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土佐いく子の教育つれづれ~またあしたね〈40〉

2015年06月26日 | 土佐いく子の教育つれづれ

ほんまもんの学力を (その1)親ができること

【全国学力テストで今…】

 今年も全国学力テストが実施された。大阪府教育委員会は、なんと中学三年生の結果を高校入試の内申に反映させると決めたのだ。文科省ですら、それは主旨が違うといわざるをえなかった。

 今、教育現場は平均点を上げることが至上命令になり、戦々恐々となっている。楽しい行事はカット、授業時間を増やす、宿題の量が半端じゃない、しかも学習内容が学力テスト対策勉強で、本物の学力とは縁遠くなっている。さらに追い込まれた教師たちの中には、学力の低い子を休ませたり、テスト時間中にまちがいを指摘し、直させたり等々の不正行為までするという事態が起きている。

 かつてこの全国学力テストで教育界が荒廃し、廃止に追い込まれているのだ。なのにまたぞろ出てきて、毎年60億円のお金が使われている。これを先生増員、30人学級など教育諸条件の整備にあてれば、どんなにか有効だろうと思う。

【大本を大事に育てる】

 学力テスト結果が入試の内申になると、親たちも追い込まれていく。今こそ、頭を冷やして本物の学力とは何なのか、そのために親に何ができるのか考えてみたい。

 ①なんと言っても学力の大本になる生活の中に安心感があることだ。自分は愛され守られている、失敗やまちがいをしても見捨てられない安心感だ。親の生活も厳しく、そうそううまくはいかないが、心がけて少しでも努力することだ。

 朝起きてきた子に「おはよう」と笑顔で声をかけてやる。顔を洗ったり歯を磨く習慣がある。「お腹減った」と言う子においしいご飯が待っていて、ワイワイにぎやかに食べる。「百回勉強せよと言うよりもおいしいご飯を」と先輩に学んできた。そして、「抱いて抱いて『宝物だ』と子どもに語りかけ、抱きしめてやれ」と教えてもらってきた。これだけで、子どもは愛されていると感じ、心が落ち着くのだ。これ抜きにどんな学力をつけるというのだ。

 ②こうして愛されて育ってきた子は、人間づき合いが上手になる。学力テストでどんなに良い点をとろうが、人間づき合いができない学生たちをたくさん見てきた。反対に人間づき合いができる人は、生きるに値する豊かな人生が送れているではないか。

 ③人間は言葉で思考し、コミュニケーションし、自己を表現し、新しい世界を創造する。この言葉の力が弱かったら、本物の学力は身につかない。自己と他者、世界を認識し、自分の思いが自分の言葉で表現でき、コミュニケーション能力を獲得することは、人間形成と学力の礎である。そのために親にできることは、子どもの話を目を見て、共感して聴いてやることだ。さらに、会話のある家庭にすることだ。「早くせよ」「あれせよ、これせよ」は会話とは言わない。ときには膝に抱いて親の声で本を読んでやりたい。親が本を読む家庭では、子どもの言語能力の育ちが違ってくるとも言われている。昔の街角では、教科書を音読する子どもの声が聞こえていた。あれはとても大切だ。声に出して文章を読ませたい。

 ④「知りたい、見たい、やってみたい」という好奇心は、学問の扉を開く。そして、何かに熱中し集中する力が、学問をわがものにしていく。それは、どこで育つのか。遊び以外何ものでもない。仲間と身体を使って夢中に遊ぶ体験こそ宝だ。さらに人間は「経験の子」と言われる。一緒に体験することで脳は活性化すると言う。1歳半で脳は3倍にもなり、5歳になるともう死んでいく脳細胞もあるとか。ところが、人間はいろんな体験を重ねることで脳は活性化していく。毎日仕事で忙しいが、たまには子どもと野山を歩いたり、博物館へ出かけたり、畑でイモ掘りや野菜の収穫をしてみたい。キャッチボールで汗を流しもしたい。こうして、親も楽しみながら一緒にする体験が、脳を鍛えてくれるというのだ。好きなことがあり、夢中になれる子は育つのだ。

 次回は、ヒトを人にする文化の中で感性を育むこと、生きるすべ、段取り能力、生活をプロデュースする力を獲得すること、命を守り健康に生きる知恵をわがものにすること、家庭学習の習慣作り等について書きたい。

(とさ・いくこ 和歌山大学講師・大阪大学講師)

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