2012年2月27日は、僕の研究するアメリカのノーベル賞作家で1902年2月27日にカリフォルニア州サリーナスに生まれたJohn Steinbeckの生誕110周年の記念日となります。
以前のブログで書いたように(読書案内:ジョン・スタインベック(John Steinbeck) 『怒りのぶどう』
参照)、私の大学院の修士論文のテーマがこのJohn SteinbeckのThe Grapes of Wrath(『怒りのぶどう』)でしたので、僕の研究者としての原点はSteinbeck研究であると言えます。
その研究のきっかけになったのが、大学3年生の時、カリフォルニア州サンノゼでの短期語学研修参加。
ホストファミリーとしてホームステイさせていただいたバロウズ一家は、僕をいろいろなところに連れていってくださったのですが、そのうちの1ヶ所が、スタインベックが愛して作品にも何度も描いたモンテレー。
その町で、スタインベックについて話を聞き、スタインベックの胸像と共に写真を撮ってもらいました。
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(March 16, 1988)
その時は、もちろん、自分が今のようにスタインベック研究者になるなどとは思ってもいませんでした。
それまでにスタインベックの作品はThe Pearl(『真珠』)を所属していたESS(English Speaking Society=英語会)のブックレビュー(本を読んでその書について語り合う)の活動で読んでいただけでしたので、ああ、これがあの時読んだ作品の作者の像なのかと思ったくらいだと思います。
ちなみにホストファミリーのバロウズ夫妻については、
このブログ内の記事8月7日(土)、Host Family Reunion、第146回新見英語サロン(新見市国際交流協会第6回英語講座)開催、Niimi English Salon #146 (NIEA's English Lesson #6)、公式ブログ内のKurt Vonnegut, Jr.についてなどをご覧ください。
それが、24年後に一応「スタインベック研究者」という看板を掲げられるようになっている訳ですので、人生の出会いというのは本当にどこにあるのかわかりませんね。
ちなみにこれが2010年8月のスタインベック・フェスティバルに参加したときに再び胸像と共に撮ってもらった写真です。
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(August 5, 2010)
今日は、ジョン・スタインベックの生誕110周年記念に、僕のThe Grapes of Wrath(『怒りのぶどう』)の蔵書を紹介したいと思います。
まずは、これ。
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これが大学院時代に修士論文を書くために注釈書を参照しながら熟読した時の本です。
(右が原書、左が注釈書です。注釈者は日本ジョン・スタインベック協会初代会長の橋口保夫先生と開田耕一先生です。この注釈は、学生時代まだ知識も英語力も乏しかった私にとってとても参考になるものでした。橋口先生は日本ジョン・スタインベック協会の学会、懇親会には毎回ご出席されますので、今でもとてもお世話になっております。)
この本は、原書に注釈書が付いたものでしたので、勉強のためにはとてもよかったのですが、ひとつ問題がありました。
それは、スタインベックが出版した時の原著とページ建てが違うので、例えば論文中に引用する場合、多くの研究者が使っている原著とページ数が違ってきてしまうのです。
ということで、購入したのがこの版です。
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これは、原著(619ページ)にこの作品についての主要論文がつけられていて全881ページもある分厚い本です。
ちなみにこの版の購入の際も、先ほどのバロウズ夫妻にお世話になりました。
当時は、現在のようにインターネットの書籍注文などできませんでしたので、外国の書籍を買う時には今のように手軽ではありませんでした。
カリフォルニアのバロウズ夫妻に手紙を書き、この本をアメリカで購入してもらい送ってもらいました。
この『怒りのぶどう』は何度も翻訳がされています。
僕たちが外国文学を研究する際、先達の翻訳は大いに参考になります。
僕が、学生時代に古本屋で集めた『怒りの葡萄(ぶどう)』の翻訳です。
集英社『世界文学全集』の野崎孝訳(学生時代にはこの翻訳を主に参考にさせてもらいました。)
新潮文庫の大久保康雄訳(文庫本なので手軽で便利です。)
河出書房の『世界文学全集』の石一郎訳
講談社『世界文学全集』の谷口陸男訳
これら上記2冊も必要に応じ参照しながら作品を読み進めてゆきました。
ただ、現在は最新版の翻訳は、大阪教育図書から出版されている『スタインベック全集』第6巻の中山喜代市先生によるものです。
これが僕の学生時代にあったらよかったのになあと思います。中山先生にも僕は公私ともにお世話になっております。
一つの作品でも原書、翻訳書を合わせてこのように多くの本を持っているのです。なぜ、僕の研究室や自宅が本に溢れているのか、容易に推測できそうですね。
ところで皆さん、1939年に出版されたThe Grapes of Wrath(『怒りのぶどう』)を日本で初めて翻訳した人は誰だと思いますか?
それは、新居格(にい・いたる)氏です。
新居格氏はパール・バックの『大地』の翻訳者としても有名ですが、スタインベックの『怒りの葡萄』もアメリカで原書が出版された同じ1939年に前半の翻訳を、翌1940年に後半の翻訳を出版されているのです。
翌1941年に日本がアメリカとの戦争に突入する時代であることを考えれば、このことは特筆に値することでしょう。
残念ながら新居格氏訳は、僕はまだ所有しておりません。
さて、この『怒りの葡萄』の最初の翻訳者、新居格氏と僕が勤務する新見公立大学・短期大学には関連がありますが、それはどんな関連でしょうか?
新見公立大学・短期大学の学長は現在、難波正義先生ですが、前学長は新居志郎先生とおっしゃいます。
(新居先生は、今でも卒業式などの式典によくいらしてくださいます。)
何と、新居格氏は新居志郎前学長の伯父様に当たる人物なのです。
新居先生が新居格氏の甥に当たられるということは、お聞きしていましたので、学長在職時にこのことをお話申し上げたら、先生は非常に喜ばれ、日本ジョン・スタインベック協会にも入会していただきました。
そして、2010年の年次大会にご出席いただき、僕が主宰するシンポジウムも聞いてくださいまいした。
(第35回日本スタインベック学会でシンポジウムを担当参照)
話があちこちに展開し、長い記事となりました。
この辺で終えたいと思いますが、最初に戻って、今日はJohn Steinbeckの誕生日をお祝いしたいと思います。
(ちなみに昨年のスタインベックの誕生日の記事です。→Happy Birthday, John!)
以前のブログで書いたように(読書案内:ジョン・スタインベック(John Steinbeck) 『怒りのぶどう』
参照)、私の大学院の修士論文のテーマがこのJohn SteinbeckのThe Grapes of Wrath(『怒りのぶどう』)でしたので、僕の研究者としての原点はSteinbeck研究であると言えます。
その研究のきっかけになったのが、大学3年生の時、カリフォルニア州サンノゼでの短期語学研修参加。
ホストファミリーとしてホームステイさせていただいたバロウズ一家は、僕をいろいろなところに連れていってくださったのですが、そのうちの1ヶ所が、スタインベックが愛して作品にも何度も描いたモンテレー。
その町で、スタインベックについて話を聞き、スタインベックの胸像と共に写真を撮ってもらいました。
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(March 16, 1988)
その時は、もちろん、自分が今のようにスタインベック研究者になるなどとは思ってもいませんでした。
それまでにスタインベックの作品はThe Pearl(『真珠』)を所属していたESS(English Speaking Society=英語会)のブックレビュー(本を読んでその書について語り合う)の活動で読んでいただけでしたので、ああ、これがあの時読んだ作品の作者の像なのかと思ったくらいだと思います。
ちなみにホストファミリーのバロウズ夫妻については、
このブログ内の記事8月7日(土)、Host Family Reunion、第146回新見英語サロン(新見市国際交流協会第6回英語講座)開催、Niimi English Salon #146 (NIEA's English Lesson #6)、公式ブログ内のKurt Vonnegut, Jr.についてなどをご覧ください。
それが、24年後に一応「スタインベック研究者」という看板を掲げられるようになっている訳ですので、人生の出会いというのは本当にどこにあるのかわかりませんね。
ちなみにこれが2010年8月のスタインベック・フェスティバルに参加したときに再び胸像と共に撮ってもらった写真です。
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(August 5, 2010)
今日は、ジョン・スタインベックの生誕110周年記念に、僕のThe Grapes of Wrath(『怒りのぶどう』)の蔵書を紹介したいと思います。
まずは、これ。
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これが大学院時代に修士論文を書くために注釈書を参照しながら熟読した時の本です。
(右が原書、左が注釈書です。注釈者は日本ジョン・スタインベック協会初代会長の橋口保夫先生と開田耕一先生です。この注釈は、学生時代まだ知識も英語力も乏しかった私にとってとても参考になるものでした。橋口先生は日本ジョン・スタインベック協会の学会、懇親会には毎回ご出席されますので、今でもとてもお世話になっております。)
この本は、原書に注釈書が付いたものでしたので、勉強のためにはとてもよかったのですが、ひとつ問題がありました。
それは、スタインベックが出版した時の原著とページ建てが違うので、例えば論文中に引用する場合、多くの研究者が使っている原著とページ数が違ってきてしまうのです。
ということで、購入したのがこの版です。
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これは、原著(619ページ)にこの作品についての主要論文がつけられていて全881ページもある分厚い本です。
ちなみにこの版の購入の際も、先ほどのバロウズ夫妻にお世話になりました。
当時は、現在のようにインターネットの書籍注文などできませんでしたので、外国の書籍を買う時には今のように手軽ではありませんでした。
カリフォルニアのバロウズ夫妻に手紙を書き、この本をアメリカで購入してもらい送ってもらいました。
この『怒りのぶどう』は何度も翻訳がされています。
僕たちが外国文学を研究する際、先達の翻訳は大いに参考になります。
僕が、学生時代に古本屋で集めた『怒りの葡萄(ぶどう)』の翻訳です。
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これら上記2冊も必要に応じ参照しながら作品を読み進めてゆきました。
ただ、現在は最新版の翻訳は、大阪教育図書から出版されている『スタインベック全集』第6巻の中山喜代市先生によるものです。
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一つの作品でも原書、翻訳書を合わせてこのように多くの本を持っているのです。なぜ、僕の研究室や自宅が本に溢れているのか、容易に推測できそうですね。
ところで皆さん、1939年に出版されたThe Grapes of Wrath(『怒りのぶどう』)を日本で初めて翻訳した人は誰だと思いますか?
それは、新居格(にい・いたる)氏です。
新居格氏はパール・バックの『大地』の翻訳者としても有名ですが、スタインベックの『怒りの葡萄』もアメリカで原書が出版された同じ1939年に前半の翻訳を、翌1940年に後半の翻訳を出版されているのです。
翌1941年に日本がアメリカとの戦争に突入する時代であることを考えれば、このことは特筆に値することでしょう。
残念ながら新居格氏訳は、僕はまだ所有しておりません。
さて、この『怒りの葡萄』の最初の翻訳者、新居格氏と僕が勤務する新見公立大学・短期大学には関連がありますが、それはどんな関連でしょうか?
新見公立大学・短期大学の学長は現在、難波正義先生ですが、前学長は新居志郎先生とおっしゃいます。
(新居先生は、今でも卒業式などの式典によくいらしてくださいます。)
何と、新居格氏は新居志郎前学長の伯父様に当たる人物なのです。
新居先生が新居格氏の甥に当たられるということは、お聞きしていましたので、学長在職時にこのことをお話申し上げたら、先生は非常に喜ばれ、日本ジョン・スタインベック協会にも入会していただきました。
そして、2010年の年次大会にご出席いただき、僕が主宰するシンポジウムも聞いてくださいまいした。
(第35回日本スタインベック学会でシンポジウムを担当参照)
話があちこちに展開し、長い記事となりました。
この辺で終えたいと思いますが、最初に戻って、今日はJohn Steinbeckの誕生日をお祝いしたいと思います。
(ちなみに昨年のスタインベックの誕生日の記事です。→Happy Birthday, John!)