故安倍晋三氏の「国葬」が閣議決定された。賛否分断しているようだが、この国ではいったん閣議決定されてしまうと、99.%実行されることになる。国費が充当されるのだから、国会で審議されるべき案件であるが、そういう手続きなしに「国葬」が行われるという前例を作った(それが狙い? 追記:当の安倍元首相が前例を作っていましたわ)。案件がどんなものであれ、政府閣議で全員一致となれば、それが定例、持ち回り、臨時の場合でも、例外なく案件は実行にうつされるという重い事実ができた。
それを拘束する法的根拠はないと、確かに内閣法第4条には規定されているらしいが・・。定例の予算案は理解できても、今回のような突発的で事件性のあるものは、閣外からの意見、議論を求めるべきではないのか。今回の閣議決定は、非常事態性も応急性もない案件である。それだけに、法的拘束力がないというのは、民主制国家としては、片手落ちのような気がする。
いちおう、内閣法制局が審査することになっているというが、そんな話も届いてこない。そもそも内閣法制局という、政府機関の人事そのものが、安倍元首相以降、内閣総理大臣の権限に委譲されたのではなかったか・・。そう、今回の「国葬」の決定も、安倍元首相の傍若無人の怨念的しばりが効いたものといえそうだ。
それよりも筆者がより疑問におもうのは、統一教会(宗教法人・世界平和統一家庭連合・旧統一教会と長いので以下「統一教会」で通す)との自民党の癒着への糾弾があまりにも緩い。
選挙時に指定掲示板にポスターを貼るためのボランティア活動から始まり、組織的な票の取りまとめを統一教会は、なんらの見返りを求めずに申し出るそうだ。
これだけでも政治家からすれば有難いことであり、集票の目算が成り立つ。政治家個人への働きかけなのか、自民党の派閥への働きかけなのか、いまのところ分からない。要するに、岸信介元首相時代からの癒着であることは自明。押して知るべしであろう。
選挙応援や票のとりまとめだけでなく、のどから手の出るようなガチの献金を受けられる。こんな組織を自民党が手放すわけがない。
つまりはギブアンドテイクであり、統一教会は、宗教団体として法に触れるような霊感商法をやろうが、日本政府の有形無形のさまざまな庇護をうけていた。まさしく今どきの言葉でいえばズブズブの関係を保ち、互恵的に利用し合ってきたわけだ。
筆者が考えるに、この関係そのものは憲法に抵触しないかということなのか、判然としない。巷では信教の自由を保障する第20条を論う人は多くいる。しかし、筆者が目にとめたのは20条ではなく、第89条のそれである。
「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」
上記の部分には、信教の自由はさておき、いわゆる「政教分離」の精神を表現していると思われる。法律には門外漢なので、適確に指摘し論じられる資格はないのだけれど、宗教団体・組織のために国費を支出したり、利便を供与してはいけないと言っている。「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業」のところは具体的だが、実際の何を想定しているのだろうか・・。
憲法は為政者への法的しばりをかけるものでもあるが、逆に宗教団体からの利益供与、資金等の提供にもしばりをかけているはずだ。でなければ、真の政教分離は実現できないからだ。第89条には、その辺の表現が曖昧に感じ、ここにおいて政治と宗教の共犯関係みたいなものができてしまう危うさを感じてしまうのは、しがない素人の小生だけだろうか。
政教分離を厳格に法制度化、立法化することをめざす政治家は、この日本にはまずいない。また、宗教家の方は、オウムや幸福なんたらのように政治の表に出たがるので、今のところ安心である。共犯関係を構築するほどの怜悧な智略を持ち合わせていないからであろう。
さてさて、統一教会のあまりにも非道なやりくちが日を追うごとに明らかになってきている。最近、BS・TBSで統一教会の特集があり、その創成から近年の活動実態が、1時間という枠にうまくまとめていた。文鮮明という教祖の基本思想が、1冊230 430万円ほどの書物にまとめられていて、これが日本人への折伏(トーク)の基になるそうである。
『天聖経』という文鮮明の主著(発言録)は、特に日本人向けに再編集し、キリスト教のことよりも日本人への恨みが凝縮した文言で構成されているそうである。その一端は以下のとおり。背筋が凍る。岸信介や故安倍首相らは、たぶん知らなかったんじゃないか・・。
・日本は朝鮮の植民地支配を断罪され、積年の怨恨を解くためにも、日本人は多額の寄付は宿命。
・朝鮮半島は男性器でありアダム、日本列島は女性器でイブ。イブはアダムに奉仕する。
・キリスト教の創成創世記になぞらえて、イブ(日本)が禁断の罪を犯し、アダム(朝鮮)をそそのかした。
・韓民族に重い原罪を負っている日本人は、永遠にその罪を償い奉仕しなければならない。
・反共思想のもとに結成したが、組織拡大を期すためには、北朝鮮を利用する。(金日成へ資金提供)
以上のような驚嘆すべきトピックが取りあげられ、そのほか日本人特有の先祖崇拝、除霊・お祓い&お布施(寄付)などの民間信仰を巧妙に利用した、霊感商法の実際のテクニックなどが紹介された。報道番組であり、何かのプロパガンダでもないので客観的に視聴できる。右翼・保守のひとにはお勧めしない、自民党がいかに選挙に勝つためには、韓国の宗教団体を利用する狡猾さに呆れるだろうから。
問われる政治との距離 激震・旧統一教会と日本政治【7月22日 (金) #報道1930】| TBS NEWS DIG
{付記}:霊感商法の被害にあわれた方の詳細を断片的に知ることができた(近親者)。故人であるが、詳細には書かない。生涯を独身で通した女性で、地方公務員であり、退職後に被害にあった。統一教会から買わされたものは、朝鮮人参、印鑑セット、壺、先祖来歴の調査・証明書などである。被害総額はおおよそ500万円ほどであるが、正確ではない。バブル時代の終息期の出来事である。
こちらの記事で示されている政教分離に抵触する「89条」の解説がありますが、まさしく、その問題ではないでしょうか。それを手掛けるのも大変そうですが怯んでいたら、いつまで経っても、こういう状態を継続させてしまう事にもなりますし…。
この際なので、知的裁断を誰かがやってみせて、国民的な議論とし、きっちりと政教分離も徹底した方がいいと思うんですけどね。
さっさと国葬を発表していることのウラには、「世論が固まり切らないうちに布石を打ってしまえ」という計算なのだと思いますが…。
この記事に何らかのレスポンスがあるか、期待していなかったので、望外の悦びです。
マスコミふくめて政界が何故かいま、穏当なのは分かります。
何かしら、知っていること、都合悪いこと、隠せればあえてそっとしておきたい、そんなものが結構かかえているんじゃないでしょうか。
そして、日本と朝鮮の長い歴史のなかで、両国民とも根の深い怨恨があるのでしょうし、そこには劣等意識あるいは優越意識が混在して、現在まで続いているような気がします。それが端的に、経済やら所得の格差が「勝ち負け」として反映されている。
今、関心あるのは、ネトウヨとかゴリゴリの保守(安倍礼賛派)が、今回の惨劇をどう受け止めているのか、ですね。
SNSの動向に疎いので、彼らの反応がどうなのか、興味本位に気になります。