胸の中に、しかと抱きしめた吾が愛しのあなたが、今、ここにいる。何と幸せなことよ。貴方がいなかった昨日までは、あなたが何処にいようと、例え、追われるようにして離れてしまった故郷であっても、あなたが在る家にでも、すぐにでも飛んでいきたいものだと思っていたのですが、それが
在りと 言はばこそに< 阿里登 伊波婆許曾爾>
家にも行かめ 国をも偲はめ<伊幣爾母由加米 久爾袁母斯怒波米>
これだけで、もう後は言葉にはなりません、再び しかとその胸を抱き寄せます。それ以上の言葉は、もう、そこには必要ありません。その心は甚く衣通姫に響き渡るように伝わってきます。
「今は違います。貴方が、ここに、私の前にちゃんといるのです。もう、決して離れ離れになるようなことはしません。愛しの我が妻よ」
と。
それからの二人の運命は、古事記には、ただ
“即共自死”
と、たった4文字で書いているだけです。それだけでは、あまりにも、この結末は淋し過ぎます。私の、ありったけの言葉???で、その最後を描いてみたいと思います。どうなりますか???お叱りは覚悟の上です。