渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

日本刀の鍔の固定方法

2018年04月04日 | open
 

天正八年製古刀に装着してある
赤銅鍔(江戸
時代初期、鑑定書
付)
 
平成四年製斬鉄剣小林康宏に
装着してある
鉄鍔(古金工師、
安土桃山)



鍔の固定には刀に合わせたガチ
ガチの隙間ない責金
を専門金工
師に誂えてもらい、鍔の穴に

ち込んで嵌め込み、刀身が微塵
りとぐらつかないように
ギチギチに固定
されているの
が望ましい。
しかし、緩い鍔を装着する際に、
責金を
作りに出さない時はどう
るか。
私は町井勲先生の方法でグルー
ガンを使っ
てみたが、やり方が
下手っぴなためかうまく
行かな
かったので、旧古の方法に戻った。
それは、鍔と刀身の隙間に木製
のクサビを
キッツキツに隙間なく
きつく打ち込むの
だ。
これで鍔は微動たりともしない。
空気斬り
だろうが実試斬だろうが
全くビクともしな
い。ピッタリに
木片を削る技術が必要。
欠点は全バラ手入れの時は、その
クサビは
廃棄となり、また新たに
作らなければなら
ない点だ。
また、いずれは緩むので、永久に
は使え
ない。竹目釘と同じく、
消耗品と考える
必要がある。
 
なお、鍔鳴りは大抵は目釘の不具
合から
発生する。
鳴りっぱなしにしておくと、確実
にその
緩みのクリアランスは増幅
して危険極まり
ない事になる。
鍔鳴りがする刀の持ち主は、例え
模擬刀
だろうと、武人の心得無
き者なので、そう
した刀振り
の近くには寄ってはならない。
真剣日本刀で鍔鳴り発生などはト
ンデモな
い事なのだ。タイヤの
ホイールボルトが緩ん
まま車両
を走らせるようなもの。危険過
る。刀の世界では、自覚無
いとんでも
が多いけど。
 
これは自作の鍛造鉄鍔。
東京在住時代に製作した。


梅の花を彫り込むつもりだったが、
途中
で錆付をしてしまった(笑)。
タンニンによる煮込み錆付けだ。
この鍔はツナギの拵に着けている。
定寸の木製ツナギを勢いよく振り
下ろして
止めた時、木製刀身
左右に微動だに揺れ
ないよう
切り下ろすにはかなりの技
術が
いる。
存外、これを出来る人は刀術者で
も少な
い。
この訓練は実際の「切り」に絶大
な効果
を発揮する。これの鍛錬を
積んだか積まぬ
かで、実際の切り
のレベルは雲泥の差が出
ることは
確実だ。
が、今ではあまりやる人は少ない。
タケミツなどと馬鹿にしている
馬鹿だらけ
だから。刀法の運刀の
何たるかに理解が
及ばない。
だが、いにしえの先人剣士はきっ
ちりと
斯界の我々後進たちに
残し伝えている。
「桐の木刀で稽古せよ」と。
極端に軽い刀身をブレ無く通常
通り振る
のは極めて難しいので
ある。
力を使う限り
刀は全く本来の使い
方は不能になるのだ
重くて長大で幅広の刀もどきを
振ること
などは簡単なのだ。
ごまかしがいくらで
も利くのだか
ら。
素振りでも物切りでも
刃筋が狂お
うが鉄の絶対量と重量で畳表
巻き
などはそうした刃物では切断できる。
剣技として全く意味ない。
第一、そんな刃物を差して登
城などしたら
咎めらるのだ
から。武士はそういう変な
物は使わないし、心得違いの
慮外も起こさ
ない。
(武術としてあえて大太刀を使う
流儀の
剣理はこれら偽物群とは
別物)
 
「武士の鍔」としてこれは作った。
ただ、失敗かも。
軽く金属製目釘抜き小鎚で叩くと
チーン
と澄んだ綺麗な高音が響く。
鍛造物としては、そうした物は
あまり良く
はない。
仏壇前のチーンのようだからでは
なく、冶金的にあまりよくないの
だ。
刀も丈夫でよく切れる刀はキーン
ではなく
ジャランという音がする。
刀と刀を合わせたら、ガシャン
カシャンと
いう音がする刀が頑丈
だ。キーンはダメ。
この鍔は、もしかすると、斬鉄剣
での斬撃
を受け止めたりすると、
鍔もろとも甲手を
切り落とされて
しま
うかも知れない。
でも、まあ、薩摩流儀のように
「鍔は滑
止めの役割」とする思想
も武の世界には
あるくらいだから、
一概に決め付けはでき
ない。馬鹿
な決め付けで思考固定させると
有象無象のネットにわんさかいる
ホゲタラさん
になってしまう。
武は柔軟なり。硬直をこそ一番
忌避する。
理由は明白。思考も動きも、硬直
は死に
直結するからだ。バイクの
操縦と全く一緒だね。