蛇<ヘミ>がうようよといる部屋をあてがわれたのです。その中で寝るのですから、当然、オホクニの命は保証しかねます。しかしです、そこには、その妻「須勢理毘売」も一緒です。もうこの時、既に、彼女はオホクニノ妻です。それを古事記には、はっきりと
”於是其妻須勢理毘売命<ソコニ コノミメ スセリビメノミコト>”
と書いてあります。その時はオホクニの妻になっていた証拠です。それが痛くスサノヲを激怒させた原因ではないかと思います。「何んて憎たらしい色男めがが」とか何とか思われたのでしょう、敢て、蛇室<ヘミノムロヤ>に入れて殺してしまおうと謀られたのです。しかし、「我が夫を殺されてたまるか」と、その妻スセリヒメは夫がヘミにかみ殺されないために、その予防のために
”蛇比禮<ヘミノヒレ>
を渡します。これが、どのような物か、形等は分からないのですが、「比禮(ひれ)」は『領布』で、風にひらめく薄物です。何か特別な形をした蛇を追い払うためにの振るための小旗のような物ではなかったかと思われます。なお、広辞苑には「古代、害虫・毒蛇などをおいはらうまじないに用いた布様なもの」とでています。
宣長も、魚の「鰭」も水お中でひらひ振る物と言うことから付けられているので、この「比禮」も
“蛇を撥ふとて振物の名なり”
と説明があります。