5月8日正午。ナタリアさんとホテルロビーにて待ち合わせ。
いよいよヴォロネジ本番。夢の子供たちと会える時がきた。
ナタリアさんは『ヴァルシェブニキ』の音楽監督ヴィタリーさんの
奥さんであり、元歌手。楽曲の歌詞を手がける作詞家でもあるが、
本業はインテリア雑誌のディレクターだ。
彼女とヴォロネジ大学の学生さんの案内で、市内観光へ。
…って、こんなことまでしてもらっていいのだろうか??
14時になったところで、学生さんは大学に帰っていき、
ナタリアさんの車で録音スタジオ「ブラックボックス」へ。
廃屋のような建物の奥に、薄明かりのともるスタジオ。
そこではヴィタリーさんとサウンドエンジニアのイーゴリさんが、
女子組トップのオクサーナ・ヴォイトヴィチの新曲『ドルフィン』
のレコーディング中。レコーディングといってもCDを出すわけではなく、
あしたのコンサート用。ロシアのステージは口パクが基本なのだ。
ガラス越しに見えるオクサーナは、想像していた以上にオトナ!
「ハハハハ~♪」と何度も自分で歌ってみせるヴィタリーさん。
それにくらいついていくオクサーナは、まだ12歳。
ワンフレーズ録音してはモニターで何度も確認。
「いいビブラートだ!」とようやくOKが出て、録音終了。
スタジオをあとにして、車でヴォロネジ鉄道駅前へ移動し、
ヴィタリーさんの幼馴染みが経営するレストラン「ヴォヤージュ」へ。
着いてびっくり!2階のVIPルームに通される。
ここでナタリアさんは息子マクシムくんの保育園お迎えのため、
一時中座。その間にヴィタリーさんにインタビューをしつつ、
ボルシチ、サラダ、川魚の料理などをごちそうになる。
またまたこんなによくしてもらっていいのだろうか!?
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美味~!
18時すぎ。ヴィタリーさんの車で「青少年会館」到着。
この場所はすでにネットで何度も見たことがある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/57/04/da334b94b095fed4c6d4c0c074441b4d_s.jpg)
ここぞ『ヴァルシェブニキ』の本拠、
直訳すると「子供と青年の宮殿」である。
船の形を模した3階建ての建物内には、広い吹き抜けホールに面して
いくつもの部屋がある。クラシックからロシア民謡まで、
さまざまなジャンルの青少年音楽グループが、各部屋を使用。
そのうちの何部屋かが『ヴァルシェブニキ』の専用であり、
4歳から15歳まで、300人の子供たちが、
ヴォーカルや振付けを担当する11人の教師に学ぶ。
そこに登場したのは『ヴァルシェブニキ』の十数人の精鋭たち。
真っ赤なトレーナーを着て、ひときわ目をひくのは、
トップソリストのヴラッド・クルツキフくん。これはもう、
赤い服のせいとかじゃなく、生まれもったオーラのせいだ。
でも、写真や映像で見ていたより、はるかに幼くてちっちゃい!
そして、ボリショイ・ザル(大ホール)でリハーサルが始まる。
ホール後方の席からヴィタリーさんが指示を出す。
一列目は誰と誰、二列目は誰と誰……。
そうか。コンサートによってフォーメーションが違うのか。
慣れないポジションに立った子は、振付けもおぼつかない。
容赦なくヴィタリーさんからダメ出しが飛ぶ。
ヴィタリーさんは普段は物腰柔らかだけど、このときは別人。
でもひるまず、「ヴィタリー・イワノビッチ!」と
意見を出す子もいて、共にステージをつくっている感覚である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/0f/938c5ccc7a5f2cfd6b92e8075d26892f.jpg)
このもようについては、Kくんのもうトマラナイ発狂寸前レポート
『中庭への道』をご覧いただくとして……。
ここで書いておきたいのは、
客席でじっと見守っていた子供たちのパパやママの存在だ。
いわゆる「ステージママ」とはちょっと違う。
「保護者」としてそこにいるのがごく自然で当然な感がある。
後日、この「参観する父兄」の写真をロシア女性Sさんに見せたところ
「あたりまえでしょ!」と言われた。
「これは夜でしょ?子供には送り迎えが必要でしょ?
どうして日本では子供を夜ひとりで歩かせるの?信じられないわ!」
確かにこの日、リハーサルが終わったのは午後9時すぎ。
両親がタンボフという町に引っ越して、ヴォロネジ市内の親戚の家に
帰るというジェニスくんは、お迎えがないので
ヴィタリーさんがわざわざ車に乗せて送り届けていったっけ。
子供をちゃんと子供扱いして、大人たちで守る国。
ロシアの健全さにまたひとつ触れた。