【和名「ヒスイラン」、今や〝ランの帝王〟とも】
ラン科バンダ属の洋ランで、東南アジアを中心にインドからオーストラリア北部にかけて約70種が分布する。カトレアなどランの仲間の多くが持つバルブ(偽球茎)を持たず、樹木の幹や岩肌などに太くて白い根を張って成長していく。属名バンダの語源もサンスクリット語で「まとわりつく」を意味する「バンダカ」から。和名では「ヒスイラン(翡翠蘭)」と呼ばれている。
バンダを代表するのがタイ北部~ミャンマーの山岳地帯に自生するセルレア種。花は青紫色で網目の模様が入る。この他の主な種は花の上半分がピンク、下半分が黄色地に褐色の網目が入るサンデリアナ、芳香のある黄花のデニソニアナ、バンドと近縁のランの交配によって生まれたアスコセンダなど。これらの原種や交配種を繰り返し掛け合わせることで、花の色や形、大きさなどがより多彩になってきた。バンダの鮮やかな青い花色は珍しく他のランでは見られない。
バンダは通常年2回開花し、品種によっては年4~5回も咲く。これもバンダの魅力の一つ。栽培が最も盛んなタイでは毎月どこかで展示会が開かれ、日本からも多くの仕入れ業者が駆けつけるという。中には花径十数センチの大輪を20輪以上付けたバンダや60cmを超える長い房に100輪超の小花を付けたバンダなど、目を見張る超豪華なものもあるそうだ。「カトレアが〝ランの女王〟なら、バンダは〝ランの帝王〟」。洋ラン業者の間からはこんな声も出始めている。ちなみにランの切り花輸出大国シンガポールではバンダの交配種が国花になっている。その名は「バンダ・ミスジョアキム」。