白粉花「メンデルの遺伝」の法則でおなじみの花であえる。原産地は南米だが、貝原益軒の「花譜」にはすでに出ているので、外国産の草花としては最も古くから日本に伝わったものであろう。暑い日中ではつぼんでいて、暮れ始めると咲きだすので「夕化粧品」という名もあるほどである。月下美人、夕顔、月見草と、夜咲く花は大方が白、りまたは黄色の花だが、この白粉だけは例外で、紅、白、黄、絞りと、暗がりに咲かせておくのはもっいたいないような花色である。鮮やかな色と甘い香を、翌朝までふりまいている。種子の中に白粉質の胚芽があるのでオシロイバナと呼ばよる。七月九月まで咲通している期間の長いこの花を夏の花だと思っている人もいるようだ。「おしろい花の紅白はねちがひ 富安風生」「おしろいや秋の小花が咲くまでに 小杉余子」「白粉草の花の夕闇躓けり 渡辺桂子」「おしろいや風吹きつどう赤子の頭 波多野爽波」「おしろいの蕾そろへて咲かんとす 中村秋晴」「おいがいが咲いて子供が育つ路地 菖蒲あや」「白粉の花ぬつて見る娘かな 一茶」「おしろいは妹のものよ俗な花 正岡子規」「白粉の花落ち横に縦にかな 高浜虚子」。(おしろいの花に触るる袖の丈ケイスケ)