く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<奈良市美術館> 奈良公園開園140年「ならのシカと昆虫たち」

2020年08月03日 | メモ

【白黒写真、シカのQ&A、糞虫の標本、啓発ポスター…】

 今年は1880年(明治13年)の奈良公園開園からちょうど120年目。奈良市美術館(二条大路南1「ミ・ナーラ」5階)でその記念展「奈良を観る~ならのシカと昆虫たち」が開かれている。会場は①写真からみる奈良公園の移ろい②シカのQ&A③奈良公園の糞虫(ふんちゅう)④シカの保護啓発ポスター――など6つのコーナーで構成、大人から子どもまで楽しめる多彩な内容になっている。8月10日まで。

 写真コーナーには開園まもない明治20年代から大正、昭和前期までの奈良公園一帯の風景や建物などを収めた写真70点余が並ぶ。その中に驚きのあまり「えっ!」と声を上げそうな一点があった。「興福寺五重塔より」(昭和20年代後半)。そこには塔の上層階から外の屋根瓦の上に出て、斜めに下る隅棟瓦のそばに立つ一人の男性が写っていた。遥か眼下では春日若宮おん祭のお渡り式の最中。その行列を俯瞰する構図で写真に収めようとしたのだろう。五重塔は1962年(昭和37年)まで一般開放され登ることができたという。それにしても屋根の上に登るとは!

 絵葉書「真榊奉納御渡式」(1929年)は猿沢池で撮った花街元林院の芸妓衆の集合写真。その人数の多さに圧倒された。今はわずか数人だけだが、最盛期の昭和初期には十数軒の置屋があり約200人の芸妓や舞子さんがいたそうだ。真榊奉納は節分の日に芸妓衆が春日大社に参詣し芸事の上達を祈って行われていた。ほかには野生の猿を撮らえた「春日大社飛火野 猿」(1927年頃)、元メジャーリーガー、ジョー・ディマジオ(1914~1999)が中日ドラゴンズのキャンプ地春日野グラウンドを訪れたときの記念写真(1954年)なども。野生の猿の群れは昭和30年代頃まで公園内によく現れていたそうだ。

 奈良公園一帯には現在千数百頭のニホンジカが生息する。それらの鹿が排出するフンは毎日1トンほどに上る。そのフンを食べて処理してくれるのがコガネムシの仲間の糞虫。これまでに63種が確認されており、奈良公園は昆虫マニアの間で「糞虫の聖地」といわれているとのこと。糞虫を代表するセンチコガネのセンチは「雪隠(せっちん)」に由来するそうだ。もし糞虫がいなかったら? ある試算ではシカのフンを人の手で回収したら年間数十億円の処理費用がかかるという。糞虫はまさに〝縁の下の力持ち〟なのだ。会場にはシカをモチーフにしたパンフレットや絵葉書袋の表紙類、第1~15回の「奈良のシカ」保護啓発ポスター上位作品なども展示されている。

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