キノコ不作 考

今年の秋は、近年まれに見るキノコ不作の年だったという記録だけを残して、このまま終わりそうな気配だ。

わたし個人は、忙しい季節で身動きがとりづらいので（時間的にというより体力的に）、秋は大してキノコに恵まれなくとも構わないのだが、一般のキノコファンたちには、たまったものではないだろう。

それにしてもどうして、という気持ちはある。

とりあえず直近には秋雨の不発が考えられる。これだけ雨の少ない秋はちょっと記憶にない。が、それだけか、と言われればそうでもない気がするので、もうちょっと考えてみる。今年は夏も気候がおかしかった。ここ2年続いた猛暑がうって変わって、ちっとも暑くない夏。特に前半は雨がやたら多く、後半、天候が持ち直したかと思えば、今度は雨がちっとも降らなくなってしまった。

ここで去年・一昨年の猛暑もふくめ、菌類に大きなダメージを与えそうな条件を挙げるとすれば、それは「極端な気候」だと思う。たとえば去年の夏なんかは暑い上に、私の地方では夕立ちもゼロに近い状況だったので、かなり苛酷な環境だったと記憶している。
木材腐朽菌にしても菌根菌にしても、多くは数年にわたって活動しているのだから、環境が悪化すれば、翌年、翌翌年とダメージが長引いても不思議はない。最悪、他の菌類に駆逐され死滅してしまっているかもしれないのだし。もちろん暖冬の影響だって考えられる。

このあたりのことはいくつかの地方の気候とキノコの発生状況をかちあわせてみると、おおまかな結論が得られるかもしれない。

今年の7月、名古屋のＭ緑地でヒイロタケがむやみに目立ったのを覚えている。高温乾燥に強いキノコだ。他の場所ではそんなこともなかったから偶然だと思うけど、こういう目立つキノコを指標としてマークしておくのも面白いかもしれない。

他に考えられるのは、里山の荒廃に代表される森林での発生環境の悪化だけど、これは今始まった問題でもないし、地域的な問題でもあるから、全国的にキノコがこんな極端に減るってことは考えづらい。ただ、在来のキノコに対しては明らかにマイナス要因だと思う。
あとは、酸性雨とか大気汚染物質とかの影響くらいかな。このへんのことは全然分からないけど、これもそう急変するとは思えない。

やっぱり気候変動がド本命だ。それも温暖化とかじゃなくて、とにかく「不安定になったこと」これに尽きる。暑くなったら暑くなったで暑いのが好きなキノコが繁栄するはずだからね……ま、どっちにしても二年や三年で結論が出るとも思えないな。

……なんてことをつらつら考えているだけで、今年も暮れてしまいそうである。

あ、写真は去年のヤツね。ツチグリ地味過ぎ。