月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

モエギアミアシイグチを食べてみた

2013-10-24 21:58:26 | キノコ料理
モエギアミアシイグチ。黒ベースのボディに、緑色がかった足を持つ、その不気味な風貌にふさわしく、彼らは有毒キノコとして扱われている。しかも、イグチとしては異例ともいえる、神経系の毒キノコとして!

図鑑にはこのように……

『モエギアミアシイグチ 夏~秋、ブナ科樹下に発生。中~大型。〈中略〉……網目は手で触れると黒変し、古い個体では全体が黒い網目となる。幻覚性毒?』(『山渓フィールドブックスきのこ』より)

ちょっと待て。なんだその『幻覚性毒』ってのは。

実はよくわからんのか?はっきりしてないんだな?そんな不確実な情報で、今までモエギさんがどれだけの苦渋に耐えてきたと思っている!イグチで幻覚なんて聞いたことないぞ?ぬれ衣だったらどうするんだ、確かめもせず!それが真のキノコ学徒のやることか!?

と、思うともなく、実際にこれっぽっちも思っていなかった私であったが……

見つけてしまったのだ。モエギアミアシイグチの大群生を!

これは長年の間、不確実な情報のまま幻覚キノコのレッテルを貼られていたモエギアミアシイグチの、汚名を晴らせ、真相を明らかにせよ、という神の啓示であろうか。

ということで、モエギアミアシイグチを食べてみた。


調べてみて驚いたのだが、このモエギアミアシイグチというのは、中毒症例がまだ一件もない。それでどうして毒キノコ、しかも幻覚性キノコ扱いされているのか。『日本の毒きのこ』(学研)には、『ニューギニアの原住民であるクマ族が儀式に使用して狂乱状態になる』と記されている。

なるほどなー。

ただ、成分分析では幻覚性毒成分は確認されておらず、したがって規制対象でもない。疑いだけが残ってしまっているかたちだ。

ちなみにイグチで幻覚を起こすものはきわめて珍しく、手元にある資料では海外に分布するBoletus manicusの一種のみで、他には見当たらない。しかも、これにしたってモエギアミアシイグチとは属するグループが違う。

やはりどう考えても、神経毒をもつことはありえない。成分分析に裏付けられているのだから、恐れる理由はないはずだ。消化器系の毒で下痢や嘔吐を起こすことはあるかもしれないけどね……

ん、まあ考えてたって始まらんな。実証あるのみ、っと。

次回へ続く≫


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