「秋寒」は冬の季語だが、日本の四季の移り雪は、ある日突然気温が下がって冬になるというわけではなく、秋の季節がひそかに徐々に訪れている。立冬前の寒さを全般的に「秋寒」というが、秋のうちの寒さを微妙に言い分けた季語が多いのも興味深い。「秋寒や行く先々では人の家 一 茶」「秋寒し此頃あるる海の色 夏目漱石」「やゝ寒み襟を正して坐りけり ケイスケ)。「やゝ寒き小野の浅芽の秋風にいつより鹿の鳴きはじめけん」「(続古今和歌集」藤原資季)と詠われたよわれているように、昔から季節の深まりの微妙な変化を人々は敏感に感じ取っていた。