小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

主権のない国家は、どう見られるのか

2022年05月16日 | 国際・政治

一か月ほど前になるか、日本のウクライナ支援に関して、当事国ウクライナ政府から何らのレスポンスがないことがニュースになった。
他国にはそれなりの感謝の意を公表したにも関わらず、日本だけがのけ者にされたのはどうしたものか・・。誠にけしからん話だと日本は抗議したという。

この辺の事情をさかのぼって調べたら、当初、ウクライナ大使館では「武器提供してくれた国に対する感謝」の表明であるとした。ところが、感謝国のリストの中に、武器・弾薬等の支援を拒否しているブルガリア、トルコが入っていたので、この問題は紛糾しかかったのだが、ウクライナ政府は率直に謝罪した。そして、ウクライナへの支援、対ロシア制裁への協力について、改めて正式に感謝の意を日本側に通達したという。

ゼレンスキー政権は、以前にもナチスのヒトラーと昭和天皇を同様に扱って物議を醸したことがある。世界大戦後の国際的な歴史認識について、相応の知識、情報が欠如していることを露呈し、かつ日本という国を軽く見ているとも言える。

「なぜ、軽く見られるのか」、こんなことを真摯に考察している人を知らない。いや、軽く見られてもいいじゃないか、という人もいるだろうし、他人が自分をみることにいちいち拘る必要もないという意見だってありそうだ。

それはともかくとして自分としては考えざるをえない。「なぜ、軽く見られているか」という理由はこう考える。

日本という国家は主権のない、アメリカに本質的に従属している国だとして認知されている。憲法の問題はさておいても、日米安全保障や日米地位協定の非対称、不平等、基地使用における自由・無放任、制空権の譲渡、これらに加えて、米軍駐留経費の全面的な肩代わり、その他諸々により、日本は主権国家ではなく、事実上アメリカの属国である。

以上の理由により、日本という国をシビアに見る外国人ならば、戦後政策の諸事情を知っていると仮定しても、日本という国家は名実ともに独立国家として見做すことはできない、と誰もが主張するであろう。ただし、それを口外する必要もなく、あえて論うことも大人げないとする。日本を知るもの、特に政治家であったら、そんな弱点、難点を指摘することの愚を弁えている。対日外交政策のイロハである。

政治家として外交や渉外の実務経験があれば、日本がどういう国で、どんな発言がタブーなのか知っている。しかしながら、ゼレンスキー大統領はじめウクライナの閣僚たちは、政治家になって経験はまだ浅く、前述した、日本に対する外交上のタブーを知るものがいなかったのではないか、残念なことではあるが・・。

ちょっとした知識人クラスの外国人は、日本はアメリカの属国であることを知っている。つまり、本質的には主権国家ではないと認知されている。日本通ならば、アメリカと交わされた密約があり、それが現在も有効であることを知っている。

こんな空前絶後の密約が、日米トップの間で交わされ、その文書がアメリカ側だけに存在したという事実。日本ではそんな密約はないと不問にされている。しかし、その片鱗、ごく一部が外務省に秘匿されていたが、毎日新聞社一記者の執念によって暴かれることになった。

そう、沖縄返還にともなう日米密約。太字で前記した内容のことが、1972年に佐藤栄作とニクソン大統領との密約により確認された。この密約文書のほとんどは、アメリカの公文書館で確認することができるという。

沖縄が日本に返還されて半世紀。昨日、ビデオニュースにその元記者、西村太吉さんが登場した。91歳の御年、下半身は弱くなったが上半身はまだまだ大丈夫だという。この番組には何回か出演されているが、いまだ気骨あるジャーナリストとして衰えはない、としておきたい。日本をみる目は鋭く、揺るぎないものがあり、今どきの人は、西村太吉をどう見るのだろうか。少なくとも「軽く」は見られないだろう。

いや、真実の探求よりも、組織の存立を優先する、立場や地位の保持に重きをおく、そんな今日のメディア界、ジャーナリズムは凋落、劣化の一途をたどっている。自己保身やポジショントークに汲々とする記者たちは、西村太吉という一人の元記者の存在をどう考えるのだろうか・・。

いちおうダイジェスト版ではあるが、下記に貼り付けておこう。

『西山太吉×宮台真司×神保哲生:偽りの沖縄返還を暴いた伝説の記者・西山太吉の遺言【ダイジェスト】』

 

 

 


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2 コメント

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防衛と経済 (Sekko)
2022-05-17 16:59:37
どうなんでしょうね。

GWにシティで岸田首相が「Invest in Kishida」とぶち上げました。

結局日本は防衛の主権を放棄して経済を取ったということで、今現在ですら、円安のおかげもあってトヨタもソニーなど大手企業は軒並み利益を計上しています。
実質賃金は低下し、企業は儲かり庶民は貧困化し、それでもガラパゴス的日常が続いているような日本を見ていると「不思議の国」という感がぬぐえません。
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国家に尊厳はあるでしょうか (小寄道)
2022-05-17 18:47:05
自分の国が何かを選択するときに、他国にお伺いをたてる、或はいいなりになる。それよりも、経済的な豊かさを採る。国を代表するような企業が繫栄することが、日本の成長につながる。その国家的スローガンが「Invest in Kishida」。個人も国も企業も、ごちゃごちゃの言い草です。明確な主体がわからない。主権の在り方も知らない。Sekkoさま、恥ずかしい話じゃありませんか。

「不思議の国」という命名は確かフランス人コラムニストでしたか。日本を傷つけない、優しい言い方ですね。

自分たちの失政を、財政上の借金を、「国民一人あたり一千万円」なぞとあたかも国民の責任のように言い換える。それをメディアも同調している。私たちが政府に貸している。国民は債権者ですよ。

この国の為政者は、国家の基本、プラットフォームの理念さえも持ち合わせない。
まず、人ありきです。国家は後からやってくる。
でも、日本人はどうも「個人」としての「尊厳」を軽くみますね。だから「国家」の「尊厳」もどうでもいいと思っているんでしょうか。妄言多謝

Sekkoさま、コメントありがとうございました。もう相手になんかしてくれない、そんなスネ男になっていました。
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