私は「玉露」を飲んでいます。ぐっと冷えた麦茶も、日本の夏のおつな飲み物ですが、やっぱり私は少々お値段は高いのですが、何といっても、冷水で頂く玉露が、暑い夏を乗り切る最高のお茶だと思います。手間暇をかけないと、そんなにいいお茶は飲めませんよ。清水次郎長じゃありませんが、お茶は香りを楽しめばいいのではありません、やっぱり味が勝負ですからね。
伊予の地で再会した後、同母の兄妹である木梨之軽御子と衣通姫の二人が、誰はばかりなく愛し合うことができる世界はこの世の中には、どこを探しても見つけることはもうできません。「鏡」や「真玉」の神の世界にしか住む場所は残されてはいなかったのです。そこで此の二人は“共自死”を選ぶのです。「死」と書かれていますが、二人は決して死を選んだのではないと思います、住む場所を、この地上ではなく、彼等の遠い祖先の聖地大空の彼方にある神の住むい世界に移すための手段であったに過ぎないと思われます。
それが、“阿比泥<アヒネ>能波麻”(阿比泥の浜)を舞台にして展開されたのではないかと想像します。
夏の初めです。空と海一面に広がる黄金のカーテンの中に、今にも、落ちかかろうとするまんまるい真っ赤な夕日から伸びた一条の光の帯が海面に照り映え、大きく長くを阿比泥の浜まで伸びております。その光の帯に向って、ゆっくりと二つの影法師が歩んで行きます。この世の中にあるすべての音が、風の音も波打つ音も、ましてやカモメの鳴き声など、何もかにもが一切に、突然に、この世の中から消え去ってしまいます。