12月4日、ペシャワール会の中村哲さんがアフガニスタンのジャララバードでテロの凶弾に斃れた。遅ればせながら、ここに彼のご冥福を祈るため、八木重吉の二つの詩と拙文を記した。
かなしみ
このかなしみを
ひとつに 統(す)ぶる 力はないか (八木重吉)
近代以降、この世界には厳然として軍需産業があり
邪悪で強い欲望をもつ、怜悧な人達が集まっている
彼らは、地球上のどこかで戦いがあることをのぞみ
武器や弾薬が使われ、消尽されることを願っている
平和は彼らにとって敵であり邪魔な代物でしかない
同じく友好や、協力、援助なども無きものとしたい
軍需産業はいまも、国家、民族、宗教の間をこえて
戦争や紛争の種を植え、憎悪と狂気を作りたいのだ
アフガニスタンは、軍需産業にとって格好の場所だ
疑惑と怨嗟が渦巻き、考え方の違いで人々は争った
殺人は日常化し、死が死を呼び人々の貧困は増した
中村哲という医師はこの地に立ったとき何を見たか
必要なものは医療ではない、貧困から抜け出すこと
毎日の飲み水と食べるものが人々に届けられること
生きることの歓び、明日につながる平和があること
大地に豊かな水が流れ、農業こそが必要だと分った
井戸や用水路を作ってきた中村哲はなぜ殺されたか
軍需産業にとって、強力な敵であり排除すべき対象
脱貧困と平和のタネ、方法を作った中村哲を殺せよ
そう、彼を死に至らしめたものは軍需産業しかない
アフガニスタンに戦争と憎しみの種が絶えないよう
平和な生活や幸せな人生を築く希望を持てないよう
アメリカ、ロシア、中国など世界にある軍需産業は
それを画策もせず、必然的に中村哲の惨死を齎した
アフガニスタンの人々のために、生きる喜びと糧をつくるために死力を尽くした中村哲さん、また共に支えあった5人の仲間たちに、心から哀悼の意を表します。
しづかなる ながれ
せつに せつに
ねがへども けふ水を みえねば
なぐさまぬ こころおどりて
はるのそらに
しづかなる ながれを かんずる (八木重吉)