【木の実などを樹皮や地面の中に蓄える〝貯食〟の習性も】
スズメほどの大きさのシジュウカラ科の野鳥。黒・白・灰色・赤褐色という色鮮やかな配色が美しい。生息域は日本や朝鮮半島中南部、台湾など。主食は木の実や小さな昆虫などで、市販のヒマワリの種も大好物だ。餌が少なくなる晩秋~早春に庭先に置いておくと、1粒ずつくわえては近くの横枝上で、両足で押さえて鋭いくちばしを何度も打ちつけ殻を破って食べる。
ヤマガラには〝貯食〟という習性がある。木の実や種を幹や樹皮の隙間、地面の中などに貯め込み、後で取り出して食べる。蓄えた場所はかなりの高い確率で覚えているという。この習性は種子の広域散布・発芽にもつながっているようだ。ヤマガラは人懐っこく芸達者な鳥としても知られる。縁日でヤマガラの「おみくじ引き」を目にした光景がおぼろげながら記憶の彼方に浮かぶ。
この芸はくわえた1円玉を賽銭箱に落とした後、くちばしで鈴を鳴らす。そしてお宮の扉を開け、おみくじをくわえてヤマガラ使いのおじさんに渡すというもの。小山幸子著『ヤマガラの芸 文化史と行動学の視点から』(法政大学出版局刊、写真は表紙の上半分)によると、見世物としてヤマガラ芸がもてはやされたのは江戸時代になってから。ただ複数の芸を組み合わせた「おみくじ引き」は昭和に入って初めて完成した。
同書の「ヤマガラの芸の時代による推移」一覧には20を超える演目が列挙されている。簡単な「つるべ上げ」や「鐘つき」「那須の与一」などから、「おみくじ引き」や「かるたとり」「暗算」「輪抜け」という難度の高い芸まで。「かるたとり」は上の句を読むと、ヤマガラが下の句のかるたを取ってくるというもの。江戸時代に最もはやったそうだ。ただ、こうしたヤマガラ芸も野鳥の捕獲禁止や後継者難に加え、オウム・インコなど芸達者な小鳥の流通などもあって、昭和の半ば以降急速に廃れていった。「山雀の芸こぞり見る年の市」(真下喜太郎)。