カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

正義は極悪逃走犯の方   正体

2025-02-15 | ドラマ

正体/中田秀夫監督

 4話からなる連作ドラマ。殺人の容疑で死刑判決を受けている男がいる。移送中サービスエリアのトイレから逃走して行方をくらましてしまう。身元の分からないものが集まって働いている工事現場に身を置いて、労務環境が悪い。そこで事故でケガをした年配者がいて、会社に掛け合うことで、いくらかの資金を巻き上げる。法律の勉強をしていて、工事現場の他の仲間とは、ちょっと異質な存在なのである。しかしながらひょんなことで身元がバレてしまって、また逃走する。
 次の逃走先では、ネットのライターの仕事をしている。ネットカフェなどを転々として生活しているらしいのだが、その仕事先の編集者の女性の家が一軒家で、そこに居候させてもらうことになる。男は手調理をつくって、毎日女を待っている生活になる。そんな時、たまたま電車に身投げしようとしている弁護士を助ける。弁護士は痴漢と間違われ、パニックになって逃げた映像がネットで拡散され、仕事を失い家族(娘もいる)も窮地に陥り、死のうとしていた。この冤罪を晴らすため、ネットで記事を紹介してその窮地を救う。一方、女性編集者は、過去に付き合っていた不倫相手がいて、ある日その男が訪ねてきて、家にいる男が逃走犯ではないかと気づく。それで追手の警察が来て、また逃走となる。
 次はパン工場で働きながら、新興宗教のボランティアをする青年になっている。目を一重にして変装している。実は事件とかかわりのある女性の妹がパン工場で働いており、新興宗教に勧誘されていた。この宗教は、会員の情報を闇バイトに売っているという悪徳なものだったが、その情報を集めて、会員の詐欺を防ごうとしていたのだった。だが、やはり逃走犯と似ているとの情報で、逃げてしまう。
 そうして最後には、事件の殺人現場にいた女性が入所している介護施設で働くようになる。彼女は若年性の認知症があり、事件のことは憶えているものの、犯人の目撃証言には検察の指示通り発言した経緯があり、唯一真相を知る人間ともいえた。逃走する男は、自分の無実を証言する切り札として、真実の証言を録音し、自分の再審の材料にしようと考えていたのだったが……。
 いわゆるジャン・バルジャン物語ともいえるストーリー展開だ。逃走犯は冤罪で死刑判決を受け、その不条理と戦いながら、なんとか法律を学び直して無罪を勝ち取ろうと策を練っている。ところが執拗に執念を燃やして追ってくる警察の人々がいる。殺人犯を野放しにしている、自分たちのメンツが許せないのだ。極悪非道なのは警察などの組織であり、善良なのは弱い個人の逃走犯だ。そんな戦いの中、見ているものは真実を知っているので、なんとか救いの道が無いか、気をもんでみることになる。よく出来ている展開ともいえるし、ある程度はご都合主義でもある。冤罪の恐怖が縦横に語られているのである。
 ドラマとしての尺もあるが、それでもいわゆるコンパクトに収まっている連作ものである。いろんな顔を見せる逃走犯の状況を、手に汗握って応援するドラマなのである。
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