日本語はひらがなとカタカナそして漢字を交ぜて表記する。
日本語を学ぶ外国人にとって,3種類の文字を覚えることは用意ではないことだろう。
だが,カタカナは外来語を表記をするとき用いると非常に識別しやすいし,漢字は読み方がわからなくても意味が伝わってくる。
日本語とは非常に表現豊かな文字文化を持っていると思う。
一方,韓国語は表音文字の「ハングル」を使う。
韓国の新聞などの印刷物は,韓国独自の言葉(固有語),中国から伝来してきた漢字語,そして外来語をすべて「ハングル」という1種類の文字で書いてしまうことが多い。
つまりすべてひらがなで書かれているのと大差ないのだ。
たとえば「母はハハハと笑った」をひらがなだけで書いてみると「ははははははとわらった」となってしまう。
もちろん声にだして読んでみれば違いがわかるだろうし,「ははは」の前に句読点を入れれば少しは意味が通じるかもしれない。
いずれにそ「は」の字が6個もならんでいるを見て「母」という名詞と「は」という助詞と「ハハハ」という笑い声を,一瞬で認識できる日本人は少ないと思うのだ。
日本語を習って間もない先生が,日本の「ある農産物の出荷が開始された」という新聞記事を読んだそうだ。
そこには「ながいもの出荷開始」と書いてあった。その先生は「長い物」を出荷と書いてあるけど,その「長い物」って何なんだろう?と真剣に悩んだそうだ。
もちろんこの先生が誤解した「長い物」とは,「長芋」のことなのだが,笑ってはいけない。
そういう私も,つい先日同じような誤解をしてしまったのだ。
夏休みが終わり,最初の授業で「夏休みの話」をすることになった。
クラスメートが,とある公園を見学に行ったとき,心ないカメラマンが「ハスの花」をきれいに撮影するために,手前にあるほかのハスの茎を折っていたという話をした。
ところが,彼は突然横道にそれて,ハスの花とは別の話をし始めた。
その話を聞いていた先生は,「いや~○○さんは,ハスの花の話をしたので,その後どんなことを言うのか期待していたんですけど,突然,横道にそれましたね~」というやいなや,黒板にこんなことを書き始めた。
삼천포로 빠졌다
そして先生は付け加えるように「話が横道にそれるとき,このように表現します」といったのだ。
私は一応辞書を調べたのだが,この慣用句を見つけることができなかった。
とりあえず,この文を分解して解釈しなければなるまい。
初めの2文字は漢数字だと思った。
삼천
そして続く2文字も漢字の言葉だと思った。
辞書を引くと「捕虜」という意味が見つかった。
포로
最後の3文字は恋に「陥る」とか,どぶに「はまる」とか,どこかに堕ちてしまうというような意味の言葉だ。
빠지다
빠졌다はその過去形だから「陥った」,「はまった」?
この言葉を並べると「3千」,「捕虜」,「陥った」となるのだが,何かおかしい。
助詞などを補足して考えると「3千人が捕虜に陥った」ということか?
それがどうして「横道にそれる」と結びつくのだろう?
この言葉に悩んでいたのは私だけではなく,しびれを切らしたクラスメートが,再度,先生に質問をしたところ,大きな間違いであることがわかった。
早い話が単語の区切りを間違っているのである。
最初の3文字は韓国南部にある「地名」,4番目の文字は「~へ,~に」という方向を表す助詞だったのだ。
삼천포(三千浦)
つまり「旅行をしていたら,いつの間にかミリに迷って 삼천포というところに来てしまった」という比喩から転じた慣用句で,「わき道にそれる」とか「途中で考えが変わってしまう」というようなニュアンスを持つ表現らしい。
辞書に 삼천포という地名が載っていたら,もっと早く誤解がとけたと思うのだが,普通の辞書には町や村の名前まですべてが載っていることはない。
新聞記事の中にわからない単語があったとしても,それが人の名前や大学,会社の名前だと気づかなければ,むだな時間を浪費してしまうのだ。
試しにこの삼천포로 빠졌다という言葉をインターネットで探してみたら,かなりの数のヒットした。
*古狸案先生の「役に立たないはずがない韓国語」から。(みなもとせいいち)
●補足
物事が順調に運んでいる途中で変な方向に行ってしまうことを‘잘 나가다가 삼천포로 빠진다’といいます。
あまりいい意味を持たないこの表現は,三千浦地域の住民たちにとっては響きの悪い言葉です。
三千浦は慶尙南道[경상남도]南海岸の景勝地・閑麗水道[한려수도]のほぼ中央に位置する漁港として知られた町で,釜山と麗水[여수]を結ぶ水中翼船も入港し,海釣り目的の釣り客や観光客が多く訪れるところです。
この言葉の由来に関しては諸説がさまざまです。
朝鮮末期に高城に住んでいた人が,普州[진주]の親戚に行く途中で道を間違えて,途中の三叉路で三千浦方向に行ってしまったとか,釜山―普州を結ぶ気動車3両のうち最後の1両が普州の手前で別れて三千浦に行くのを間違えて乗ってしまい,目的地と違った三千浦に行ってしまったとか。
しかし現在は,三千浦に行く鉄道・晋州線は廃止され,三千浦市という地名も1995年に周辺の町との合併により消え,泗川市[사천시]になってしまいました。
日本語を学ぶ外国人にとって,3種類の文字を覚えることは用意ではないことだろう。
だが,カタカナは外来語を表記をするとき用いると非常に識別しやすいし,漢字は読み方がわからなくても意味が伝わってくる。
日本語とは非常に表現豊かな文字文化を持っていると思う。
一方,韓国語は表音文字の「ハングル」を使う。
韓国の新聞などの印刷物は,韓国独自の言葉(固有語),中国から伝来してきた漢字語,そして外来語をすべて「ハングル」という1種類の文字で書いてしまうことが多い。
つまりすべてひらがなで書かれているのと大差ないのだ。
たとえば「母はハハハと笑った」をひらがなだけで書いてみると「ははははははとわらった」となってしまう。
もちろん声にだして読んでみれば違いがわかるだろうし,「ははは」の前に句読点を入れれば少しは意味が通じるかもしれない。
いずれにそ「は」の字が6個もならんでいるを見て「母」という名詞と「は」という助詞と「ハハハ」という笑い声を,一瞬で認識できる日本人は少ないと思うのだ。
日本語を習って間もない先生が,日本の「ある農産物の出荷が開始された」という新聞記事を読んだそうだ。
そこには「ながいもの出荷開始」と書いてあった。その先生は「長い物」を出荷と書いてあるけど,その「長い物」って何なんだろう?と真剣に悩んだそうだ。
もちろんこの先生が誤解した「長い物」とは,「長芋」のことなのだが,笑ってはいけない。
そういう私も,つい先日同じような誤解をしてしまったのだ。
夏休みが終わり,最初の授業で「夏休みの話」をすることになった。
クラスメートが,とある公園を見学に行ったとき,心ないカメラマンが「ハスの花」をきれいに撮影するために,手前にあるほかのハスの茎を折っていたという話をした。
ところが,彼は突然横道にそれて,ハスの花とは別の話をし始めた。
その話を聞いていた先生は,「いや~○○さんは,ハスの花の話をしたので,その後どんなことを言うのか期待していたんですけど,突然,横道にそれましたね~」というやいなや,黒板にこんなことを書き始めた。
삼천포로 빠졌다
そして先生は付け加えるように「話が横道にそれるとき,このように表現します」といったのだ。
私は一応辞書を調べたのだが,この慣用句を見つけることができなかった。
とりあえず,この文を分解して解釈しなければなるまい。
初めの2文字は漢数字だと思った。
삼천
そして続く2文字も漢字の言葉だと思った。
辞書を引くと「捕虜」という意味が見つかった。
포로
最後の3文字は恋に「陥る」とか,どぶに「はまる」とか,どこかに堕ちてしまうというような意味の言葉だ。
빠지다
빠졌다はその過去形だから「陥った」,「はまった」?
この言葉を並べると「3千」,「捕虜」,「陥った」となるのだが,何かおかしい。
助詞などを補足して考えると「3千人が捕虜に陥った」ということか?
それがどうして「横道にそれる」と結びつくのだろう?
この言葉に悩んでいたのは私だけではなく,しびれを切らしたクラスメートが,再度,先生に質問をしたところ,大きな間違いであることがわかった。
早い話が単語の区切りを間違っているのである。
最初の3文字は韓国南部にある「地名」,4番目の文字は「~へ,~に」という方向を表す助詞だったのだ。
삼천포(三千浦)
つまり「旅行をしていたら,いつの間にかミリに迷って 삼천포というところに来てしまった」という比喩から転じた慣用句で,「わき道にそれる」とか「途中で考えが変わってしまう」というようなニュアンスを持つ表現らしい。
辞書に 삼천포という地名が載っていたら,もっと早く誤解がとけたと思うのだが,普通の辞書には町や村の名前まですべてが載っていることはない。
新聞記事の中にわからない単語があったとしても,それが人の名前や大学,会社の名前だと気づかなければ,むだな時間を浪費してしまうのだ。
試しにこの삼천포로 빠졌다という言葉をインターネットで探してみたら,かなりの数のヒットした。
*古狸案先生の「役に立たないはずがない韓国語」から。(みなもとせいいち)
●補足
物事が順調に運んでいる途中で変な方向に行ってしまうことを‘잘 나가다가 삼천포로 빠진다’といいます。
あまりいい意味を持たないこの表現は,三千浦地域の住民たちにとっては響きの悪い言葉です。
三千浦は慶尙南道[경상남도]南海岸の景勝地・閑麗水道[한려수도]のほぼ中央に位置する漁港として知られた町で,釜山と麗水[여수]を結ぶ水中翼船も入港し,海釣り目的の釣り客や観光客が多く訪れるところです。
この言葉の由来に関しては諸説がさまざまです。
朝鮮末期に高城に住んでいた人が,普州[진주]の親戚に行く途中で道を間違えて,途中の三叉路で三千浦方向に行ってしまったとか,釜山―普州を結ぶ気動車3両のうち最後の1両が普州の手前で別れて三千浦に行くのを間違えて乗ってしまい,目的地と違った三千浦に行ってしまったとか。
しかし現在は,三千浦に行く鉄道・晋州線は廃止され,三千浦市という地名も1995年に周辺の町との合併により消え,泗川市[사천시]になってしまいました。
誤字を発見しました。
「旅行をしていたら,いつの間にかミリに迷って
~~
この文章は先生の打ち直しなんでしょうね。
本には誤字はありませんでしたし、原文にも誤字はありませんでした。
話しは変わりますが以前まで「役に~」を再アップしていたサイトが50話以降後進されないので、先生もお忙しいんだろうなと思っておりました。
こっちで再開しているのを見て何かしら不具合があったのか、もしくはやたらと複数のサイトを運営するのが面倒になったのかどちらかなのだろうと感じました。