小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

Bライフと、リバタリアンの差異

2017年08月13日 | エッセイ・コラム

 

久々に高村友也のブログを覗いたら、夏野菜の収穫が良かったらしく(?)、結構な数の写真がアップされていた。「夏野菜反省点など」という題の記事にしては、出来栄えの素晴らしさ、種類の多彩さに驚く。

    高村友也のブログ:「寝太郎ブログ」⇒ (リンク不可、左記ブログ名で検索されたし)

どんな野菜を育てたのか、ブログから引用してみよう。彼なりの食へのこだわりもわかる。

少量でいいものは、ミズナ、チンゲン菜、小松菜、かぶ、ラディッシュ、大根、サンチュ、それからトマト、ナス、ピーマン、キュウリなどの夏野菜。これらは、自分用と少しお裾分けするくらいなら、本当に少しでいい。葉物やかぶ類は少しずつ時期をずらしながら播種、夏野菜に関しては種は使いきれないので苗を買うべき。

野菜だけでなく大きな西瓜の写真もあった。果物にも手を出しているのだ。生まれも育ちも知らないが、農家顔負けの、大した力量だと感心する。

自著が文庫本になり、印税など臨時収入があって作付を増やしたのかしらん。精神的プラス、種苗を買う「ゆとり」ができたのなら喜ばしい限りだ。


ところでBライフとはBasicのBだと承知していたが、Babyishベイビッシュ(幼稚な)のBだと「密かに思っている」とも書いてあった。ここまで恵まれた食材でヘルシーな食生活をおくっているなら、幼稚どころか他人が羨むほどの領域に達している。Bライフに憧れる若い人々からリスペクトされても可笑しくない。

最近、リバタリアンについて書いているが、高村友也のBライフと一脈通じるところがあると思っているが、どうか・・。

しかしながら、彼は実際冷めている。日本という社会がたとえ機能不全になっても、たぶんどこ吹く風だろう。自力で自分の思うがままの生活を続けるに違いない。

それは揺るぎない決意で、人から後ろ指を指されることも絶対ありえない、と彼は確信をもっているはずだ。東大の哲学科を出て、慶応の大学院にいた男。確か分析哲学の何かを研究したはずだが・・。アンガージュマンやペルソナリズムだって、一応どんなものか心得ていると思う。自由と正義、共同体とアイデンティティなどの相関関係だって考察したであろう。

だから、敢えて申し上げることはない。

この現実社会と「付かず離れず」の、自由気ままな「森の生活」を選んだのだ。ある意味、彼のような男は、為政者にとっては都合がいい存在かもしれない。政治に文句を言わないし、課税しても払ってくれる。リバタリアンならば、権利の保護を求めるし、とうぜん救済だって要求する。気にくわないことがあれば、不服従から強い抗議行動に出る。

高村はそんなことはすべて御見通しで、Bライフを愉しんでいるのだろう。自分が年老いて死ぬまでのシミュレーションだって考えていた。刹那的なところは微塵もない、すこぶる賢明な男だ。


さて、彼自身はブログを書き、その広告収入も多少あるらしい。ネット知識も豊富だから、世の動きは掴んでいると思う。(ビット・コインはやっていないようだ)

ただし、政治社会、それらの関係性、諸問題には一切コミットメントしない。自分から社会に関与すべき最低限のこと、納税や保険料などの納付は律儀に書き残す(年金について、収支明細に記入なし)。社会インフラの重要性も認識し、自分の棲むところに電気を引けないことが分かれば、自力でソーラーパネルを設置する。

土地の一角を購入し、自力で小屋を建てた。食べ物を得るための野菜は、一反ほどの土地を年間4,5千円で借りる。自立した生活はリバタリアンのようだが、行政はじめ社会に対する憤懣、異議申し立ては全くしない。潔い覚悟である。65歳になるまでの生活シミュレーションもしっかりできている。その時に貯金を2千5百万円にするには年間120日のアルバイトが必要となる生活設計もある。(半分の60日だと800万円)

 だから彼が世捨て人になることはありえない。


最後に、彼が世間の人々と関わるエピソードをほんの少し紹介したい。ほんとに数少ないのだが、紹介した文庫本に「言葉」というコラムが10ほど挿入されている。そこには、だいぶ離れている隣の住民の方や、外から来る宅配便とのやりとり、その素っ気ない会話が紹介される。最小限の言葉に、彼を気遣う心にあたたまる。日本人は、赤の他人にもほんとに優しい。

とりわけ山の中に配達しに来た宅配便のそれぞれ違う方の、不思議そうで本質的な問いかけが面白く、記しておく。

「こちらは電気はどこから・・?」(4)

「ここら一帯買われたんですか」「ええ、まあ」「静かでいいですねぇ」(5)

「ここでがんばっているんですか?」(6)

最初のコラム「言葉1」には、二人の警察官がはじめて様子をうかがいに来たとき。近隣からの通報、住民届の申請なども確認したうえで、高村友也のセルフ・ビルドの山小舎を訪ねてきた。男二人で・・。

会って、話をきいて別れ際の、二人の警官のコトバ。

「熊ん出るで、食べ物はしまっといてくださいね」

「寒いで、死なないようにしてくださいね」











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