梅田から歩き、繁昌亭の前に辿り着いて出演者を見ると
「染丸」でなく「染二」になっている。
染丸目当てに前売券買ったのに。
染二は好きでないから帰ろうか、とも思ったが、
染左は久し振りだし花丸は嫌いでないから
まあ仕方ないか、と思って中に入った。
「平林」(染吉):△
軽く染丸の休演に触れる。
夏風邪らしい。
ネタは、丁稚も旦那も明るく演じられており、好感が持てる。
教える側の後の二人は、手紙を見せられた時の反応などから、
「難しい字が読めない」人間であり、
「平林」の文字列から自分の知っている字を見出し、
「一八十木木」なり「一つと八つと十木木」なりと言っているのかも、と感じた。
イチビっている訳ではなく。
テキストとしては、丁稚が元々「平林さんを知っている」台詞回しには違和感がある。
サゲで平林さんが定吉に声を掛けて、
「平林(ひらばやし)さん、貴方には用はありません」に
つなげるための設定だと思うのだが、
それならば最初から字を読むに及ばず
本町の「ひらばやし」さんだ、と分かっていると思うのだがなあ。
「やかん」(染左):○-
この人を見るのは久し振り。
以前はあまり気にならなかったのだが、
語尾を押す口調が少し気になった。
ネタは丁寧に演っている。
隠居の突っ込み方やそれを受けて男の言い方の強弱、
会話の間の取り方など、全体によく考えて作られている。
若干、それが見え過ぎるきらいはあるし、
登場人物の描写が薄くコント的にも見えるが。
「やかん」の言い立て、講釈風の語り方も楽しそうで良かった。
「電話の散財」(花丸):△+
営業の話など。
「話し中」と言うと混線が収まる、の例として
映画「王将」の例を出すのは良いと思う。
具体的だし、「そこまで昔の話ではないんだな」という印象が持てた。
ネタは、以前にも聞いたことがあるが、
安心して楽しく聞けるもの。
親旦那開口一番の「番頭どん」の柔らかさが
それまでの若旦那の堅さと好対照になっており楽しい。
若旦那が堅い理由として「選挙」が中心に出てくるのはあまり好きにはなれないなあ。
何か目的があって堅いのではなく、
柔らかい親旦那を反面教師として堅くなっている、という方が
根本的に融通が利かない印象がして好みなのかも知れない。
同様に親旦那が「昔は堅かった」という話をする必要もないのでは、と思った。
散財の場面はごく普通に。
親旦那もお茶屋も、もう少し浮かれた雰囲気があった方が
最後の若旦那との対比が効いて良いと思う。
「質屋芝居」(染二):△
マクラで芝居の話など。
この人、声が大きいのは良いが、活舌が悪く、
目を剥いたりするなど表情付けがクサく不自然なのが好みでない。
クサく演ればウケるだろう、爆笑を取れるだろう、という
安直な姿勢が身に付いてしまっているように感じる。
芝居の真似をする部分も不自然な印象が拭えない。
表情付けや声の出し方など、単に気違いじみているだけ。
芝居好きな人が溢れ出る思いに任せて芝居の真似をしているのではなく、
自己顕示欲から真似して見せつけているように見える。
それが演者の心根であり、落語に反映されてしまっている、
ということかも知れない。
質屋にやってくる客の喋りも流れており、
自然な人間の会話には聞こえなかった。
好きなネタであるので余計に、他の人で聞きたかった。
11時15分頃終演。
1時間少しの、コンパクトな落語会だった。