆どです。しかし思い返してみれば元々片手袋の何に魅力を感じたのかといえば、「物体としての圧倒的な存在感」なのです。
本来二つ揃っている筈の手袋が片方だけになっている、というだけでも既にシュルレアリスム的ではありますが、それが町の思わぬ所に落ちていたり置かれていたりする訳です。いつもの景色が片手袋一つ配置されるだけで、何だか不思議な光景に見えてくる。考えてみれば、マグリットが片手袋を描きこむのには必然性が感じられます。
過去に出会った片手袋に関係のあるアート作品の中では、千葉正也氏の『若夫婦と黄色い家』の片手袋と近いと感じました。(このページの右から二番目)
またマグリットには『ヘーゲルの休日』という作品があります。こちらのサイトで見られます。
黒い傘の上に水が入ったガラスのコップが描かれています。コップは雨を溜めこむ事が出来ますが、傘は雨をはじき返す。相反する二つの物が同じ空間に描かれています。この作品を見て僕はこの介入型片手袋を思い出しました。
ドアノブを握る際にドアノブに触れる手袋が刺さっているせいで、ドアノブに触れる事が出来ない。
またこれはどうでしょう?
ゴミを拾う際などに汚れから手をふさぐゴム手袋が、ゴミ箱にねじ込まれていてゴミを捨てられない。
なんとなくマグリット的主題を湛えた片手袋写真に思えます。
直接的に片手袋が描きこまれた作品だけでなく、片手袋とは何か?を考える際の糸口にもなり得る作品に出会えて大満足でした。『マグリット展』は国立新美術館で6/29まで開催中です。
それにしても、思わぬ所に片手袋的主題が潜んでいるので、日々全く油断出来ません!
P.S 僕の片手袋作品を出品していた『ソーシャルデザインアワード』は本日、6/22で終了致しました。本当に沢山の方に片手袋妄想物語を綴って貰いました。心から感謝しています。近日中に今回の展覧会の総括を書きたいと思います。