時はさかのぼり1994年、私はアメリカ東海岸ボルチモアにあるジョンスホプキンス大学整形外科バイオメカニクス研究室に留学していた。
主に膝や腰椎のバイオメカニクスの研究を行っていた。
ボルチモアはニューヨークから南に下ったところにある。
アメリカの生活で何が困るかというと食事以外ではお風呂である。
バスタブが浅くてシャワーを前提としているので熱いお湯をためて肩までどっぷりとつかると言うことができない。
日本のお風呂が恋しかった。
そんな生活の中から変形性膝関節症の「入浴エクササイズ NY Ex.」を着想した。
講演では
アメリカ留学中ニューヨークで「入浴エクササイズ」を思いつきました。
ですから「ニュウヨクエクササイズ」ではなく「ニューヨークエクササイズ」と読んで下さい。
等と説明している。
しかしこれは半分本当で半分は罪のないジョークである。
第一ニューヨークは地図で見ると近そうに見えるが実はボルチモアからは車では4時間ほどかかる。
ニューヨークへは留学中も、帰国してからも何回か訪れたが、ニューヨークで「入浴エクササイズ」を思いついたわけではない。
しかし、アメリカ留学中にCKCの理論を学んだのは事実だし、関節を保護する筋肉の共同収縮の概念や椎間板や膝関節軟骨は血管組織を持たないことから圧縮弛緩のサイクリックな刺激が重要であることは認識していた。
実際に「入浴エクササイズ」を思いついたのは日本に帰国して吉備国際大学に赴任した1995年のことである。
当時、私は大学に赴任したばかりで科研費もなく、研究に取りかかるための研究費を必要としていた。
そんな中、地元岡山のある企業が研究助成を公募していていてそのテーマが「日本人のライフスタイルにかかわる研究」というものであった。
私は留学中の経験から日本人の入浴習慣は世界でも特異なものだと感じていたので、これはいけそうだと感じて、入浴中にバスタブでレッグプレスの運動を行うという課題を応募した。
翌年、この課題は私の思惑通りに採択された。
平成8年度第18回財団法人両備てい園記念財団助成金
日本人の生活スタイルを活かした変形性膝関節症のリハビリテーション
河村顕治
お風呂でリハビリを行うなどちょっと滑稽で、学術的にはどうかと思ったが、いざ採択されると結果を報告する義務が生じて、何かやらざるを得なくなってしまったというのが事実である。
高齢者向けに温泉マークの入った分かりやすい運動処方の冊子を作り、整形外来で患者さんに指導を行った。
意外にも患者さんには好評で、効果はともかく継続率は抜群に良かった。
専門的に言うとコンプライアンスが非常に良かったのである。
それもそのはずで高齢者ほど毎晩規則正しく入浴しており、お風呂では膝の痛みも取れることから運動が継続しやすいのである。
この結果は助成財団に報告したが、せっかく良いデータが出たので何か形にしたいと思い、その頃リハの新しい取り組みを紹介するコーナーが設けられていた雑誌に送ってみた。
私としてはまっとうな研究を行ったという意識は全くなかったので、こんなおもしろい取り組みをしたので紹介しますという内容であった。
しばらくして、編集部から返事が来て、非常に重要な内容を含んでいるので原著論文として再投稿して下さいと書かれてあった。
私はびっくりしたがありがたいことなので、急遽論文形式にまとめて再投稿した。
それが以下の論文である。
Closed Kinetic Chain Exerciseの臨床応用
変形性膝関節症における入浴エクササイズ
河村顕治
Journal of Clinical Rehabilitation Vol.7 No.5 544-547、1998.5
実は、変形性膝関節症の患者さんにお風呂を利用したエクササイズを行わせるというのは私のオリジナルではない。
講演などをすると、フロアから私も患者さんにお風呂を利用したエクササイズを指導しているというコメントが寄せられることがある。
それ以前に、患者さんに入浴エクササイズを指導しようとすると、以前からお風呂で運動していましたと言われることが再三ある。
入浴すると温熱効果で膝の痛みが楽になるので、運動してみようというのは自然な流れなのである。
私のオリジナルはお風呂での運動を明確にCKCに結びつけたことだと思っている。
当時、変形性膝関節症の患者さんにバスタブでCKCの運動を行わせよう等と考えた人は誰一人いなかった。
吉備国際大学では当時理学療法学科1年生に身体運動学実習を指導していた。
OKCとCKCについて講義を行い、理想的な膝リハビリテーションというテーマでレポートを書かせた。
当時、私は「入浴エクササイズ」についてはまだ研究に着手したばかりなので学生には教えていなかった。
ところが、一人の女子学生がお風呂の浮力を利用したエクササイズのレポートを提出したのである。
内容は私の考えていたレッグプレスとは違い、お風呂の底の角を足で蹴って膝伸展と共に体が浮力の作用も手伝って上方に浮くというものであった。
私はそのレポートを全員の前でほめて、満点をつけてあげた。
このことは、CKCの理解があれば、誰でも入浴エクササイズを思いつく可能性があるということである。
主に膝や腰椎のバイオメカニクスの研究を行っていた。
ボルチモアはニューヨークから南に下ったところにある。
アメリカの生活で何が困るかというと食事以外ではお風呂である。
バスタブが浅くてシャワーを前提としているので熱いお湯をためて肩までどっぷりとつかると言うことができない。
日本のお風呂が恋しかった。
そんな生活の中から変形性膝関節症の「入浴エクササイズ NY Ex.」を着想した。
講演では
アメリカ留学中ニューヨークで「入浴エクササイズ」を思いつきました。
ですから「ニュウヨクエクササイズ」ではなく「ニューヨークエクササイズ」と読んで下さい。
等と説明している。
しかしこれは半分本当で半分は罪のないジョークである。
第一ニューヨークは地図で見ると近そうに見えるが実はボルチモアからは車では4時間ほどかかる。
ニューヨークへは留学中も、帰国してからも何回か訪れたが、ニューヨークで「入浴エクササイズ」を思いついたわけではない。
しかし、アメリカ留学中にCKCの理論を学んだのは事実だし、関節を保護する筋肉の共同収縮の概念や椎間板や膝関節軟骨は血管組織を持たないことから圧縮弛緩のサイクリックな刺激が重要であることは認識していた。
実際に「入浴エクササイズ」を思いついたのは日本に帰国して吉備国際大学に赴任した1995年のことである。
当時、私は大学に赴任したばかりで科研費もなく、研究に取りかかるための研究費を必要としていた。
そんな中、地元岡山のある企業が研究助成を公募していていてそのテーマが「日本人のライフスタイルにかかわる研究」というものであった。
私は留学中の経験から日本人の入浴習慣は世界でも特異なものだと感じていたので、これはいけそうだと感じて、入浴中にバスタブでレッグプレスの運動を行うという課題を応募した。
翌年、この課題は私の思惑通りに採択された。
平成8年度第18回財団法人両備てい園記念財団助成金
日本人の生活スタイルを活かした変形性膝関節症のリハビリテーション
河村顕治
お風呂でリハビリを行うなどちょっと滑稽で、学術的にはどうかと思ったが、いざ採択されると結果を報告する義務が生じて、何かやらざるを得なくなってしまったというのが事実である。
高齢者向けに温泉マークの入った分かりやすい運動処方の冊子を作り、整形外来で患者さんに指導を行った。
意外にも患者さんには好評で、効果はともかく継続率は抜群に良かった。
専門的に言うとコンプライアンスが非常に良かったのである。
それもそのはずで高齢者ほど毎晩規則正しく入浴しており、お風呂では膝の痛みも取れることから運動が継続しやすいのである。
この結果は助成財団に報告したが、せっかく良いデータが出たので何か形にしたいと思い、その頃リハの新しい取り組みを紹介するコーナーが設けられていた雑誌に送ってみた。
私としてはまっとうな研究を行ったという意識は全くなかったので、こんなおもしろい取り組みをしたので紹介しますという内容であった。
しばらくして、編集部から返事が来て、非常に重要な内容を含んでいるので原著論文として再投稿して下さいと書かれてあった。
私はびっくりしたがありがたいことなので、急遽論文形式にまとめて再投稿した。
それが以下の論文である。
Closed Kinetic Chain Exerciseの臨床応用
変形性膝関節症における入浴エクササイズ
河村顕治
Journal of Clinical Rehabilitation Vol.7 No.5 544-547、1998.5
実は、変形性膝関節症の患者さんにお風呂を利用したエクササイズを行わせるというのは私のオリジナルではない。
講演などをすると、フロアから私も患者さんにお風呂を利用したエクササイズを指導しているというコメントが寄せられることがある。
それ以前に、患者さんに入浴エクササイズを指導しようとすると、以前からお風呂で運動していましたと言われることが再三ある。
入浴すると温熱効果で膝の痛みが楽になるので、運動してみようというのは自然な流れなのである。
私のオリジナルはお風呂での運動を明確にCKCに結びつけたことだと思っている。
当時、変形性膝関節症の患者さんにバスタブでCKCの運動を行わせよう等と考えた人は誰一人いなかった。
吉備国際大学では当時理学療法学科1年生に身体運動学実習を指導していた。
OKCとCKCについて講義を行い、理想的な膝リハビリテーションというテーマでレポートを書かせた。
当時、私は「入浴エクササイズ」についてはまだ研究に着手したばかりなので学生には教えていなかった。
ところが、一人の女子学生がお風呂の浮力を利用したエクササイズのレポートを提出したのである。
内容は私の考えていたレッグプレスとは違い、お風呂の底の角を足で蹴って膝伸展と共に体が浮力の作用も手伝って上方に浮くというものであった。
私はそのレポートを全員の前でほめて、満点をつけてあげた。
このことは、CKCの理解があれば、誰でも入浴エクササイズを思いつく可能性があるということである。