MOVIE KINGDOM Ⅱ

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ポイントは★~★★★★★★

キングの名画座 第3回 「ロッキー」

2007-04-11 23:45:36 | オールタイムベスト
監督 ジョン・G・アビルドセン
出演 シルベスター・スタローン
    タリア・シャイア
    カール・ウェザース



キングの名画座第3回はこれまた私が子供の頃見た作品。

シルベスター・スタローンと言う無名の俳優を一躍スターダムにのし上げた作品の続編が今春公開されます。
「ロッキー・ザ・ファイナル」というこの作品は還暦迎えたボクサーが無謀にもリングに上がり試合をしてしまう映画だそうですが、う~んこれは無理のある映画でしょう・・・ダメやろな~
と、思ったら前評判を聞くと意外と面白いらしい!
ホンマかいな?まだこれを書いてる現時点では公開されてないので真意はわかりませんが、いずれにしてもあの名作「ロッキー」を汚すような作品でないことを祈りたいもんです。

「ロッキー」という映画は良いらしい・・・そんな話はよく聞いてたけど、劇場に見に行こうとまでは当時は思わなかったけど、あのテーマ曲はやたら耳についてましたね。
兄が見てきて感動したような事を言ってたが、最後負けるんかいな~とオチまでも聞いて余計に見る気を無くしてしまった。
「負けるのに何で感動すんねんな~ 勝たな映画にならんがな」と当時何かとマイナス志向の若きキングは思ってました。

それから数年後に公開されたのが「ロッキー2」。
映画は見てないけどすでにあの「ロッキーのテーマ」のサントラのEP版を購入し、日々聞いていたものとしては是非見たいと思ってました(1作目はあれほど見る気無かったのにね)

今はもう跡形も無くなった「アベノ地下劇場」と言う元々は洋画のポルノ映画を専門で公開してた劇場へ鑑賞しに行きました。
お馴染みのロッキーのファンファーレとともに「ROCKY ?」タイトルが右側からスクロールされて行き、そして始まったのが1作目のクライマックス14ラウンドの場面。
アポロの強烈なパンチを食らいダウンしたロッキーが必死に立ち上がろうともがくシーンで鳥肌が立ちました。
前作見てないのに、しかも「ロッキー2」は今始まって1分も経ってないのに行き成りこのシーンに感動してしまった・・・前作公開時は「負けるのに何で感動すんねんな~」と言ってたけど、この冒頭のシーンで中学生になってたキングは、何故「ロッキー」という映画にみんな感動したのか・・・というのが判るような気がした。

ロッキー2に感動した後に思った事が前作を見て見たいと言う事でした。
でも当時はビデオソフト何てないしレンタルビデオもありません。
テレビ放映などは数年しなければ放映されなかった時代。
旧作を見るには二番館と言われる名画座で公開されるのを待つしかなかった。
しかし嬉しいことにロッキー2の大ヒットで「ロッキー2」と前作「ロッキー」を一気に2本立てで上映するという映画会社が企画した「 ロッキー大会」で1作目の「ロッキー」を見る機会を得ることになりました。

初めて見る1作目の「ロッキー」・・・やはりロッキーのファンファーレと共にROCKYのタイトルがスクロールされてくる・・・
画面全体から伝わってくる冷たい雰囲気がいかにも寂しげで「ロッキー2」と明らかに印象が異なります。
場末の会場で試合をするロッキー・・・そこには華やかなスポットライトなんかは当らない、勝者も敗者もそして観客さえもどこか寂し気で、これから始まる“負け犬” たちのドラマを感じさせます。
ヤクザの手先をしながら生計を立てるロッキー、そんな彼が密かに想いをよせるエイドリアン、そしてその兄のポーリー、トレーナーのミッキー・・・出てくる人物はどこか寂しい気でそして人生に置いてどこか負け犬的な雰囲気があり、それがどこか冷たい色調の寒い画面の雰囲気を出してるように思います。

ペットショップで働きどこか自分にも自信を持てなさそうなまま気がつけば歳を重ねてしまったエイドリアン。
映画の後半で注目を浴びたロッキーと彼と付き合う事でどこか輝き出した妹エイドリアンに嫉妬してしまい暴れだすポーリー。
寂れたジムでトレーナーをしているミッキー・・・
皆、今の現状にもがき、そして抜け出したいと願っている登場人物たちに観客はそれぞれの自分や人生に照らし合わせて見てるかも知れないですね。
後半、試合に向けて必死になるロッキーがまさに彼らの代弁者の如く存在なのかも知れません。

単にスポ根ものではないドラマ性を感じさせるのも、この映画を名作にしてる要因ではないかと思います。
印象的なシーンが色々あるんですが、街で不良たちとツルんでいたアバズレの少女を説教しながら家まで送り届けるシーンで、一生懸命少女の為に真っ当に生きるように説教し、その少女も神妙にロッキーの話を聞いてるんだが、彼女を家まで送り届けて帰えっていくロッキーの後ろから送って貰った少女が「くたばりやがれ!ロッキー!」と罵声を浴びせられる・・・その時のロッキーに実に寂しそうな表情を浮かべる・・・この映画の中でも印象的なシーンでした。

そしてこの映画での見せ場の一つがトレーニングのシーンですね。
ビル・コンティの名スコア「ロッキーのテーマ」に乗って街中を走るロッキー、片手で腕立て伏せするロッキー!最高に力の入る場面ですね。
それまでのヤクザな人生の落伍者のようなロッキーの物語が語られた後だけに見てるものは皆ここでロッキーを応援してしまうんでしょうね。

またロッキーが世界タイトルの挑戦が決まり、それまでロッキーからロッカーを取り上げロッキーを突き放していたトレーナーのミッキーがマネージャーを志願してくる場面も寂しい2人の男の友情を感じさせますね。
最初は落ちこぼれのロッキーを一旦は見放したのに世界戦が決まれば手のひらを返すようにマネージャーを志願してくるミッキーを罵倒し、家から追い出すロッキー。
寂しくトボトボ引き上げるミッキーの姿の寂しいそうな姿(バージェス・メレディスが実に名演ですね)・・・ロッキーの家を出て人気の無い道を肩を落として帰るミッキーだが、すぐロッキーの家の扉が開きロッキーが飛び出してくる。
ミッキーの後を追いかけて行き何やら話しをした後、握手をして別れるロッキーとミッキー・・・このシーンを引いたカメラで、固定されたフレームの中で描かれるのが実に2人の慎ましい友情を遠い視点で描くことで表現してるように感じますね。
実にいい場面だと思います。

試合前夜にプレッシャーに襲われるロッキーが「最終ラウンドのゴングがなってまだリングに立っている事が出来たなら、初めて証明出来る・・・ただのヤクザな男じゃない事を」と言うセリフがこの映画はボクシングの映画だけど、試合の勝ち負けではない重要な意味を教えてくれているように思います。
試合にはチャンピンのアポロに負けるけど、それまで人生に負け続けてたロッキーが初めて手にする人生の勝利り!その象徴が恋人エイドリアンの存在であり、彼に取って世界タイトル以上に大事なものを得た最高の勝利を胸に抱く見事な幕切れでこの映画は終わります。

そして「ロッキー2」へと話はつながるんですが、私は「ロッキー2」を先に見てるので、どちらが良かったかと言われるとどうしても最初に見た「ロッキー2」の方が印象としては強いんですが、「ロッキー」を先に見てたらやはり「ロッキー」が良いと言ってるんでしょうね~

このシリーズは5作(新作入れて6作ですね)製作されたけど、論外の「ロッキー5」は別として、「ロッキー3」「ロッキー4 炎の友情」はどれも面白いと思います。
でも印象としては「ロッキー2」以後の作品はサイドストーリー的な感じで、あくまでもドラマとして「ロッキー」「ロッキー2」で完結してるように感じるんですがね。
個人的にはこの2作で一本の作品として捉えています。

前作の冷たい雰囲気の画面と比べるとロッキー2は明るく感じます。
エイドリアンとの結婚 手にしたファイトマネーで家を購入し車を乗り回す。
やがてエイドリアンが妊娠し、まさに幸せな絶頂。
しかしボクサーを諦めたロッキーだが学力のなさから仕事が見つからない・・・見た目は派手な生活の中にも仕事に就けず苦悩する姿が描かれて行き、前半は生活感のある描写が続きます。

やかてチャンピオンのアポロから執拗な挑発を受け、やはりファイターの道に戻っていくロッキー。
そして復帰に反対のエイドリアンは心労のため倒れ早産してしまい昏睡状態に陥る。
ここまでの流れの人間ドラマは良く出来てると思います。
そして長い昏睡状態のエイドリアンを寝ずに看病するロッキーの深い愛情。
そして昏睡から覚めたエイドリアンにロッキーは「もう君が反対するならボクシングを諦める」と言った時エイドリアンは一言だけ「WIN!」(勝って!)と言う場面はこの作品の大きなハイライトであり、物語が一気にクライマックスに動き出す分岐点でもあります。ビルコンティの勇壮な曲とともに優しい笑顔でエイドリアンを見つめるロッキー・・・次のカットで片手で腕立て伏せするロッキーが朝焼けのシルエットで写し出される。鳥肌モノの編集ですね。

一作目はロッキー個人の戦いだったが今回はロッキーは自分だけでなく家族の為に戦うと言う意味合いに変化してく。
ボクシングを通してロッキーと言う人間の成長と成功のドラマとしてこの2作品は見れますね。

その後ロッキーはアポロとのリターンマッチに勝利ししがないヤクザな4回戦ボーイが見事に世界王者になり まさにアメリカンドリームを成し遂げる。
個人的にはここで終わっても良かったと思うが シリーズは後3作品続きます。(新作を入れたら6作)
しかし「ロッキー3」は後のロッキーがチャンピオンになりハングリー精神を失い大きな壁に打ち当たり苦悩する物語で、追う側から追われる側になり失ったスピリットを取り戻せるか?と言ったテーマで、順番から行けばごく自然の流れの物語だが、前2作よりはタッチが違うし、更に「ロッキー4」に至っては見方によればサイドストーリー的な物語で、しかも「フラッシュダンス」や「トップガン」のようにやたらとロック&ポップスの最新ナンバーがかかりまくる当時で言うところのMTV感覚の作品で第一作「ロッキー」の雰囲気と比べたらまったく違うシリーズのようでした。
両方とも映画としては面白いと思いますが、ドラマチックと言う点では1&2とは比べもんにはならないですね。
「ロッキー5」至っては・・・何で作ったのか今でも疑問だし、作品としてもガタ落ちですね。
やはりロッキーと言う人間のドラマは「1&2」で一応は完結してるなと思ってます。

そしていよいよ公開される「ロッキー・ザ・ファイナル」!作るべきでなかった駄作で終わるか、またはロッキーと言う映画の歴史を締め括るにふさわしい作品なのか?いずれにしても楽しみですね。
ま、原題が「ROCKY BALBOA」と言うロッキーの名前がタイトルになってます。
過去の作品見たいに数字の入らないタイトルなので、人間ロッキーを今一度掘り起こした人間ドラマ「ロッキー」を期待したいですな。



(1976年 アメリカ映画 119分 ビスタサイズ)