大前小前宿禰は、その主人、軽王に申上げます。
「もう、どうしようもありません。弟君に掛け合って参ります。お命だけでも長らえていただきたく。あの妹君〈軽大郎女>も随分と気を病んでいらっしゃる事だと思います。先ずは、御命をお大切になさいませ。」
と、何か言いたげな軽太子を尻眼にその場から退き、穴穂御子のいますその門前に馳せ参じます。そして、我が家門前に冰雨を退避している弟君に面会を請います。
その時、まず、発した大前小前宿禰が言葉を「古事記」には、次のように書いております。
“我天皇之御子”
とです。普通なら、その時には、まだ、次期の天皇は決まってはいません。でも敢て、宿禰は、高らかに、
”我天皇”
と呼びかけております。この宿禰は、どうにかして軽王の「お命」だけでもという考えがあったのでしょうか。考えて考え抜いた弟君と交渉の幕が切って落とされます。
このような読みを私はするのですが、皆さんはどうこの物語を御読みになさいますか??_