小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

冷える日本のポピュリズム

2022年07月07日 | 国際・政治

民間テレビのニュースショー&バラエティーを見なくなって久しい。ある評論家の指摘によれば、参院選を目前にして選挙ネタは、どの番組でも軽くスルーされているそうだ。関心度が低いので、視聴率を稼げないということか・・。

大勢は決まっていて、投票行動はある程度の確度をもって予測されている。今回の参院選が終われば、向こう3年間は国政選挙はない。岸田政権は何だかんだ言われても、余程のことがない限り墜落はなく、着地できない低空飛行を続けていくに違いない。

国政選挙に関心が行かないのは、言うまでもなく野党側が総じて、結局は減税やら短期的な金のバラマキを訴求していること。そんな迎合的で見え透いた戦術に、国民はあきれているのかもしれない。目先の一時金に目をくらませる人たちもいようが、バラマキの「財源」は、どうせ国債発行を当てにした思惑があると多くの人々は感づいている。それらはすなわち、最終的には国民が負担することになるというカラクリ。

賃金が増える、雇用形態をしっかりさせる、ブラック企業を成敗する、この国のかたちを見据えた中長期的な成長戦略を提示する、それらを実現するための具体的なプラン、スケジュールを示すことができる。これぐらいの充実したコンテンツを並べ、さらに独自性を見せてくれないと国民は動かない(エネルギー政策の抜本的な構造変換)。

質の高いモノづくりで日本は成長してきた。いま、そのメシの種の基幹産業が細っている。未来型のオルタナティブの産業も育っていない。脱コロナのインバウンド目当ての観光産業だって、物価高騰を前にして課題は多いのではないか・・。そう、他にも、少子高齢化、教育の見直し、いろいろあります。

今、危惧するのは、ロシア・ウクライナ戦争の長期化によって、世界経済そのものの先行きが読めないことだ。ロシアへの制裁を課したはいいが、ロシアによるエネルギー資源の供給停止が様々な混乱を生んでいる。米中印の大国は、さらにしのぎを削る展開となろう。ヨーロッパ諸国では、英国が抜けた後のEU、北欧2か国加入後のNATOなどと調整しながら、対ロ政策を織り込んだ経済政策が求められる。

一方、ロシアはルーブルの価値を速やかに戻し、今はそれ以上の強さを発揮してプーチンのウクライナ侵略の強かさを誇示する結果となった。

ロシアの行く末を案じた、反プーチンのロシア人は、ウクライナ侵攻後に速やかにドルに換金した。ところが、いま現在はルーブルのレートより侵攻後の暴落から即反転し、結局のところ、直近では倍以上に値上がりし、手持ちの外貨を半減させてしまったようだ。

ロシアへの経済制裁が今後どの様に推移し、その屋台骨まで影響を与えるのか、素人の小生には見通せない。それよりも、日本はサハリン2からしめ出され、逆制裁が近々に来る(なんと三井・三菱さん再契約。初期投資は回収済だから撤収OKなのに・・。国の補助金や電力会社支援を取り付けた? 国際問題にもならない?メディアの怠慢とUSAの御目こぼしでしょうね;追記2020/10/12)。

ロシアの天然ガスの依存が5%ぐらいでも、石油を筆頭にエネルギー資源全体の高騰は勢いが止まらないから、日本経済への影響は計り知れない。

ロシアはいまや、ルーブル建ての決済を受入れる第3国経由の海運、パイプラインにシフトに成功しているからこそ、自国経済へのダメージを最小にしたのではないか・・。

「待て待て、これらは一時的な現象で、いずれロシアへの本格的な重圧が効いてくるはずだ」。それを具体的に、きちんと説明してくれる経済の専門家を小生はしらない。

▲円とルーブルとの為替変換レートの推移。制裁後から倍増している。円だけでなく、ドル、ユーロも同様。この実態をメディアは報道しない。

 

ロシア内の庶民たちはいま。日ロ国際カップルのユーチューバーをみて。

小生は、日本人との国際カップルのユーチューバーの二組をフォローしている。庶民の暮らしこそが、経済をはじめその国の実態をうつす鏡だからだ。

モスクワに居住しているカップルは、準備整い次第、近郊のダーチャ(民家的別荘)に生活拠点を移す。現在は両親、嫁さんの弟らと協力しあい、家の修復および家庭菜園をつくりはじめた。もちろん、自給自足をめざすためだ。動画を見ていて、彼らの一所懸命ぶりに応援したくなる。とはいえ、このチャンネルを含めて、ロシア政府に関する具体的な何かしらを口にする人は誰もいない。視聴者(ほとんど日本人)のコメントも無粋な人はいない。

もう一つのカップルはカザンという地方に住んでいる。嫁さんはロシア人ではなくタタール人。カザン郊外の分譲地に、第2子誕生を考えて、日本の建設会社の建売を購入予定だった。ところが、日本円で2000万円だった住宅価格が、この2,3か月でルーブル上昇によりで4000万円になった。急遽、その契約をキャンセルにした動画を先日アップしていた。

現在は、古いけれどダーチャのような家に住み、嫁さんの両親は他の土地に広い耕作地を所有し、農作物や果物をつくっている。小生は1年前くらいから、彼らの暮らしをユーチューブで観るようになった。赤ちゃんの成長動画でもあり、たいへん癒される。

ということで、ロシアの国民はかつての不安を払拭して、それなりの平和を享受しているのではないか。彼らの本音を表だって聞くことはできないが、視聴者はみんな理解している。

まとめ

それにしても、選挙公報などをみるかぎり野党側の短・中期的なお金のバラマキ政策は、たいへん一般人への迎合的なアジェンダであるが、財政政策の観点からのしっかりした政策や財源根拠などの説明がなされていない。

一時金の配布、消費税減税、なんたらの無償化などは、あらゆる方位からの根拠、前提が薄弱である。すなわちアベノミクスと同じ経済政策を頼みの綱とする。つまり、経済的な破綻というネガティブな要素を一切排し、「3本の矢」のような大規模な財政出動に乗っかる戦略である。つまり野党側の政策も、アベノミクスと同じように、最終的には国債発行をかぎりなく続けるということだ(3本の矢の3本目の嘘を、誰もが糾弾しないのは、この国のアキレス腱である)。

自民が勝利すれば「海外勢は政権基盤安定をプラスに受け止める」とする一方、「国内では増税への警戒感が広がる可能性がある」と海外の識者は指摘する。株価を重視したアベノミクス路線から離れるとみられれば「マイナス材料になる」ともいうが、最初に述べたように、アベノミクスは「異次元の金融緩和」と「日銀の国債大量購入」を大前提にした経済政策であり、国際金融状況に大混乱が発すれば、同時に大きな影響を受ける。リスク度はたいへん高いのだ。

日本の株価は今のところ、さほどの影響がないように見えるがどうなのか。物価高騰による大幅な景気後退を受けとめる、ショックアブソーバ的な何かがあるのだろうか。

小生は、日本の大衆は基本的に「1親方日の丸、2寄らば大樹、3思考丸投げ」の三点セットで推移してきたが、「考えない、動かない、人任せ」でも、客観的に為政者=ステークホルダーを見ている人びとだと思う。そして、現状況はどう見ていいか分からないが、自分たちにやたら迎合する輩には近づかない用心深さも持っていると思う。ポピュリズムとは、立場を超えても、ひとつのゴールに向かっていく大衆の「欲望の動き」だと思うが、現状況にそんなダイナミズムはない。

日本のポピュリズムは冷えているとしか言えない。いろいろな視点からみても分断され、それぞれの立場、階層においても複雑化している。そして、欲望そのものが縮小、枯渇しているのか。ある種の危機的状況ともいえる。

これからは貧すれば鈍するのか。それとも、スマートでホットなポピュリズムは復活するのだろうか。小生はその行く末を見るまえにこの世から消えているだろう。

 


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