渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

今夜も西部劇 ~背景が絵であること 『続・夕陽のガンマン』~

2017年07月17日 | open



ブロンディ(クリント・イーストウッド)に見捨てられて砂漠を100キロも
歩かされた仕打ちを受けたアウトローのトゥーコ(イーライ・ウォーラック)
は、復讐のために
銃砲店を襲って銃を入手し、仲間を雇い、ホテルに
いるブロンディを
襲撃する。
その時、南軍の大軍の行進が止まり、ホテルの二階に忍び寄る敵3名
の拍車の足音に気づいたブロンディは、コルト・ネービー・コンバージョン
の分解組み立て中だったが、急いで弾を5発だけ銃に装填し、入口から
侵入してきた敵3名をファニング連射で一気に倒し、さらに1名には
とどめの1発をお見舞いする

刹那、窓際から入ってきたトゥーコが拍車を鳴らして銃をブロンディに
突きつけて言う。
「足音にも二つある。入口から来るやつと窓から来るやつ」と。

その時の窓の外の背景、思いっきり下手くそな絵ですがな(笑
しかも歪んでるし(^^;
窓外のテラスの床レベルと窓のレベルもあってない「変な絵」になって
いるし。

スタジオで撮影したシーンであること確定だが、もう少しましな演出は
できなかったのか。つか、絵が下手過ぎ。


こういう手法は映画『ワイルド・ギース』(1978)でもあった。
兵舎の中での傭兵作戦会議の時、室内を移動する登場人物に
合せてキャメラをパンさせたら窓の外の風景が同時に動くのだが、
それが明らかに写真。
動きも手動でやっているのがありありと判るような、カメラの移動と
合っておらずとても不自然なのよね。
撮影上の下手(げて)、拙劣な演出というやつです。
非常に作品の造りが安っぽくなる。
007シリーズなどでも、1960年代などの車のシーンでは、移動中
の車内から外の景色は撮影された景色を合成しているが、非常に
稚拙でチャチだったりする。
いくらCGが無い時代で合成が難しかったとはいえ、日本の円谷
プロの合成技術の高さを今さらながら思い知る。円谷プロの特撮
合成技術は世界トップクラスだったのではなかろうか。


今夜も西部劇 ~『アウトロー』と西部劇鑑賞法~

2017年07月17日 | open



私と友人の西部劇鑑賞法は同じである。
昨夜、友人からメールが来た。
本来昨夜は『リオ・ブラボー』を観る予定だったのだが、急きょ
クリント・イーストウッドの『アウトロー』に変更したそうだ。
そこで画像送信と共にこう言ってきた。
「二丁拳銃だから今夜は二丁」

・・・・アホや(≧∇≦)


ブルーレイやDVDでどんどん映画作品が出てくるのはよいことだが、
映像が綺麗になりすぎて折角の視覚効果が消える場合もある。
典型的なのは角川映画の『汚れた英雄』で、ビデオでは再現されて
いた世界初の「ブルー感光フィルム」による夜と夜明けの青みがかった
独特の映像美がDVDではただの夜景になってしまって消えていた。
キタノブルーはその角川春樹の手法を真似たものだが、真実を知らない
世界中の人からは「キタノブルー」などと呼ばれるに至っている。角川
春樹の『汚れた英雄』(1983)の劇場フィルムこそが世界初の角川
ブルーであり、劇場で観るとたとえようがない美しさだった。私は劇場
で『汚れた英雄』を6回観た。


この『アウトロー』(1975)でイーストウッドが使用したコルト・ウォーカー
はナショナル・ファイアアームズ博物館(米国バージニア州フェアファッ
クス)に展示されている。





The Outlaw Josey Wales (1975)
Clint Eastwood as Josey Wales
Italian Colt Walker - .44 caliber

This gun, and the similar Walker used in True Grit,
were both used in The Outlaw Josey Wales by Clint
Eastwood. Both revolvers are Italian reproductions
and have been converted to fire five-in-one blanks
for film use. At some point in its rental history a
loading lever catch similar to those used on Dragoon
revolvers was added to the gun. The poster for this
film featured an enraged Josey Wales holding both
revolvers.

Collection of The National Firearms Museum



クリント・イーストウッドは『勇気ある追跡』(1969)で使用された
コルト・ウォーカーの個体そのものを使用していたのだった。
これはなんだかプチ・トリビアだ。

クリント・イーストウッドは1975年作『アウトロー』において、この
ジョン・ウェインが握る個体そのものを使用していた。








この2010年のリメイク版でもコルト・ウォーカーは登場するが、博物館
展示物の個体ではない。こちらのリメイク版の出来は散々で、見るも
無残なものだった。役者の力量というよりも、監督の力量の差だろう。


違いが判る人は即判別できただろう。
NFA博物館に展示されている『勇気ある追跡』でお嬢ちゃんが
使う銃はパーカッションではなくカートリッヂコンバージョンである。
つまり、『アウトロー』の宣伝用ポスターにあるクリントが構える
二丁拳銃の個体ではなく、次に示す
金属薬莢コンバージョンモデル
である、ということ。
そういうところは、映画作品ではお見逃しなく。
宣伝用ポスターやスチールというものは、作品本編とは別物の
ヤラセ撮影用の銃などを使用することも多いのだ。『アルパーサの
決闘』のDVDなどはひどいもので、スペインのデニックスというレプ
リカガン・メーカーの実銃とは似ても似つかないシリンダーを持つ
SAAもどきがDVDパッケージに合成写真で使用されている。

作品は凡作であるが、銃撃戦のシーンは異様にリアルだ。
娼婦でもないのに病的オサセの女性がヒロインという西部劇も
珍しい。結局、この女のせいで男の友情(三角関係ではない)に
亀裂が入って行く。自分の保身のためには敵だろうが誰にでも
媚を売ってシナを作りホイホイ股を開くこの女は、観ていて「死ね
ばいいのに」と思うのだが、この映画はそうではない男同士の
心のやりとりが見所なのだろう。極めて「大人」の男の映画だ。
俺なんかだと、こういうのはグーで女の顔面連打しそうだ。
そして、こういう女は現実世界でもいる。男の体無しでは日常が
過ごせないという女なのだが、誰彼かまわずなので、まあ、なん
というか完全に精神病の類だろう。
漫画家守村大は『あいしてる』の中でそういう女性をマリアとして
描いたが、実際のところ、アブダラのマリアは売春婦であった
可能性もある。だが、売春婦はオサセとは違う。あれは人類で
一番古い職業だ(二番目に古い職業が傭兵)。オサセは麻薬
中毒患者のようなものだ。タチの悪い癖以上のものであり、あれ
は病気なのである。

(『あいしてる』守村大)
カワサキSSマッハの理想形のチューンナップの形。



NFA博物館展示の銃はこれではなく・・・(これはパーカッションのまま)


こちら。