【矛形の葉の形から「ウシノヒタイ」という別名も】
タデ科イヌタデ属の1年草。日本各地の用水路や小川沿い、田の畦などでごく普通に見られ、朝鮮半島や中国などにも分布する。和名は草姿や実の形が同じタデ科のソバに似て、溝を覆うように生い茂ることから。9~10月頃、高さ30~70cmほどの直立した茎の先に頭状の花序を出し、5つの萼片からなる淡紅色の小花を十数個付ける。茎には下向きの棘がある。
葉は卵形で基部が耳状に左右に張り出す矛形。その形から「ウシノヒタイ(牛の額)」という別名を持つ。また花が蕾のときには小さな金平糖が集まっているように見えることから「コンペイトウグサ」や「コンペイトウバナ」と呼ばれることも。花が純白のものは「シロバナミゾソバ」。変種に葉が大型の「オオミゾソバ」や茎の棘が少ない「ヤマミゾソバ」などがある。
学名は「Persicaria thunbergii(ペルシカリア・ツンベルギ)」。属名ペルシカリアの語源はラテン語の「モモ(桃)」から、種小名はスウェーデンの植物学者カール・ツンベルク(1743~1828)へ敬意を表したシーボルトからの献名。ミゾソバは食用や民間薬にもされてきた。新芽や軟らかい葉を茹でておひたしや和え物、油炒め、てんぷらなどに。乾燥させた葉を煎じて服用すると利尿効果があり、生の茎には止血、鎮痛作用もあるそうだ。「溝蕎麦は水の際より咲きそめし」(高浜年尾)
【出島三学者】ケンペル・ツンベルク・シーボルト
長崎市の国指定史跡「出島和蘭商館跡」の一角に、江戸時代に商館医として来日し『日本誌』を著したエンゲルベルト・ケンペル(1690年来日)と『日本植物誌』を著したカール・ツンベルク(1775年来日)の偉業を顕彰する記念碑が立つ。建てたのは同じく商館医として1823年に来日した後輩のシーボルト。日本文化を海外に広く紹介するとともに日本植物学の礎を築いた3人は〝出島三学者〟とも呼ばれる。碑面にはケンペル、ツンベルクの2人の大きな名前の下に「見られよ!君たちの植物がここに来る年毎に緑そい咲きいでて……」(呉秀三博士訳)などと刻まれている。ツンベルクに献名された植物はミゾソバのほかにもタブノキ、ゲンノショウコ、クロマツ、ノキシノブ、アマチャ、ヤハズカズラ属(ツンベルギア属)など数多い。