【福岡アジア美術館は「のぞく」をキーワードに】
福岡市立の美術館・博物館3館による連携企画展「冬のおとなミュージアム」が始まった。「LOVE/愛」をテーマに昨年開いた企画展に続く第2弾。今年は「秘密」を共通テーマに掲げ、福岡市美術館は「かくす」、福岡アジア美術館は「のぞく」、福岡市博物館は「あばく」をキーワードにそれぞれのコレクション作品に秘められた謎に迫る。
「のぞく」をキーワードとするアジア美術館(会期12月17日~4月5日)では収蔵品の中から15点を選んで展示中。『ワニと友だち』(写真㊨)はインドネシアのイ・デワ・プトゥ・モコさん(1934~)の作品。実際にテレビで見たワニをペットにする少女の映像をもとに描いたという。その様子を少年が窓の隙間からのぞき込む。ブルネイのザイニン・マンソールさん(1962~)の作品『毛布の中の敵、羊の皮を着た狼』は、布団の中に潜り込んだ毒蛇の尻尾がベッドの端からのぞく。が、ベッドの男性はまだ蛇に気づいていない。安全の中に潜む危険を暗示する。
フィリピンのノベルト・ロルダンさん(1953~)の『ランゴニの9人』は手足を切断され逆さ吊りにされた9人の若者を、布や木を使って立体的に表現する。戒厳令下でバスケットボールに興じていた若者たちが共産主義者と間違えられ連行されて処刑されるという凄惨な事件があった。それを題材としたもので、国家権力による暴力を痛烈に批判する。インドネシア・バリ絵画のニョマン・メジャさん(1951~)の『ラーマーヤナ』は繊細な筆致でインドの叙事詩の一場面をユーモラスに描く。
すでに福岡市博物館も開幕しており(~2月14日)、福岡市美術館は年明けから始まる(1月19日~2月28日)。期間中「ミュージアム探偵の事件簿―消えた少女の秘密」と題した記念品進呈のミステリー企画や3館の学芸員2人1組によるリレー・ギャラリートークなども計画されている。