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人間の風吹く職場に~子どもたちのまなざし③ 土佐いく子

2007年07月14日 | 土佐いく子の教育つれづれ

 子どもをめぐる状況が厳しくなればなるほど、教職員が一つになって立ち向かわねばならないのに、そんな職場づくりが難しくなっている今日です。評価システムによる競争で分断され、超多忙化がそれに拍車をかけています。
 それでも職場の仲間たちは、わが学校に人間らしい風を吹かそうと努力をおしみません。
 私の学校は、まだ古き良き庶民の暮らしの温もりが残る地域で、400人足らずの子どもたちが今も子どもらしさを失わず、けなげに生きているところです。といっても、この時代ですから問題も山積しています。

■助け合い学び合う教師
 中庭にあじさいの花が咲いた、6月に入ったばかりの日でした。「管理作業員室前のかまきりの卵がかえって赤ちゃんがたくさん出てきました。前を通ったら観察してみましょう」と学校放送が流れました。理科の好きな先生からです。その日、かまきりの周りは、子どもたちのキラキラした目が集まりました。
 その前を1年生の手をつないだ保健室の山本先生が通ります。教室をすぐ飛び出す1年生のしょうちゃんは、先生大好きよ、という安心した表情。
 「保健室は、けがをしたり病気をした時だけじゃなくて、困ったことがあったり、服のボタンがとれたりしても、いつでも来てくださいね」と語りかけてくれる先生なのです。
 保健関係の書類を担任教師がどっさり書かなくてはならず、けっこう大変なのです。この先生は転勤してきたばかりで、「1日も早く子どもの名前と健康状態を知りたいので、私の方で書かせてもらいます」と言ってくださるのです。うわぁ助かるわ、と大喜びの声が上がりました。
 雨の日の体育の時間は、講堂の取り合いです。私の担任の4年生と5年生が同じ時間でした。体育の得意な中野先生は「よっしゃ、いっしょにマット運動やったろか」と2学年合同のグループを作り、指導を始めてくださいました。
 教え合い学習を取り入れ、子どもたちは1時間の中でみるみる内に技も向上し、汗ばんだ表情がとても満足そうでした。「先生、5年みたいにできるようになりたいわ」とあこがれる4年生です。
 若い先生が増えました。先輩たちも新たな学びをしなければ、教育が前へ進まない状況にあります。
 やらされる勉強ではなく自分たちで自主的な学びの場を作ろう、と超多忙な日々のなかで、時間を工面し勉強会も始めました。放課後の図書館に有志が集まって、ホンモノの学びを始めています。きっと教育を動かす力になっていくことでしょう。

■元気の輪を作る
 そして、今年転勤してこられた真っ白な歯が健康そのものの筒井先生。子どもが大好きで学級担任をぜひにと強く申し出られたのですが、学校の事情で教務主任をしていただいています。合間をみては運動場へ飛び出し、子どもたちとめいっぱい遊んでいます。
 学校にまた新しい風が吹き始めています。さっそく教職員の要になって、自分の仕事を全うし、日々苦労してくださっているのです。みんなが疲れているな、という空気を感じたら「飲み会やりましょか」とおもしろいチラシを作り、明日への元気を作る場も用意してくれるのです。
 不安やストレスや人間不信が増え、他人に向かって攻撃性を発するなど、人づきあいの困難な現代ですが、子どもたちに安心と生きる希望を届けられる学校でありたいです。
(とさ・いくこ 大阪市立加賀屋小学校教諭)

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