春山に
おき火の如し赤茸(あかなば)の
花に負けじともゆる思いは
《春の林にベニヤマタケを見つけた。その赤さは、炎をあげぬまま煌々と燃える炭のおき火のように、同じ季節に咲き誇る花たちに負けないほどの気持ちをあらわにしているものであろう。》
ベニヤマタケは鮮やかな色のものが多いアカヤマタケ属の仲間。
春から秋まで、わりと季節を選ばず発生するキノコだが、ことに九州や山口県において、春、野焼きの跡地に生えてくるものが「あかなば」と呼ばれ、古くから食卓にも饗されたようだ。
特段に美味しいというわけでもないが、長い冬を耐えた者だけがわかる喜びを味わうといった意味で、山辺に暮らすものにささやかとは言え特別な幸せを感じさせるものであったことだろう。
火のような鮮やかな赤さを食することで、我が身のうちの命の火を新たにした、そんな思いを抱かせるキノコだったかもしれない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます