「この本がいい」
「それ絵ばっかりやん。こっちの方が字いっぱいあるからこれ買い」
夏休みに入ったばかりのある日の本屋での親子の会話です。夏休みの宿題なのでしょうか。それとも「学力と読書力は比例する」と子育ての本に書いてあったから本を求めに来たのでしょうか。
子どもがいいと思う本を買ってやってよ、と思わず出かかりました。
■本は「好き」こそ大事
「夏休みの課題図書」というのがあって、その感想文を書かせるのが宿題という学校もあります。私は賛成しかねます(よびかけて、自主的に書くのはいいのですが…)。
本は、理屈抜きに楽しい。好きだと思えてこそ生きる楽しみの一つにも、人生の豊かさにもつながるのです。
字がいっぱいあるから「これを読め」と言われたり、強制的に感想を書かされたのじゃ本嫌いになりませんか。
学力の高い子に本好きな子が多いのは確かですが、それは本が好きになった結果です。
■心暖まる読み聞かせを
本の好きな子になってほしいなら、「読め読め」と強制などせず、親がたまにはゆっくりと楽しんで読み聞かせをしてやってはどうでしょう。
CDでもテープでもない親の声で、ひざに抱いたり、添い寝をしながら、心も身体もあたためてやりながら、愛情と一緒に本の楽しさを届けてやりたいです。
それは、きっと母の子守唄のように一生心のなかで生き続けてくれることでしょう。
■子どもの読みたい本を
それではどんな本を読んであげたらいいのかということです。「子どもに出会わせたい良書」の紹介などもあり、それも参考にされたらいいですが、図書館や本屋に出かけ、子どもが自分の手にとって「これ読んで」という本を読んであげたらいいのです。
本に学年は関係ありません。絵本は低学年で、字が多かったら高学年というものでもありません。大人だって絵本も楽しいのですから、高学年といえども子どもたちは言わずもがなです。
■読み手も楽しんで
読み聞かせのとき、読み手は本の文字ばかり追わないで、子どもの表情を見、つぶやきを聞きながらコミュニケーションして、お話の世界で遊ぶ気持ちで読みたいです。
「ごそごそせんとちゃんと聞き」「この字何ていう字や」とか「誰が出てきたか言うてみ」とか、ましてや読み終わるや感想を求めたりせず、楽しんで読んでやりたいです。
好きな本は「もう一回」と何度も催促することもありますが、何度でも読んであげたらいいのです。
そして、読んであげている大人が楽しくなったら本物です。必ずやまた「お母さん、本読んで」とせがみます。その言葉は「お母さん大好きよ」の言葉のかわりだといわれています。
お話の楽しさ、言葉の世界の素晴らしさを、たっぷりの愛情と一緒に届けられる読み聞かせ。この良きもの、この夏やってみませんか。
(とさ・いくこ 大阪市立加賀屋小学校教諭)