ネットのニュース番組「ビデオニュース」の会員になって約20年(注)。その1000回目の記念番組は「ようやく見えてきたコロナの正体」というタイトルだった。ゲストは児玉龍彦氏(東京大学先端科学技術研究センター顧問)、かつて3・11フクシマのとき、国会の参考人として放射性物質や内部被曝の問題を全力で訴えていた。魂を込めた先生の陳述は、当時京大の助教だった小出裕章氏と同じように真摯で熱く、何よりも科学的裏付けのある確信と論理性が感じられた。
氏は、全世界に蔓延したコロナの様々なデータ分析、世界各国の研究成果(論文)から、コロナ禍の実相(covid19の特殊性、多様な免疫反応など医学的知見の枠を超える、異様な諸症状)をこと細かに解説され、これからの日本が取り組むべく、いわゆる傾向と対策を示唆された。
この放送があったのは先月、6月6日であったが、それから一か月あまり東京におけるコロナ感染者は二桁の数字で推移。そして、この10日間ほど100名、200名を超える感染者がでて、第2波の感染再拡大かと思われる様相を呈している。
児玉先生はいま、東京におけるcovid19の新たな感染リスクを訴え、国会はじめ各メディアに精力的に出演している。
筆者が要約するとこうだ。いわゆるcovid19 は、感染しても無症状という事例が多い。感染者からその感染ルートをたどり、接触者を特定し、PCR検査して陰性の結果がでても、後日に症状が現れるケースがある。また、陽性の結果であっても抗体ができていない場合もあるという。(唾液からの簡易検査キットを採用しても結果は同じで、陽性反応が出ても無症状の人が多いらしい)。
そして、無症状だからこそ、感染者がどんどん増えているらしいのだ。変異しやすいRNAウィルスのcovid19は、いつのまにか武漢型でも欧米型でもない、「東京・埼玉型」に変異したのではと危惧する。いま新たに抜本的な対応策を講じないと、最悪、ニューヨークと同じようになると・・。無症状感染は広く、深く潜行している。
精密かつ頑健な免疫システムをすり抜けて、細胞のなかでじっとしている新型コロナウィルス。感染した人の何をみて、増殖するかしないかを決めるのか・・。そんな不気味なイメージを想像させる(反対に、私たちを自然宿主として認定し、音無しくしているという見方もできるが・・)。
ただし、間違って重症者からの大量のウィルスを浴びると、感染者は間違いなく発症し、重症化するリスクが高いという。上気道の粘膜免疫を突破して肺などの臓器にまでウィルスが侵入するからだろう。放射能の被ばく量によって症状のレベルが異なる、そんな譬えは中らずと雖も遠からずか。
いずれにしても若い人が感染して無症状であっても、何かの拍子に豹変するし、家族や友人、職場の人間などにウィルスをばらまく可能性がある。
自粛緩和、イベント緩和、Go toキャンペーンなど経済の活性化策をとってから、covid19は静かに感染拡大した、それも無症状のまま、若い人たちの間で・・。そのエリアが夜の繁華街ということだろう。特に、キャバクラやホストクラブが集中している新宿歌舞伎町で、突出したコロナ感染者数がでた。先週末には293名もの過去最高を記録した。これは児玉氏が危惧したとおり、感染集積地=エピセンターが形成されている兆候そのものだ。
児玉氏はこの度、大まかにいえば二つのことを訴えている。
●東京はコロナ感染の震源地=エピセンターになっている。
●PCR検査の普及を妨げる組織、仕組み、悪弊が存在する。
以上の二点を、素人の筆者が詳らかに解説することはできない。下に貼り付けたYou Tubeの映像を見ていただけたら幸いである。補足するならば、PCR検査がいまだに普及せず、なぜ保健所を通した検査体制のままなのか・・。児玉氏の言を借りれば、大学や民間の医療機関を利用すれば、かなりの検査体制の拡充は、即座に実現できるらしい。
それができないのはインフルエンザ特措法の縛りと財源がないこと、厚労省と自治体をめぐる組織的な権限などの制約らしいのだが、残念ながら児玉龍彦といえども、クリアカットな説明はできていない。
PCRの検査機器を製作したのは、確か日本のメーカーだったと思うが、これが日本で普及していないのは、なにか政治的な圧力があったからであろうか。PCR検査の実情をわかりやすく解説してくれる人を、筆者はまったく知らない。
ともあれ、月並みな言い方だが成り行きを注視してゆきたい。
▲プレスセンター記者クラブでの会見。あの村上ファンドの村上世彰氏が登場、児玉氏が所属する研究機関に出資しているそうだ。社会貢献して、あるイメージを払拭したい? 解散した感染対策室の池浦先生がおこなった数理モデルによる感染シミュレーション予測について、筆者と同じ見解を述べていたのは面白い。
新型コロナ精密抗体検査プロジェクト 緊急鼎談!宮田裕章×児玉龍彦×川村猛(2020年6月24日)
▲以前このブログで紹介した宮田浩章氏が参加している。東京大学アイソトープ総合センター長の川村猛氏は、児玉龍彦氏前職の後任である。
(注)筆者はビデオニュースの優良会員でないことを告白する。毎月定期的に500円を支払わない。ウェブマネーの支払いで、ある程度まとめて視聴する。実にせこいやり方だというなかれ。分散型・短期集中視聴方式である。なお今回の、児玉先生のYou Tube映像は、10分のダイジェスト版なのであえて掲出しなかった。
追記:今日のニュースによると、コロナに感染したらしいユーチューバーが、再生回数を増やす目的で、確信犯的にスプレッダーとなって全国行脚。遂に、苦しむ姿をネットで公開した。逮捕されたはいいが、そいつが立ち寄った先々の施設、人々はどうなる。単なる迷惑行為ですまない。そんな輩がまた出てこないことを祈りたい。(7・21)
▲あまりに殺風景な記事なので、ちょっと色彩を・・。散歩中にびっくり、蓮の花の鉢植えを発見。見事な大輪な花を咲かせていた。