我慢に我慢を重ねても、やはり恋心の方が重たかったのです。とうとう軽王は想いに至るのです。
“然感情既盛 殆将至死”椰主人
しかし、愛しいと思う心は 死なんばかりに燃え上がった時に思われます。
“徒空死者 雖有罪 何得忍乎”
徒に空しく死するより たとえ罪ありといえども どうしてこの恋心を抑えることができようか<ナンゾ ジノビエンヤ>」 と。
そして、その心は、直接行動としてすぐ現れるのでした。
“遂竊通<ツイニ ヒソカニ タワケテ>”
その時に詠まれた皇子の歌があります。
「あしひきの 山田を作り、山高み 下樋をわしせ 下泣きに 我が泣く妻 片泣きに 我が泣く妻 こそこそ やすく肌触れ<椰主区津娜布例>」
です。「易く、安心して、お前と私のお互いの肌を触れ合おうじゃあないか。」と云う意味です。何と楽しげな、その結果などについて何の心配もしてないような、満足しきった、何と、おおらかな歌でしょうか。私の好きな歌の一つでもあるのです