先日、映画『プラド美術館』を観にいった。有楽町のヒューマン・トラスト・シネマ。夕方に1回限りの吹替え版(今井翼がナレーション)を選ぶ。
2,3か月前に予告編を偶然ネットで観た。映画のナビゲーターが、以前にブログで書いた「リスボンを離れて」の英俳優ジェレミー・アイアンズ。反射的にジョン・ファウルズとD.クローネンバーグを想起させる。自然体の演技で惹きつける渋い俳優だ。
今回は大いに迷った末に、アイアンズの肉声を捨てた。吹替えにしたのは、まず芸術作品を集中して見ること。固有名、美術専門語の多い字幕を追うのは、老いぼれ脳&眼力にはちと辛いと分かっていたからだ。
結果オーライ。J.アイアンズが画面に登場するシーンは少なく、多くがナレーション中心だった。で、今井翼の声は、意外にも舞台俳優を思わせ、響きのある低音は、趣のある良いバランスを感じさせる。将来性を感じた。精進を祈りたい。
『プラド美術館』はマニアックな映画とはいえ、観客は6,7名(平日夕方)だった。コロナ禍ゆえに、一席ずつ空けて座るよう配慮されている。満席になっても、5,60人ぐらいだろうか。さぞかし経営は難儀に違いないと、いらぬ心配をした。
▲本編がはじまる前、次回作の告知か・・。
『プラド美術館』の上映時間は92分、と意外に短い。約8700点を収蔵する世界屈指の美術館、その名作を厳選して紹介するにしても、どう見せてくれるのか。そこに興味の大きなポイントがあったくらい。ベラスケス、グレコ、ゴヤ、ルーベンス、ムリーリョ、その他スペイン王朝時代に蒐集されたヨーロッパの至宝の芸術作品。カタログも買わず、まっさらな状態で鑑賞した。
▲映画『プラド美術館 驚異のコレクション』予告編のナレーションは今井翼ではない。
映画は,一つの歴史的な建築物としての、いわば「生きているミュージアム」を主人公としている。『プラド美術館』の名画をじっくり鑑賞できるものと期待する方は、蹴とばされると覚悟した方がいい。現在建築中のプロジェクト、館長に始まる、各セクションの学芸員らの御託を、まずは拝聴することになる。
200年の歴史を通じて、いかにして『プラド美術館』が今日のステータスを築きあげたのか、プラドの魅力と芸術をこよなく愛好するものなら垂涎の話がきける。名画を修復する専門家のエピソードだけでも、プラド美術館の凄さのエッセンスがわかる。
ということで、個々の作品紹介はベラスケスの『ラスメニーナス』にしても3,4カットで2,3分ぐらいでしかなかった。要領をえた的確な解説だったとしておこう。それだけバロックから近代絵画、フェルメールを含むフランドル絵画、イタリアの至宝の名画などが目白押し、圧倒されるほどのボリュームだ。特筆したいのはプラド秘蔵とされるヒエロニムス・ボスの奇想の絵画『快楽の園』などを読み解くくだりは、けっこう時間を割いて解説してくれた。ゴヤも同じ理由で良かった。
監督についてよく知らぬが、異端と言われる画家たちに意図的にスポットを当てた・・世界的流行?。ベラスケスに先行する画家としては、小生はエル・グレコぐらいしか知らなかったが、スルバラン、ホセ・デ・リベラの作品に瞠目した。特にリベラには強いショックと、ベラスケス級の強い感動を覚えた。(新大陸発見以降、16~17世紀には、信仰と知性のパラダイム的変革があったとおもう)。
作品自体も、後で確認したのだが、『プラド美術館』の所蔵でない作品をリベラの代表作として紹介し、解説していたのではないか。作品の趣向といえば、前述のボス、ブリューゲルらに通底する「異形のもの、奇妙なもの、猥雑なもの=聖なるもの」の文脈で読み解けられるはずだ。
▲一番上『えびあしの少年』、その下が『毛の生えた女(アブルッツィのマリア・ヴェントゥーラと彼女の夫と息子)』
ホセ・デ・リベラは若い時にスペインを離れ、イタリアのナポリに移った。その地で優秀な弟子が集まり、大きな工房をつくり活躍したしたという。だから作品の多くがイタリアにあって、後年スペイン王宮が買い戻したということだろう。それにしても、リベラの絵画がこれほどのものとは知らなかった。齢を経て、観方や感性が随分と変化したのだなと納得。『毛のはえた女』については、イコノグラフィーの枠をこえて迫る何かがある。
▲『ヤコブの夢』天使が舞い降りてもいないが、イコノグラフィーだそうだ。
『聖アンドレア』磔刑にされる木材を持っているとされる。愚生は人物の表徴にしか目がいかない。
蛇足になるが、17世紀の美術界で異彩を放ったという女性画家のクララ・ピーターズの静物画について、短いけれど作品の成立ち、修復の困難さなど、画力の評価をふくめて丹精な解説があり印象に残った。近年、その評価が上がっているのだろう。『プラド美術館』の古い図録を所蔵しているだが、それにはピーターズの静物画は収録されていなかった。
いちおうベラスケス好きの私ゆえ、手持ちの図録の写真を載せて投稿することにした。
追記:かつて岩波新書『ベラスケス 宮廷のなかの革命者』(大高保二郎著)を読んだときに、ベラスケスの小年譜を自分なりにつくったことがある。そこには1630年にベラスケスがナポリに行き、リベラと会ったことを記していた! その目的はもちろんのこと、リベラの作品を買い求めるためであろう。キュレータでもあったベラスケスの仕事の一環と思われる。と同時に、ベラスケスの審美眼の高さもさることながら、リベラのそれに己と同質の何かを認めたゆえに、わざわざナポリに足を運んだと思われる。自画自賛になってしまうが、映画のなかの数分間にリベラを観て、ベラスケスに勝るとも劣らない画力を見出した吾を、ちょっと褒めてあげたい。(2020.10/9記)
もう一つは会社が何を言おうが、会社が倒産しようが、私は食ってゆける……首にお前らの鎖はつけてないもん!😜という本音ですね。
私の持っている教官資格や他資格を(クライアント向けに)欲しているのは会社の方だもの。ただコロナ禍で正副の業が逆転していただけなのですね。それを本来ある姿に直しても、社会保険は維持できる。
私は支社で契約した契約社員で、本社の事業部に出向しているのですが、本来に支社と本社は帰属が違うので、
「あ、本社なら辞めてきて良いよ。でも週2とかで良ければ続けてね。こちらもスケジュールに都合をつけますから」と支社長に言われました。
小寄道様の世代と違い、私ら新人類世代は、もう還暦前ですけれど、
少子高齢化のお陰で、会社側も副業や働き方に妥協しなければ人が集まらなくなってるんですね。
いや、別にお前に嫌われても行く所あるから! まぁ直接には言わないけど、それを上司に出してもクビとかできない🤣人集まらないから。
研修や入社祝金とか出しているから辞められると赤字で、現場責任者がシバかれるようで。
そういうワケで愚痴りました件は、「社会保険の適用範囲だけ」残り
本業の方を増やす……という交渉を開始しました。
前置き長すぎてすみません。
ブラド美術館は、フェルメールありましたよね?
ブリューゲルも好きなのですが。あの残酷でダイナミックな映像的な画風が。しかし対局的な静かな、透明なフェルメールも好きでして。
しかし、ルーブルや大英博物館なら、夜中や展示の舞台裏とかの映像を見た事があるんですが、美術館そのものは見た事がないです。
三十年前ですか、博物館で警備員バイトしました。空襲や軍人の遺品が展示された場所あるんですが、巡回で肩を叩かれた等の事例が多く。
それでその「出る」一画に夜中にシーツ被り待機したんですね。
巡回が来た瞬間、だぁ!とやったら、この世のものとは思えない雄叫びをあげて展示物に激突、そのままカーテンに絡まって、
ぎゃあ! 離せぇ!! あぎやー!!!
と暴れ回ってる。
怖いよ!←怖いのお前だわ。大丈夫かこいつ??
んで、そのまま窓を開けて脱走しちゃったんです。
普通は懲戒免職ですが、かねてから出ると博物館職員に噂の場所でしたので、自主退職で損害賠償はされなかったようです。
え? そりゃ自白しませんよ。僕らのイタズラなんて。
最近、某警備員のブログで、その博物館が心霊ナントカ扱いされているのを知り、あーこのようにして都市伝説は生まれるのかと思った次第です。
今、旅先にてスマホにて操作しています。数日後に、きちんとリコメいたします。もう一件も同じです。
ご免なさい。
GOD bless you.