ばあちゃんの部屋のエアコンを取り替えて一定温度に保つことにしたので、ばあちゃんの口から寒い寒いという言葉が洩れることが少なくなり、表情も穏やかになった。お布団から抜け出して家の中を元気に徘徊するくらいになればいいと思う。ばあちゃん太陽作戦はまずまず成功かな。
そう思っていた矢先、寝る前になってばあちゃんが突然、スイッチを切っておくれと言い出した。そう言い出すだろうと思って、リモコンをばあちゃんに手渡していない。
ばあちゃんは二晩目にまたまた、もったいない精神が頭をもたげてきたみたいで、私は夏でもよっぽどのことがないかぎりエアコンなんてつけなんだ、と言う。寒いからと言っても聞かず、あまり強く言い張るので昨晩はスイッチを切って寝た。
今朝5時過ぎ、やはり寒かろうと思って、寝入っているばあちゃんに気付かれないようにこっそりばあちゃんの部屋に入ってエアコンのスイッチを入れておいた。しばらくしてまた部屋を覗いてみると温かくなった部屋でまだ静かに寝入っていた。エアコンのスイッチを入れる入れない論争はこれから先も続きそうだ。手強い89歳のばあちゃん相手に、エアコン支配権だけは明け渡すわけにはいかない。