【赤、白に続く「COLORS」シリーズの第3弾】
北九州市立美術館本館(戸畑区)で「青」に的を絞った「あおい絵の展覧会」が開かれている。2010年度にスタートした「COLORS」シリーズの第3弾。紺碧の空、群青の海原、青々とした草木……。一口に青といっても様々な青がある。青い色は見る気持ちを鎮める効果があり、憂鬱や寂しさも表す。そうした多彩な青の具象画・抽象画を一堂に集めた。会期は来年2月3日まで。
東山魁夷の「凍池」(写真㊧)は緩やかな曲線で大きな画面を左右2つに分けた構図。雪の白さと枯れ枝、凍った池の水面の深い青から厳寒の空気感が伝わってくる。まさに〝静謐〟という表現が似合う風景画だ。1977年制作ということは70歳直前か。73年から約10年がかりで唐招提寺(奈良)の障壁画の制作に携わっており、その最中の作品ということになる。
浮世絵師・歌川広重の「名所江戸百景 深川州崎十万坪」(写真㊨)はワシの目で俯瞰した大胆な構図で、空の濃紺と海の明るい青が印象的。その美しさは海外で「ヒロシゲブルー」と呼ばれる。野見山暁治の「病める女」は暗く沈んだ表情の女性をほとんど黒に近い青で描いた。前田常作の作品は「出現光」と「遍照陽光 青」の2点を展示。仏教的な宇宙感を深い青色を基調に神秘的に描く。
印象派の巨匠、クロード・モネの「睡蓮、柳の反影」(写真㊧)は柳が水面に映る構図の作品を晩年に6点描いており、この館蔵の作品はそのうちの1つ。水面全体に柳が影を落とす中で青い睡蓮の葉が右下と左上に浮かぶ。「光の画家」ともいわれたモネだが、描きなぐったような荒々しいタッチの不思議な作品だ。睡蓮の連作は抽象表現主義やアンフォルメル(前衛的絵画運動)の先駆けになったという。
英国のポップアート作家、デイヴィッド・ホックニーの「太い線と細い線、緑の淡彩、明るい青の淡彩、暗い青の淡彩でできた水のリトグラフ」(写真㊨)は、同じプールの情景を版の組み合わせを替えて7枚制作しているうちの1点。このほかモーリス・ユトリロの「取引所」「モンマルトルのノルヴァン通り」、坂本繁二郎の「海岸の牛」、小出楢重の「卓上蔬菜」、平田逸治の「青いエンヂニア」、アンリ・マティスの「ジャズ」、池田満寿夫の「マググリットの空と他の空」なども展示中。