カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

寝るのが怖くなる   スリープ

2025-02-12 | 映画

スリープ/ユ・ジェソン監督

 ある夜、隣で寝ていた夫が突然起き上がり「誰か入ってきた」とつぶやき、また寝てしまう。寝ぼけているのかと思うが、奥の部屋から物音がする。見に行くとドアが開いていて風が吹いていたり、飼っている犬が居たりする。不審な感じはするが、はっきりしない。しかしその夜から、夫は寝た後に奇行を繰り返す夢遊病患者となっていく。病院で治療を受けるが、なかなかうまく行っていないように感じられる。ある日母親が祈祷師を連れて家にやって来て、夫は何かにとりつかれているという。にわかには信じがたいが、下の階の人からは、夜中にうるさいと苦情を言われていたこともあり、気になっていたのだが、何かそういう事との関係も、不安定ながら確かにそうなのか納得することになっていくのだった。
 日本にも似たようなホラーがあったように思うが、住んでいる部屋と、夫婦の愛と、得体のしれない何かとの戦いとなっていく展開は、なかなかに韓国らしく暴力的で、恐ろしい。逃げそうになりながら、逃げずに対峙し、暴力で何かを成し遂げようとする。もちろん、それには激しい心理戦もある。相手の心を動かすのは、相手を傷つける暴力なのだ。
 やっぱりそんな凄まじい話になるんだな、と半ばあきれる気持ちにもなるが、彼らの基本思想は、やられたらちゃんとやり返すことを忘れないことだ。やられっぱなしでは、物事は済ませられないのだ。その犠牲になるものや動物には気の毒な気がするのだが、問題は人間なので、人間の心理がどのように傷つくのか、ということの方に重点が置かれている。きわめてキリスト教的な感じもする、人間中心主義なのだ。同じアジアと言えど、そこらあたりが一番理解しがたい溝だということも、この映画を観ていても感じられる。そこがエンターティナーとして、ハリウッドものにも通じる世界基準がある訳で、韓国映画が日本よりも娯楽性が強く楽しめるゆえんでもある。ガツンと来る凄まじさが、映画を観たという満腹感につながるのかもしれない。
 さらに韓国映画というのは、俳優の演技も一枚上手である。日頃の穏やかさと、人間の内なる狂気が、見事に混在している。これが他のあの映画のあの人と同じなのか、と驚かされる。と当時に、例えば夫役のイ・ソンギュンは自殺したので今はもういないことに、寂しさを覚える。こんな映画にも出ていたんだな。彼らの激しい役者人生を思う訳である。
 物語としてはシンプルな展開なのだが、こんなことがあってこんなことをするのか、という驚きはそれなりにインパクトがある。そんなことは信じない、という人がいても、こうなってしまうのだから怖いのである。

 教訓:隣人とは、仲良く致しましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする