渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

2018年04月05日 | open



しかし、何度見てもこの鳳凰の顔はヤッタラン(笑)。
道場の先輩がくれた時、最初「なすびですか?」と言ったら
「バカ!(≧∀≦)」と言われた。
今は埼玉で指導者となっている先輩が自分の刀に着けていたこの
鍔をくれた。
以来、四半世紀、この鍔を愛用している。
これは鑑定書付だ。江戸初期(桃山)と鑑されている。

刀剣史では普通の歴史区分とは異なり、江戸初期慶長年間(慶長は
戦国安土桃山末期から江戸時代初期までの元号)は桃山時代と区分
している。
後年、全く同じデザインの赤銅覆輪山銅地の鍔を手に入れた。
どちらも薄い銅板を叩き出しで形作ってそれを銅板にサンドウィッチ
した3枚仕様の作り方で、プレス機も無い時代にどうやって仕上げた
のか、方法は解明されていない。
所謂、注文誂えではなく、既製品として仕上げる仕上物という作だが、
その技法は簡単ではない。(誂え品は仕立物。既製品は仕上物)
覆輪には赤銅が巻かれ、全体的に黒く色あげされているが、現在は
純金の鍍金部分とともに禿げてきている。

この鍔工房は美濃系だが、同工房作の作品は多く見る。
同じ技法なので、すぐに同工房作と判るが、状態が悪く廉価な物から
そこそこの値段が張る作まである。
この合わせ銅(がね)の仕上物の鍔は、なかなか楽しめる。
私は、脇後藤の時代物赤銅縁頭をあしらった柄前にこの鍔を装着して、
全体の意匠的なバランスを取るようにした。
後藤系の赤銅魚子(ななこ)地の金具ならば、やはり魚子の赤銅物が
合うだろうとのことでトータルコーディネートした。

刀装具の楽しみは、バラバラに買い求めても、一つの物語をその
金具構成の中に設定できることだ。
こうしたことは、昔から武士たちは楽しんでいた。
源平合戦絵巻を柄金具に織り込んだり、中国故事に倣ったり、
あるいは自分だけの思いを乗せた金具を揃えて一つののストーリー
性を武士は刀装具に持たせて自己の感性を表現した。
「刀は人を表す」とはいにしえより云われる事だが、まさに持ち主
の感性、持ち主の人柄が刀には現れる。
日本刀の世界は面白い。
刀を見ると人も見えてくる。

ちなみにヤッタランとはキャプテンハーロックの海賊船アルカディア号
の乗組員。松本零士先生が考えたキャラだ。右はそのモデルの漫画家
新谷かおる先生。松本先生のアシスタント時代にモデルにされた。