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またあしたね~土佐いく子の教育つれづれ⑦

2012年03月05日 | 土佐いく子の教育つれづれ

大阪の先生にエールを 先生と親が仲良くしたら子どもがトクする

■命削る教師たち

 「先生って、最近は子どもや親も大変になってきて、ご苦労もあると思いますけど、やっぱり我々一般の仕事と比べたらラクだと感じますね」

 先日の教育問題の学習会での年配の方の声です。あー、まだこんな認識なんだろうか、とがっくりきたのも正直事実です。

 朝早くに出勤し、帰宅は9時、10時という先生もいる。夏休みもなくなった。一日中立ちっぱなし、声を出し続け、夏はクーラーのない中で目まい状態で働く。休憩時間もなく、トイレに行くのも忘れるほど。昼食は5分でかき込み、ノートの点検やテストの採点。子どものトラブルや親からの電話に対応。提出する書類の山。毎日続く会議。5段階評価で給料に格差。その評価の目にビクビク。休みたくても休んだ後の保障がない。倒れるまで休めない。先生が大幅に不足しているのだ。帰ってからもON状態は続く。テストの丸つけや明日の授業の準備、学級通信作り、そして悩み、考え続ける。キレるあの子をどうしたらいいんだ。親からのあの電話…。私って本当に甘いの?

 こうして命を削りながらも、やっぱりいい教育がしたい、子どもの笑顔が見たいと教師たちはがんばっているのです。私は、お母さんたちに、教師の実態を語り、どうぞ、わが子、わが孫たちのためにも先生にエールを送ってあげてくださいと懇願したものでした。

■教え子と30年ぶりに再会

 先日、堺の保育集会が開催され、講演をさせていただきました。その会場に30年前の教え子とそのお母さんが来てくださったのです。「先生、変わりありませんね」と言ってくださり、抱き合って、涙の再会でした。講演終了後、三人で食事を囲んで、30年の来し方をいろいろ語り合ったことでした。

 その教え子、由希ちゃんには四年生の子どもがいます。その子は、支援の必要な発達に課題を抱えているのですが、三年生の時にいじめにあい、親子共々苦しんできたと言います。

 由希ちゃんは、いじめている加害者の子らも、何か辛いことや嫌なことがあるからいじめをしているに違いない、その子たちの相手になってやろうと学校へ足を向けるのです。ボランティアで読み聞かせをしている会に入り、その活動を通して、子どもたちの心に近づいていきました。

「先生が大変だと言う子らに限って『ゆう君のおばちゃん』って言いながら甘えてきて、すごく可愛いんですよ。3クラス全部に入って、読み聞かせしたり、遊び相手になってるうちに、子どもの名前ほとんど覚えてしまいました。そんなことしているうちに、いじめは消えていきました。担任の先生もよくやってくださり感謝です」

「学校に行ってよくわかりましたよ。先生ってほんとに大変ですよね。先生、40年近くもよくやってきはりましたよね。何か手伝えないかと思うようになり、仕事もあるので度々とはいきませんけど、今は、図書館の本の整理を手伝ったり、学習園も手が回らず草がいっぱいだから、子どもらと一緒に草引きしたりしてます」

「由希ちゃん偉いなあ、よくやってるわ」と言うと、「いやあ、子どもら可愛くて、行ったら楽しいんですよ。あっちこっちから『ゆう君のおばちゃん』って駆け寄ってきてくれて嬉しいです。今では、ゆうは、どのクラスの子らとも仲良くなって喜んでます。先生方にも、ほんとに助かると喜んでいただいています」。

■教師たたきすすめる条例

 先生と教師が子どもを守り、賢くしたいという一点で、可能な協力関係を作り出していく。そのことが今どれほど求められているか実感しています。

 しかし、教育基本条例案は、親に先生の監視・評価をさせるという。教師が親の信頼と期待に応える仕事をしなければならないのは当然のことでしょう。ところが、教師の仕事を十分理解せず、一面のみをとらえて攻撃するという空気もまだまだあります。そんな声に左右されて教師たたきという動きが出てくることを心配しています。弱い者、負者をたたき、自己責任と言う政治の空気が蔓延している今だから心配するのです。

(とさ・いくこ 和歌山大学講師・大阪大学講師)

コメント (2)
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