瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

2018年、クリスマスには歌を歌おう♪その1

2018年12月21日 22時22分42秒 | クリスマス
12月の魔法は町を御伽の国に変える。
煌めく色とりどりのイルミネーションと、ハッピーなクリスマスソングに誘われて、今年も舞い戻ったわ!
私の名前はミス・メリー、クリスマスに纏わるアレコレならお任せ♪
初めましての方は、この機会に名前を覚えてねv
今年初めに予告した通り、今回のテーマは「日本の少女漫画に登場するクリスマスエピソード」よ!
第一夜目は少女漫画界の哲学者、カーラ教授こと川原泉女史著作として、別冊花とゆめ1985年夏の号に発表された、『不思議なマリナー』を紹介するわ♪

現在高校2年生のヒロイン、白河綾乃さんには、長らく尽きぬ悩みが有ったの。
彼女の御父様は某製薬会社の重役で、御母様は著名なインテリアデザイナーで、30歳とやや年の離れた御兄様は某大学の助教授で、25歳の御姉様は新進気鋭のクラシックピアニストで、おまけに通ってる学校は選ばれし良家の御嬢様のみ入学が許される聖ミカエル学園で、当然彼女の御学友はみ~んなお育ちの良い御嬢様達…え?何処に悩む要素が有るのかって?
だって綾乃さん本人は、名前以外、至って凡人レベル。
頭も顔も性格も地味の極致ときてるのに、無駄に豪華絢爛な環境に棲息してるせいで、周囲から浮きまくってたの。
恵まれ過ぎる環境というのも、当人と周囲とで釣り合いが取れなきゃ、孤独の要因になるものよ
そんな綾乃さん唯一の趣味は、孤独なゲームの最高峰に位置付けられる「釣り」――フィッシング!
しかもこの道11年のキャリア、綾乃さんったら寧ろ孤独を積極的に受け入れ、悟りに昇華させるスタイル?
そんな逞しい所が如何にも川原泉チックヒロインで、メリー好ましく思っちゃうわ。

さて、と或る冬休み前の休日早朝、綾乃さんは絶好の釣り場を発見。
そこは彼女の言葉を借りるなら、潮通しの良いブッツケの潮表で、10年に一度の大穴場ポイントだった。
早速綾乃さんが釣糸を垂れ、アイナメを釣り上げた瞬間、見知らぬ若い男から声をかけられたの。
綾乃さんが発見したポイントは、この男性の隠し穴場だったらしいわ。
彼はアイナメ6尾と磯の王者イシダイを2尾釣り上げるや、携えてた包丁で忽ちの内に捌き、大皿2枚分の刺身盛合せを拵えると、気前良く綾乃さんにも御馳走してくれた。
突然現れ、11年のキャリアを持つ主人公の腕前をあっさり上回るなんて…少年漫画なら人生賭けた永遠バトルの始まりを予感してしまうわ。
でもこの作品はれっきとした(?)少女漫画だから、始まるのは恋のロマンス、とは言っても一般的少女像から食み出てる綾乃さんの中で、この時の男はまだ流離いの包丁人だった。

縁は奇なもの、その後も謎の釣り人兼包丁人と、度々顔を合わせるようになった綾乃さん。
互いに名乗って、休日は一緒に釣りを楽しむまで仲良くなったの。
30歳と言う年の割りに童顔な彼の名は「加納真之」、海上保安庁にお勤めでいらっしゃるんですって。
謎のマリナーの正体は超エリートだったのね!

更に縁は重なるもの、加納さんは御兄様が高校に通ってた頃の同級生で、当時は家にも遊びに来てたらしいの。
綾乃さんも実は会った事有るそうなんだけど、当時2、3歳位の年齢じゃ覚えてやしないわね。
その事実が知れたのは、綾乃さんが自宅で御兄様&御姉様と優雅なティータイムを過ごしていらっしゃった時。
御兄様と加納さんは高校3年間ずっと同級だったんですって、でも最初はあまり仲がおよろしくなかったそうなの。
何故なら、加納さんってば一見地味なのに、スポーツに勉強、何をやらせても御兄様を僅かの差で凌ぎ、渋~く勝ち続けたもんだから、それまで敗北経験無かった御兄様からすれば、目の上の瘤だったのね。

ところが或る日、御兄様がお弁当を忘れて途方に暮れていたら、加納さんが自分のお弁当を分けてくれたんですって。
その時驚いたのが彼のお弁当の中身で、朱塗りの二段重箱の一ノ重には御飯がぎっちり、二ノ重には魚をメインにした色とりどりのおかずが詰められており、加納さんが言うには今朝釣った魚を捌いて作ったんですって。
漫画とは言え超人が過ぎるわよ加納さん!こんな人メリーもお会いしたいわ!
話を戻して…お弁当の件以来、加納さんと御兄様は親友になり、卒業するまで親交が続いたそうなのだけど、加納さんが海上保安大学に受かって以降は付き合いがパッタリ途絶えてしまったんだとか。
きっと仕事が忙しいせいだろうと語る御兄様の瞳は寂し気だった。

綾乃さんは、次に加納さんと釣り場で会った時、御兄様が「転勤でこっちに戻ったのなら、また家へ遊びに来て欲しがってた」って伝えたの。
加納さんは、綾乃さんが高校時代の親友の妹だった偶然を知って驚くと同時に、「優美さんもそう言ったんですか?」とおかしな事を訊いて来た。
――「優美さん」?…何故、御姉様の名前が出て来るの?
――御姉様と加納さんの間にも、昔何か有ったのかしら?
ふと胸を過る不安、そのせいでこの日の綾乃さんの釣果は丸坊主という有り様。
一方の加納さんはウミタナゴ7尾…この日も優しい加納さんのお陰で、贅沢な磯料理を頂いた綾乃さんの一抹の不安は、当日の内に霧散したの。

寒さが一段と極まるクリスマス前の休日、すっかり加納さんに打ち解けた綾乃さんは、彼が釣りの時に何時も傍らに置いてるノートの存在に気付くと、こっそり開いて見てしまった。
いけないわ綾乃さん!御嬢様が持ち主の承諾無くノートを覗くだなんて!
でも加納さんのスーパー釣りテクを密かに羨んでた綾乃さんは、「恐らくノートに神技の秘密が書いてある筈!!」と考えたようなの。
師匠の技は積極的に盗めって言うものね♪
ところがノートに書いてあったのは意外にも釣り関係ではなく短歌、五七五七七の五句を形式とする和歌だった!
実は加納さんは釣りだけでなく短歌も嗜んでいたの、でもそっちの趣味の方は雑誌に投稿するもボツ続きな事も有り、誰にも内緒でいたんですって。
恥じらってノートを隠そうとする加納さん、そんな彼を綾乃さんは多芸多才だと素直に称賛した。
綾乃さんの言葉を受けた加納さんは、思わず涙をホロリと溢す程に感動。
初めて他人に認めて貰えた嬉しさに、「歌の道を捨てなくて良かった…!」と、自信を取り戻したのね。
加納さんにとっての綾乃さんが、釣り仲間から特別な人へ変わった切っ掛けかしら?
加納さんは綾乃さんに、クリスマスの日、釣りへ行こうと誘ったの。
誘われた綾乃さんは大喜び、だって毎年クリスマスは孤独に過ごすのが恒例になってたから。
ハイソな御学友達はクリスマスをヨーロッパで過ごすのが通例だったし、綾乃さんを除く家族はパーティーに呼ばれて居ないのがデフォルト。
綾乃さんにとってのクリスマスは、仏教徒な事を言い訳に、家で引篭もるだけの日だったの…今までは。(実は綾乃さんを含む家族全員が仏教徒らしいけどw)
でも今年のクリスマスは一味違う!有難う神様!

待ちに待ってた12月24日のクリスマス・イブ、家族が余所行きの格好で出掛けるや、綾乃さんは釣り道具を持って、意気揚々と約束の場所へ向かった。
早く来ないかなーと心浮き浮き…ところが来ない…何時まで待っても加納さんは来ない…
日が暮れかかる頃、港で待ちぼうけを食ってる綾乃さんの目の前に、綺麗に着飾った御姉様と、制服姿の加納さんが現れた。
親し気な様子で語らう二人を見た綾乃さんは大ショック!!
『どうして御姉様が加納さんと!?今日はお友達と御食事に行かれるって仰っていたのに…!』
この時、散らばっていた疑問の欠片がパズルピースに変わり、綾乃さんの胸の中で1枚の絵を完成させたの。
――そう言えば御姉様、御兄様から加納さんのお話を聞いている間、様子が変でしたわ。
――加納さんも「優美さん」って、親し気に御姉様の名前を出したりなんかして…
――ひょっとしたら御二人は元恋人同士で、本日こうして縒りを戻されたのでは…?
胸の内で全ての辻褄を合わせた綾乃さんは、二人に声をかける事無く家へ帰ってしまったの。

『加納さんの馬鹿!御姉様と今日、縒りを戻すくらいなら、どうして私を誘ったのよ…!』
可哀想に…綾乃さんは家で独り寂しくクリスマスケーキを1ホール分ヤケ食いした末、気分を悪くしてしまった。
対して、その晩遅くに帰宅した御姉様は、酒気を若干帯びて、大層御機嫌だった。
綾乃さんにとって最高になる筈が、最悪なまま終わると思われたクリスマスだけど、山は年が明ける前に動いたの。

御兄様がクリスマスを過ぎ安くなったケーキで、綾乃さんの機嫌を直そうとしてたそこへ、加納さんが会いにやって来たのよ!
加納さんは、御姉様ではなく、綾乃さんに用事が有ると、御兄様に告げたわ。
綾乃さんを前にした加納さんは、少し険しい顔で言ったの、「クリスマスに約束の場所でずっと待ってたのに、何故来なかったんですか?」って。
これには綾乃さん、鳩が豆鉄砲食らった様な顔をしてしまったわ…だってその言葉を言いたいのは、綾乃さんの方だったもの。

勘の良い人はお気付きだろうけど、つまり綾乃さんは12月24日、加納さんは12月25日に待ち合わせの約束をしたと思い込んでたわけ。
クリスマスに対する認識の違いが、二人の擦れ違いを生んだのね。
携帯が無い時代にはよく見られるトラブルだったわー。
でも加納さんと御姉様がイブに会ってた件は、どう捉えれば良いのかしら?
そこへ全ての誤解を解消しようと、御姉様が説明しにやって来た。
実は御姉様、中学1年生の頃、加納さんにラブレターを渡して告白したものの、丁重に断られた事でカッとなり、「もう、お家に来ないで!!」って言ってしまったそうなの。
子供らしい我儘から発した暴言を、御姉様は十数年来、後悔してたんですって。
加納さんが転勤で戻って来た話を綾乃さんから聞いた御姉様は、蟠りを無くそうとイブに会って謝罪したというわけ。
御兄様は加納さんが、お子ちゃまだった御姉様から言われた言葉を、律儀に守って家に遊びに来なくなった事を知り、大いに呆れたわ。
でも年下の者にも誠実な所が加納さんらしいと、綾乃さんには好ましく映ったの。

お正月、加納さんはクリスマスの時の埋め合わせに、綾乃さんを釣りに誘ってくれた。
二人は釣って食べて楽しい新年を迎え、加納さんは短歌も詠んだ。
「初春や ボラもスズキも 出世魚 縁起が良くて 味秀でたり」

…と、粗筋書けば割りとよく有る王道少女漫画だけど、実際に作品を読めば印象が大分変わる筈よ。
川原女史の哲学的な言い回しと惚けた絵柄が、普通の少女漫画チックな内容を、普通でなく読ませるの。
どういう意味か知りたい人は、是非一度読んでみて!
それにしてもクリスマスと正月を釣りして迎えるなんて個性的な楽しみ方、メリーも試してみたいわ♪

さて、ここでクリスマスソング1曲目を紹介――「ジングル・ベル」♪
1857年にジェームズ・ピアポントが作詞・作曲した歌で、元々はクリスマスに関係無く、冬のソリ遊びの楽しさを歌ったものなの。
今年は日本語版の歌詞を紹介――こちらを参考にしてね。
釣りとソリ、一文字違いだけど、似てるって思わない?なーんて♪
それじゃあ、また明日、楽しくクリスマスソングを歌いましょう♪



【ジングル・ベル】




走れソリよ♪ 風のように♪ 雪の中を♪ 軽く早く♪
笑い声を♪ 雪に撒けば♪ 明るい光の花になるよ♪

ジングルベール♪ ジングルベール♪ 鈴がー鳴るー♪
鈴のーリズムに光の輪が舞うー♪

ジングルベール♪ ジングルベール♪ 鈴がー鳴るー♪
森に♪ 林に響きながら♪


走れソリよ♪ 丘の上は♪ 雪も白く♪ 風も白く♪
歌う声は♪ 飛んで行くよ♪ 輝き始めた星の空へ♪

ジングルベール♪ ジングルベール♪ 鈴がー鳴るー♪
鈴のーリズムに光の輪が舞ーうー♪

ジングルベール♪ ジングルベール♪ 鈴がー鳴るー♪
森に♪ 林に響きながら♪

森に♪ 林に響ーきーなーがーらーー♪



…こんばんは、びょりです。
毎度御無沙汰しており済みませぬ。
毎年律儀にここへ戻って来るミス・メリーは偉いなあ。
ハウステンボスの件等、気になる事は多いですが、正月過ぎに回すとして、今年もミス・メリーからのクリスマスプレゼントをお楽しみ頂ければ幸いです。
川原泉作品の真骨頂は言い回しに有ると思います。
「性格破綻――つまり性格が破れ綻びている」とか。
私のお薦めは食み出し御嬢様トリオが活躍する「笑うミカエルシリーズ」、映画化もされて舞台にハウステンボスが選ばれました。
実は虫の知らせか割りと最近ハウステンボスに遊びに行きましてね…その際のレポは年明けに。
それにしても、夏の号用にクリスマスの話を描く、川原泉先生のマイペースさよ(笑)。

今回の写真は横浜ランドマークタワー入口に飾ってあったレゴサンタ像、83,250個ものレゴブロックで造られてるそうです。


↑これもレゴブロックで出来てます。
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